頸部の張り感と呼吸がしづらい症例(前半)
以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。
情報)
幼少の頃に小児喘息を患った。
そのため、今まで運動部に所属せず過ごしてきた。
日頃から頸部前面に張ったような違和感がある。
部位は、胸鎖乳突筋当たりで、伸展・屈曲肢位で張り感は強くなる。
また、息を吸う・吐くが長く行えず、カラオケで歌う時、声が続かず息切れがしてしまう。
その時、気道が詰まった感じがある。
Q)何が原因か?
A)訴えとして、頸部前面の張り感、気道閉塞様の吸気・呼気の持続力低下である。
胸鎖乳突筋に張り感があるので、頭部・頸部のアライメントを矢状面から観察した。
すると、胸椎が後弯して頭部が前方に突き出した肢位であった。
この肢位は胸鎖乳突筋に緊張を与える肢位である。
よって、頸椎の安定化のための対応と考えた。
ここで、頸椎の棘突起を触診すると、胸椎上部からC3まで屈曲し、C2から伸展位であった。
そのことで、C2/3で剪断力がかかる。
実際、上部頸椎の棘突起を触診して頸椎の屈曲・伸展時の動きを調べると、頸椎伸展でC2の前方すべりが大きかった。
Q)頸椎安定化の肢位が頸部前面の張り感に結びつくのが分かったが、気道の閉塞(?)との関係は?
伸展肢位による頸椎の前方移動が、食道と共に気道を狭めた可能性がある。
症例に嚥下障害がないのは、年齢が若いので嚥下のための筋力があるからと考えた。
Q)アプローチは?
A)問題はC2の前方すべりなので、C2をまたいで前面を走行する筋の緊張を高めて、前方すべりを押さえる。
また、頸椎上部の伸展、下部の屈曲のアライメントを変化させて、C2/3での剪断を減らす。
C2をまたいで頸部前面を走行する筋は頭長筋である。
それを収縮させる方法は顎引きである。
そこで、顎引き運動を行わせると、十分に顎が引けなかった。
また、他動で動かすこともできなかった。
Q)原因は?
A)顎を引くには、上部頸椎の屈曲と下部頸椎の伸展が必要である。
症例は、長年の上部頸椎の伸展、胸椎~下部頸椎の屈曲肢位からROM制限を起こした可能性がある。
まず、この可動域をアップしなければ、頭長筋が活動できず、C2の剪断を押さえられない。
Q)ROMの方法は?
A)顎引き運動が、そのままROMにつながるので、頭長筋の活動も含めて、顎引き運動を5分間ほど実施した。
また、下部頸椎の伸展を出すために、背臥位で下部頸椎にロールタオルを入れて10分間ほど寝てもらった。
Q)結果は?
A)頸部前面の張り感は消失した。
また、座位のアライメントも変化した。
ここで、別の要因もあると考えた。
Q)それは?
A)後半に続く。
最後までお読み頂きましてありがとうございます。