正座時膝痛の症例 後半
以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。
前半のあらすじ
高校生時代に剣道部に所属していた。部活を引退してから左膝外側の膝窩部に痛みが生じてきた。
痛みはズキズキする痛みで、正座ができなくなってきた。
原因は左下腿の後方偏位と下腿内旋制限であった。
それを起こしたのが左内側ハムストの萎縮であり
内側ハムストの収縮を促すことで正座に近づいた。
後半
Q) 何故、剣道をやめてから、このような現象が起きたのか?
A) 剣道をやめてからの症状なので、剣道と関係がある。
そこで、剣道の状態を観察した。
Q) 状態は?
A) 面を打つために踏み込むとき、左下肢で蹴り、右下肢で身体を支える。
蹴りだしに必要な下腿三頭筋の状態を観察すると、左が右に比べて肥大していた。
剣道では、踏み込みの素早さが、勝敗の要因の一つになる。
蹴りだしを速くするには、下腿三頭筋のパワーが必要であり、それには腓腹筋の作用が重要になる。
腓腹筋の活動を上げるには、腓腹筋と膝関節で拮抗する大腿四頭筋の力が必要である。
剣道を行っていたころは、ハムストも鍛えられ問題はなかった。
剣道をやめて、大腿四頭筋が優位になりハムストが低下した。
Q) 何故、その後も大腿四頭筋が優位になったのか?
A) 剣道により左大腿四頭筋が優位になり、それを活動させる動作が楽だった。
また、膝関節の安定化には大腿四頭筋の作用とハムストの作用がある。
大腿四頭筋で安定化が図れれば、ハムストの必要性はその分、少なくなり低下した。
Q) 何故、徐々に痛みが増えたのか?
A) 日常生活において、大腿四頭筋の優位性とハムストを低下を助長する何かがある。
Q) それは?
A) 通常の生活で、下肢を頻繁に使う動作は歩行である。
歩行を観察すると、左が右に比べて足の外返しが大きかった。
歩行の状態)
左右LRを示す。
左LRは右に比べ下腿外側傾斜が大きいので、足の外返しが大きい。
Q) 外返しが大きい原因は?
A) 左内側縦アーチが右に比べて低下している可能性がある。
Q) 評価では?
A) 内側の出っ張りが左で大きい。
これは、左内側縦アーチが、右に比べて低下している可能性を示す。
Q) 左内側縦アーチの低下と大腿四頭筋の優位性やハムストの低下と、どう関係するのか?
A) 内側縦アーチが低下していることから、蹴りだしのための前足部剛性を距骨下関節回外を主に行っている。
距骨下関節回外の最大作用筋は下腿三頭筋である。
症例は、左の下腿三頭筋と大腿四頭筋の相互作用が使いやすくなっている。
それを使用した歩行の中で、左大腿四頭筋の優位性が維持または向上してしまい、ハムストの作用低下が進行したのではないか?と考える。
Q) どうすればよいか?
A) 左下肢の蹴りだしをウインドラス機構に変えて、下腿三頭筋の作用を減らす。
Q) アプローチは?
A) 内側縦アーチを上げるために、後脛骨筋や足底固有筋群を調べて、低下筋に対して収縮力を上げる。
Q) 何故、左下肢で内側ハムストの萎縮が外側に比べて大きかったのか?
A) 剣道の蹴り出しに左下腿三頭筋が使用される。
素早く動くには、下腿三頭筋の収縮を高める必要がある。
下腿三頭筋の収縮は小趾側荷重で強まる。
それには、下腿の内旋の動きが必要になる。
Q) それでは、前回の評価で左下腿内旋可動域低下と矛盾するが?
A) 下腿内旋位で姿勢を維持するには、必要以上に下腿が内旋しないように下腿外旋筋の遠心性や等尺性の収縮が必要になる。
よって、素早い蹴り出しを行なうための小趾側荷重での姿勢維持のために
大腿二頭筋が使用され、内側と外側の差が生じたと考える。
まとめ
正座時膝痛は、脛骨前方偏位と下腿内旋制限による膝関節アライメント不良からの後方組織圧迫から起きた。
脛骨前方偏位は、大腿四頭筋の過活動と内側ハムストを中心とした筋の低下からであった。
大腿四頭筋の優位性は、剣道で素早い蹴り出しを行なうのに、下腿三頭筋の収縮力を高めるためであった。
内側ハムストの萎縮は、大腿四頭筋の優位性と下腿三頭筋の活動を高めるのに下腿内旋肢位保持のために大腿二頭筋使用から起きた。
剣道をやめた後も、大腿四頭筋の優位性と下腿三頭筋の活動は継続され、運動をやめたことと、歩行などにより、その差は大きくなり痛みが出現し、徐々に強まった。
最後までお読み頂きましてありがとうございます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?