#165 めちゃくちゃ強靭な和紙「泉貨紙」
『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。
「泉貨紙」と「仙花紙」
はい、という訳で、今回は「泉貨紙」という和紙を取り上げていきたいと思います。
皆さん聞いたことありますでしょうか、「泉貨紙」。
ちなみに、同じ読み方で「仙花紙」という紙もあります。
これ、読み方は一緒ですが、紙としては全くの別物です。
まずは、今回のテーマでもある「泉貨紙」。
こちらは、楮の繊維で漉かれた、とっても丈夫な和紙です。
一方の、「仙花紙」。
こちらは、古紙を抄きなおした再生紙のことです。
つまり、同じ読み方でも両極端な紙と言えます。
「泉貨紙」の歴史
さて、本題の「泉貨紙」に話題を移しましょう。
先ほど、楮で漉かれた和紙と言いましたが、そう、和紙の一種なんです。
歴史をさかのぼると、戦国時代末期の天正年間(1573~1593年)に伊予・西園寺家に仕えていた土居太郎右衛門という武将が、西園寺家滅亡の後、出家・隠遁して現在の愛媛県西予市(せいよし)野村町の安楽寺にて厚紙を漉き始めたのが起源であると伝えられています。
その後、宇和島藩の殖産事業として和紙生産が奨励され、泉貨紙は伊予・宇和島の特産品となっていきます。
その後、幕末から明治期になると、愛媛県北宇和郡泉村(現・鬼北町)の畔地類吉(あぜちるいきち)という人物が、「泉貨紙」に大きな改良を加えることに成功します。
そうしてこの「泉貨紙」は、畔地類吉の名前からとって「類吉紙」と呼ばれるようになって、この辺りは、「泉貨紙」の一大産地に発展していきます。
その後は他の和紙と同様、産業化のあおりを受け、1969年を境に生産が途絶えていきます。
1985年になると、その技術を継承していこうという鬼北町の有志の方々によって「鬼北泉貨紙保存会」が結成されます。
これが、泉貨紙の大きな流れです。
めちゃくちゃ強靭な和紙「泉貨紙」
つまり、泉貨紙とは、愛媛県をメインに漉かれている和紙の一種ということです。
では、そんな泉貨紙は、どんな特徴を持っているのでしょうか。
楮紙といえば、前回登場した「細川紙」を代表とする「奉書」も楮紙の一種ですよね。
今回のテーマの「泉貨紙」は、他の楮紙とはある決定的な違いがあるんです。
それは、特殊な2層構造になっている、ということです。
どういうことかというと、まず、編み目の細かい簀で1層目の紙を漉きます。そして、今度は粗い目の簀で2層目の紙を漉きます。この、繊維の絡みが異なる2枚の紙を、乾く前の状態で重ねます。そうすると、乾燥した後にこの2枚は、水素結合によって1枚の紙となって仕上がります。
こうして出来上がった紙は、複雑な繊維の絡まりによって、めちゃくちゃ強い紙になる訳です。
そう、泉貨紙は、楮を目の異なる簀で漉いて2層構造にした、とんでもなく強い紙ということです。
前回、今回と和紙の話題が続きましたが、全国にはこういった文化とか技術を継承されている方々が今でもいらっしゃいます。
本当に大変な使命感だと思いますし、頭があがりません。
これからも、こうやって発信することで、全国の和紙とか技術を継承されている方々のご紹介をしていけたらと思います。
はい、という訳で今回は、めちゃくちゃ強靭な和紙「泉貨紙」について解説させていただきました。いかがだったでしょうか。
それでは、本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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