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#163 『源氏物語』『枕草子』 平安文学を支えた和紙

『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。

『光る君へ』観てますか?

はい、皆さんこんにちは、こんばんは。
いかがお過ごしでしょうか。

僕は、、、元気です。はい。

さて、皆さんNHK観てますか?NHK。
2024の大河ドラマと言えば、そう、『光る君へ』ですよね。
あの日本が世界に誇る『源氏物語』の作家、紫式部が、ついに大河の主役に大抜擢です。

あ、ちなみに僕の地元の福井県越前市は、紫式部が生涯で唯一、都から離れて住んだ場所ということで、今、沸きに沸いております。
そしてこのタイミングで北陸新幹線も開通して、もう、それはそれは沸いている訳なんです。
僕の家の近所には「紫式部公園」という、非常に心落ち着く公園がるわけなんですが、それくらい、福井県越前市は紫式部推しなんですね。

紫式部公園(福井県越前市)

まぁ、越前市が沸いているという話は置いといてですね、今日は、紫式部が生きた時代、そう、平安時代にフォーカスしていきたいと思います。

平安時代と言えば

平安時代のイメージ、皆さん、どんな感じですか?
なんとなく平和で、貴族が蹴鞠をしながら和歌を詠んでいる。そんな風景が思い浮かぶんじゃないでしょうか。
なんとこの平安時代、平安京に都が移ってから鎌倉幕府が爆誕するまで、実に400年弱も続いた、とんでもなく長い時代なんです。
ちなみに、平安京に都が移ったとされる794年といえば、そう、皆さんご存知、あの「バグダード製紙工場」が設立された年なんですねー。はい。

そして、平安中期の西暦1000年ごろ、ついに『源氏物語』が完成したと言われています。

ちなみに同じころ、日本三大随筆の1つとも称される、清少納言の『枕草子』も完成しています。冒頭の「春は、あけぼの。」は、日本一有名なフレーズと言っていいんじゃないでしょうか。ね?

なぜこの時代に一流の文学が次々生まれたのか

さぁ、なんでこの時期に一流の文学が次々と生まれたのでしょうか。

よく言われるのが、「平仮名の登場」です。
それは間違いない。確かにそう。だって、オール漢文で、物語書きにくくないですか?それに、漢文で書かれた『源氏物語』、『枕草子』読みたくないですよね。
そう、平仮名は物語を書くのに適していたんですね。
平仮名は、諸説ありますが、紫式部らが生まれる約100年前に生まれた、と言われています。

違うんです。
僕は、平仮名の凄さを語りたいわけじゃないんです。
そう、「和紙」です。

この頃、和紙はあることをきっかけに、品質が爆上がりします。
そう、写経ブームです。奈良時代、写経用紙として、和紙のニーズが急増します。
「とにかく質のいい写経用紙をくれ」という熱烈なニーズに応えていく和紙職人。
紙の原料を調整したりしながら、紙の品質を上げていくわけです。

そうして、紫式部たちの時代には、質の良い和紙がある程度の量、流通していたわけなんです。

原料の違いによる書きやすさ

書道とか水彩画をやっていない限り、紙の原料で書きやすさが変わるなんで、夢にも思わないですよね。
でも、これが圧倒的に違うんです。

話を分かりやすくするために、材料を2つに絞ります。
まずは、「楮」
それから、「雁皮」

さて、問題です。
「楮」で漉かれたものと「雁皮」で漉かれたもの。平仮名を書くのに適した紙はどちらでしょうか?

正解は、「雁皮」で漉かれたもの、なんですねー。

誤解を恐れずに、ざっくりと説明すると、「楮」で漉かれた紙は、繊維が長い分、厚くて力強い紙で、「雁皮」で漉かれた紙は、繊維が短い分、薄くて表面が滑らかな紙、と言った感じでしょうか。

平仮名のように流れるように書く文字は、滑りの良い「雁皮」で漉かれた紙、通称「斐紙」が好まれていたようです。
ただし、これは一般的な解釈で、紫式部は楮紙を使う女性をディスるような文章を残していますが、清少納言は「楮紙に心行くまで書いた」という文章を残しています。
まぁ、好みの問題でしょうね。

ちなみに、『源氏物語』の中には、中国と朝鮮半島の紙を絶賛する表現が出てきます。
ちょっと紹介しますね。

“唐の紙のいとすくみたるに 草(そう)書きたまへる すぐれてめでたしと見たまふに 高麗の紙の 肌こまかに和(なご)うなつかしきが 色などははなやかならで なまめきたるに おほどかなる女手の うるはしう心とどめて書きたまへる たとふべき方なし”

「源氏物語 第三十二帖 梅枝」

はい、意味不明ですね。
現代語訳していきましょう。

「唐の紙が高価で使うには身がすくんでしまいそうなのに、源氏がお書きになった草仮名(そうがな)が、とりわけ結構なものと宮はご覧になる。また、高麗の紙で、きめ細かく和やかに優しい感じの、色なども派手ではなく優雅な料紙に、おっとりとした平仮名できちんと気を配ってお書きになったのが、たとえようもなく素晴らしい」

です。

当時の、唐とか高麗からくる紙は、宮廷内で扱われるほどの高級品で、この紫式部の表現でも「とりわけ結構」とか「たとえようもなく素晴らしい」と絶賛していますね。

まとめ

まとめていきましょう。

平安時代。
奈良時代の写経ブームで、和紙の品質爆上がり。
主に男性が書く漢文は楮の紙、主に女性が書く平仮名は楮の紙が好まれた。
また、唐や高麗からくる紙は、宮廷で使われる高級品でたとえようもなく素晴らしい。

こんな感じでしょうか。

平安時代にもたらされた財産。
平仮名、それから和紙。
『源氏物語』や『枕草子』の制作に大きな影響を与えたの、かもしれません。
皆さんはどう思いますか?

はい、という訳で今回は、平安文学を支えた和紙について解説させていただきました。
いかがだったでしょうか。
それでは、本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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