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頸部の張り感と呼吸がしづらい症例(後半)
以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。
前半のあらすじ
幼少の頃に小児喘息を患った。
日頃から頸部前面に張ったような違和感がある。
部位は、胸鎖乳突筋当たりで、伸展・屈曲肢位で張り感は強くなる。
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![](https://assets.st-note.com/img/1709163429223-BP2cNCL6p7.png)
また、カラオケで歌う時、声が続かず息切れがしてしまう。
観察では、胸椎が後弯して頭部が前方に突き出した肢位であった。
![](https://assets.st-note.com/img/1709163468792-mWgg6LIh5M.png)
これは胸鎖乳突筋の緊張から起こる肢位であり、頸椎の安定化のための対応と考えた。
アプローチは、C2をまたいで頸部前面を走行する筋は頭長筋の強化である。
そこで、顎引き運動を行わせると、十分に顎が引けなかった。
そこでROMとして、顎引き運動とロールタオルによる可動域拡大を行なった。
![](https://assets.st-note.com/img/1709163558617-ZDQ8XUUcs3.png)
矢印はロールタオル
結果は、頸部前面の張り感は消失した。
ここで、別の要因もあると考えた。
後半
Q)それは?
A)症例は硬いものを噛むのが苦手である。
また、顎関節を見ると、顎が小さく、咀嚼筋である咬筋や側頭筋も触診で少なく感じた。
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ここで、顎関節と気管につながる筋に咽頭収縮筋がある。
咽頭収縮筋は咽頭や食道の開閉に直接・間接で関わる。
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上咽頭収縮筋は下顎に付着している。
顎関節に作用する筋が低下することで、それを補おうと咽頭収縮筋の緊張が高まり、呼吸に影響を与えるのではないかと考えた。
そこで、下顎の動きを調べた。
Q)状態は?
A)下顎のすべての動きで可動域が少なかった。
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![](https://assets.st-note.com/img/1709164922765-gVpDwwE31k.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1709164938927-xKEVYzfTNZ.png)
Q)可動域が少ない原因は?
A)症例の咬筋は小さかった。
よって、下顎を下げる筋力も弱いのではないかと考えた。
筋としては、外側翼突筋下頭と舌骨筋である。
そこで、試しに、外側翼突筋と舌骨筋の強化を実施した。
Q)方法は?
A)開口に対して抵抗運動を5分間行った。
![](https://assets.st-note.com/img/1709164768039-gCezSPrwwv.png)
Q)結果は?
A)顎関節の可動域は拡大した。
![](https://assets.st-note.com/img/1709164789151-f6bAf2i0BX.png)
下顎の動き)
前 後
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![](https://assets.st-note.com/img/1709165118227-Z6ha6ZmmTB.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1709165139662-jBxyTaIgGg.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1709165169782-OtmFQw8i3j.png)
Q)頸部の症状は?
![](https://assets.st-note.com/img/1709164635894-nPFx0P6tIU.png)
A)頸部の張り感に変化はなかった。
そして、 頸部アプローチに比べて頭部の前方突出は大きくなった。
![](https://assets.st-note.com/img/1709165235283-oxLpXlF8dU.png)
Q)なぜ?
A)下図のように頭部の前方突出は、胸鎖乳突筋の緊張で起こる。
舌骨筋は伸張された状態にある。
![](https://assets.st-note.com/img/1709165345563-BA7opLTX7l.png)
収縮させた筋は舌骨筋であった。
よって、舌骨筋が直接関与したというよりも、舌骨筋の収縮による顎引き様の収縮が影響したと考える。
![](https://assets.st-note.com/img/1709165401123-ZfTDRbRdXC.png)
Q)しかし、前回の結果では、顎引き運動で頸部の張りがなくなり、頭部の前方突出も軽減したが?
頸部アプローチ)
![](https://assets.st-note.com/img/1709165449900-Lq3o9LO2JD.png)
A)頭長筋は頸椎の前方を走行して、頸椎の各椎体に直接働く。
舌骨筋は頸椎より遠位にあり、頸椎の安定化が目的ではない。
そのため、収縮により、頸椎の過可動な箇所に、元々のアライメントと逆方向の剪断の力がかかり、それを押さえようと胸鎖乳突筋が緊張した可能性がある。
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Donald A.Neumann 原著 嶋田 智明 他監訳:筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版 より引用
実際、頸部アプローチ後に比べて、顎関節アプローチ後では、胸鎖乳突筋の膨隆が目で確認できる。
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以下は推論であるが
症例の頸部の症状は、かなり前からである。
症例は、小児喘息を患っていたことから、咽頭収縮筋や気道の開閉を操作する咽頭軟口蓋があるが、これは、舌骨筋群と関係する。
喘息により、それら筋群が緊張し、上述した頸部の剪断に対して、胸鎖乳突筋で対応しようとした。
また、喘息による努力性呼吸も胸鎖乳突筋の活動を高め、使いやすくさせた。
その後、喘息は治まるが、頸椎安定化を胸鎖乳突筋を中心に行なうようになり、頭部の前方突出した肢位になった。
![](https://assets.st-note.com/img/1709165813105-x8ok7CDpXn.png)
その肢位により、上位頸椎の剪断によるすべりが生じた。
![](https://assets.st-note.com/img/1709165829591-Ez6518wAig.png)
そして気道を狭めた。
![](https://assets.st-note.com/img/1709165854524-Enbgzo0w0G.png)
舌骨筋群の使用は、胸鎖乳突筋の作用による頭部突出を助長してしまい、症状悪化につながる。
![](https://assets.st-note.com/img/1709165885847-ozGAUGKJeM.png)
そこで、舌骨筋群の使用を押さえることで、開口などの下顎の動きを少なくさせた。
開口の動きが少ないため、1回に入れる食べ物の量や噛む量が少なくなり、咬筋群も減った。
以上から、頸部のアプローチである頭長筋の収縮と、上位頸椎のROMを継続した方がよいとする結果に至った。
Q)ちなみに、頸部のアプローチ前後で、座位のアライメントが変化したのは?
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A)頸椎の安定化を頭長筋の緊張で賄えたので、胸鎖乳突筋の緊張を高める必要がなくなり、胸鎖乳突筋が伸張された肢位になった。
その証拠に、頭長筋の収縮を促す前で胸鎖乳突筋の膨隆が目で確認できるが、アプローチ後では膨隆が少ない。
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ex前は、胸鎖乳突筋の緊張により、頭部を前方突出させられた肢位から座位バランスを取るために、胸椎を後弯させた。
ex後では、頭長筋の緊張により胸鎖乳突筋の使用が減り、頭部の前方突出が減ったため、それとの座位バランスをとる胸椎後弯も減った。
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最後に、余談であるが、頭部の位置で胸椎の後弯が変化することから、座位における重心線の位置は決まっている可能性がある。
胸椎の後弯が変化するので、腰椎のアライメントも変化し、骨盤の肢位も変わる。
よって要因として、座面に接する大腿や殿部が関係しているのではないか?と思われる。
最後までお読み頂きましてありがとうございます。
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