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#136 紙からできた衣類!なぜ今、紙布に注目が集まるのか!?

『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。

紙からできた衣類が増えている

皆さん、最近、紙から出来た衣類が激増していることにお気づきでしょうか。
「紙から」じゃなくて「和紙から」と書かれていることが多いですかね。
「和紙から出来た靴下」「和紙から出来た服」など、一度は、目や耳にしたことがあるんじゃないでしょうか。
例えば靴下ひとつとっても、靴下メーカーのtabioやインナーウエアが強いグンゼをはじめとして、ミズノ、ASICS、無印良品、ワークマン、keen、ハイタイドなど、多種多様なメーカーやブランドが、紙から出来た靴下を開発しています。
服も同様に色んなメーカーが、紙を素材としたものを開発しています。

という訳で、今回は、「なぜ今、紙素材の衣類の需要が増えているのか」について掘り下げていきたいと思います。

紙から出来た布の種類

「#103 和紙の王道!コウゾ紙について解説!」でも若干触れましたが、紙から出来た布は昔から存在していました。
何種類かありましたよね。ちょっとおさらいをしましょう。

まず、楮の皮を織って布にしたもの。これを「太布(たふ)」といいます。
太布に関しては、『日本書紀』にも、楮の皮で布をつくる神様が記されているくらいなので、相当前からつくられていたことが分かります。

それから、漉いた紙をそのまま布に置き換えたもの。これを「紙子(かみこ)」と言います。
これは、そのまま衣服にしたりしていて、特に、江戸時代に文人や茶人に愛用されていたようです。

最後に、漉いた紙を細く切ってから糸(紙糸)にして、その糸を織って布にしたもの。これを、「紙布(しふ)」と言います。
今回の主役は、この紙布です。

奥が深い、紙布の作り方

紙布自体は、江戸時代から存在していましたが、今ほどは普及していませんでした。
なぜなら、作るのに相当手間がかかるからです。
紙布のように、織物の布を作る為には、色んな技術が必要となります。

それでは紙布の作り方を解説していきたいと思います。

まずは、当たり前ですが、紙を抄きます。
この時、どんな紙でもいいかというと、そうではありません。
紙布を作るのに適した紙があるんです。
材料は主に、「マニラ麻」が使われます。
なぜ、マニラ麻か。強い紙になるからです。
日本の紙幣をイメージしてください。強いですよね。そう、マニラ麻は、日本の紙幣の原料にも使われています。
これでマニラ麻の強さのイメージが出来たかと思います。
それから、もう一つ大事なのが、紙の厚さ
米坪で10g~25gくらいの紙が理想です。紙業界では、薄葉紙と呼ばれる厚さですね。
ワイシャツを買ったときに服を広げると間に薄い紙が入っていますよね。アレです。あれくらいの薄さが理想です。
という訳で、紙布を作る上で理想的な紙は、マニラ麻で抄かれた10~25g/㎡の紙ということになります。

こうして抄きあがった紙を、今度は細―く切っていきます。
機械で抄いた紙を実際に見たことがないという方もいらっしゃるかと思います。
そういった方は、トイレットペーパーを化け物みたいなサイズにしたものを想像してください。
それを、糸の太さに応じて細かく切っていきます。化け物みたいなトイレットペーパーが、スリムなトイレットペーパーになっていく感じです。

そうして出来上がったスリムなトイレットペーパーを、今度は撚っていきます。
紙でこよりを作ったことがある方は、まさにそのイメージです。化け物みたいな長さのこよりを作っていきます。
こうして出来上がったのが、いわゆる「紙糸」です。
太くしたい場合は、例えば紙糸をさらに3本合わせて撚っていったりします。
マニアックな話をすると、この撚る時の回転数や回転方向で、紙糸の仕上りが変わってきます。
なので、最終製品から逆算して、どんな太さの紙糸を何本撚るのか、回転数や回転方向はどうするのかまで、きちんと設計しなくてはいけないんですね。
意外と奥が深いんです。

さて、こうしてできた紙糸をついに、布にしていきます。
布にしていくために、紙糸を織機(しょっき)という機械にセットします。
『鶴の恩返し』で、鶴が一生懸命布を織っていましたが、まさにあの作業です。
いまは、自動織機といって、機械が自動的に織ってくれるようになっています。
そうして、いよいよ「紙布」が出来上がります。

ここから、服になったり、靴下になったりしていくわけですね。

なぜ今、紙布に注目が集まるのか!?

じゃあ、なんで今、紙布に注目が集まっているのか。

そう、サスティナビリティ意識の高まりです。

そもそも、糸の原料になるものには、色んな種類があります。
コットンやレーヨンのような植物繊維ウールのような動物繊維ポリエステルのような石油由来の繊維など。

コットンを例に挙げましょう。
コットンは、植物由来なので環境にいいイメージがありますが、実は生産過程でめちゃくちゃ大量の水を使っているんです。
それから、ウイグル自治区で生産されるコットンの、人権侵害問題は、皆さんの記憶にも新しいと思います。
このように、植物由来のコットンですが、裏側を除くと色んな問題があることが分かってきたんです。
ということで、最近では「サステナブル・コットン」と呼ばれるものが生まれています。
これは、生産過程や流通過程で環境的な配慮がされているかどうかを、第三者機関がチェックして、OKをもらったコットンのことです。

このように、布の原材料がサスティナビリティなものかということに注目が集まっている中で、スポットライトが当たったのが、「紙」という訳です。
リサイクルが出来て、100%生分解性で、燃やしても有毒ガスが発生しない紙は、サスティナビリティな素材と言えます。

また、紙糸は、軽いうえに、調湿性・保湿性・保温性・消臭・抗菌性など、衣類に必要な要素がめちゃくちゃあって、機能的にも抜群なわけです。

日本では昔から使われてきた、紙の布。
それが、現在改めて注目が集まっています。

僕も、全身紙コーデを目指していきたいと思います。

という訳で、今回は以上となります。
本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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