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コロンビアビジネススクールからMBAの価値を考察する-3(Advanced Corporate Finance編)

コロンビアMBAでは、ファイナンスを中心に様々な授業を取っているのですが、これまで受講した中で一番面白かったAdvanced Corporate Financeで実施した10のケースを下記に纏めています。資金調達方法(社債、転換社債、株式)の市場へのシグナリング、最適な資本構成の考え方、オプション価値算出等を、モルスタの元PEチームヘッドから学べる示唆の多い授業で、「MBAって行く価値があるのか」という質問に対するアカデミックな側面の一つの回答になればと思います。

❶デュポンが事業の「選択と集中」を進めるために、相対的に利益率・成長率が低く、戦略上の重要度も低い高機能化学事業を売却すべきか、が問。結局2013年にカーライルへ売却したが、翌年にIPOしIRR80%超という特大ホームラン案件となった事業売却がデュポンの企業価値向上に寄与したかを分析。

❷GSが2008年のリーマンショック時にバフェット率いるバークシャー・ハザウェイから投資を受けることに意味があったのか、が問。GSの財務指標の観点だけを見ると、バーゼル2/3の水準を超える数値だった中、あのタイミングで不利な条件でもバフェットの投資を受けることによるシグナリング効果を分析。

❸巨額のキャッシュ(600億ドル超)が積みあがっていたMicrosoftが2004年7月に発表した、普通配当(17億ドル)の倍増+特別一時配当320億ドル、加えてその後4年間で300億ドルの自社株買いの決定が妥当だったか、が問。毎年潤沢なキャッシュを創出する企業の最適な資本構成をどう考えるべきか深掘り。

❹ 2015年11月にIPOした決済サービスSquareの売出価格が妥当であったか、が問。IPOの一年前に1株15.5ドルで資金調達していたが、主幹事のGSは市場環境の悪化などを踏まえてIPO価格として1株9ドルを提示。結局、IPO初日の終値は45%上昇しており、昨今の日本のスタートアップIPOにも示唆深いケース。

❺90年間以上に渡り、従業員が株式を保有していた米国の郵便サービス大手UPSが1999年にIPOした際の株価をどのように算出すべきか、が問。Fedex等の競合他社がいたとはいえ、年間売上約200億ドルを計上する業界トップの企業の株価算出時にどれだけプレミアムをつけるべきかを分析。

❻米国のLCCであるJetBlue等に投資し、米国で一定の知名度を確立しているミッドサイズグロースファンドのWeston Presidioの資金調達のケースを基に、LP投資家の立場からリターンを上げるPEファンドの条件は何か、どういった基準でファンドを選択すべきかを分析。

❼鉄道会社カナディアンパシフィックによる米鉄道会社ノーフォークサザンへの買収提案がどれだけの価値を持っていたか、が問。この買収提案で使用された不確定価額受領権(CVR)のオプション価値を算出し、価格の妥当性を分析。

❽長年株価が低迷していた大手医薬品会社アメリカンサイアナミッドに対するアメリカン・ホーム・プロダクトのTOBで、株主への短期的な利益還元と会社の中長期的な成長性のトレードオフをどう差配すべきかが、問。フェアネス・オピニオンを考慮しながら、取締役会の責務はどうあるべきかを分析。

❾ 石油会社Apacheが競合他社アモコの子会社MWペトロリアムの買収検討をするにあたり、支払える最大買収価格をどのように算定すべきか、が問。石油プロジェクトは、時間と共にプロジェクト遂行の是非を決定できる”オプション”が存在するため、DCFではなくリアル・オプションによる価格の算出。

➓ メリルリンチを主幹事としMoGEN(匿名の大手バイオテック企業)が実施した巨額の転換社債(50億ドル)の発行が資本市場に対して、どのようなシグナリングを発するか、が問。社債、転換社債、株式それぞれの資金調達方法が市場に対してどういったシグナルとなるかを分析。

下記にもMBAでの学びや、PEファンドについて纏めたnoteを作成しているので、そちらも参考になれば幸いです。

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