見出し画像

『稲盛和夫一日一言』 6月7日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 6月7日(金)は、「いい仕事をする条件 ③」です。

ポイント:いい仕事をするために必要不可欠なこと。その三つ目は「地道な作業を続けていくことを厭わないこと」。仕事は、日々継続してこそ進歩がある。

 2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)の中で、地味な努力を積み重ねることの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 大きな夢や願望を持つことは大切なことです。しかし、大きな目標を掲げても、日々の仕事のなかでは、一見地味で単純と思われるようなこともしなければならないものです。そのため、ときには「自分の夢と現実の間には大きな隔たりがある」と感じて思い悩むことがあるかもしれません。

 しかし、どのような分野であっても、素晴らしい成果を出すまでには、改良・改善の取り組み、基礎的な実験やデータの収集、足を使った受注活動などといった地味な努力の繰り返しがあるのです。
 偉大なことは最初からできるものではなく、地味な努力の一歩一歩の積み重ねがあって初めてできる、ということを忘れてはなりません。

 創業当時の私にとっては、いかに大きな夢を描いても、それを担ってくれるようないい人材がなかなか来てくれないことが大きな悩みでした。
 また、今の仕事を続けていっても知れているから何か新しいことをしたいと思っても、人材もいない、技術もない、資金もないから無理だと半ば諦めていました。しかし、そうではなかったのです。

 例えば、繊維関係の縫製工場を経営しているとしましょう。
 メーカーからこういうものを作ってくれと言われて、型紙など必要な部材をもらって、布地を裁断して縫製する。一枚縫ったらいくらという賃加工で従業員に工賃を支払う零細企業です。

 例えばボタン穴をかがる作業ひとつとっても、この前まではこうやっていたけれども、今度はこうしてみようというふうに、いろんな工夫を試みるのです。しかし、新しいことに挑戦すると必ず行き詰まって、「これはどうしたらいいだろう」と考えることになります。
 そうすると、その解を求めて先輩や同業者などいろんな人に聞いてみる。そうしていると、「繊維産業ではないけれども、こういう産業で同じようなことをやっているところがありますよ」などと教えてくれる人に行き当たります。それで教えてもらったところに行ってみると、「あっ、なるほど!こういう素晴らしいやり方があったのか」と気がついて、それを自分のところに導入し、改善していく。

 そういうことを次から次へとどんどん工夫していくうちに、いろんな縫製技術を身につけた専門業者になっていきます。
 それからは、技術を教えてもらって自分のものにしていくたびに、次から次へと芋づる式に新しい技術を身につけていくわけです。
 つまり、大学などで得た学問ではなく、人から教えてもらう耳学問によって技術が進んでいく。実はそうやって発展していったのが京セラなのです。

 その原点は松下幸之助さんにあります。なぜ耳学問だけでも伸びていけたのかというと、そこに「創意工夫」があったからです。「何でや?」と常に疑問に思い、そこから工夫を重ねていく。そうした松下幸之助さんの姿勢が、松下電器をあれだけ大きな企業にしたのです。
(要約)

 今日の一言には、「地味な仕事を、日々続けていく中でこそ、確かな技術と経験が蓄積されていくのです。そのような地味な努力を厭わず、『継続する力』がない限り、優れたものづくり、自他ともに満足するような仕事は不可能と言っていいでしょう」とあります。

 2012年発刊の『京セラものづくりの心得を語る』(伊藤謙介著 京セラ経営研究部編/非売品)「心と技を磨き続ける」の項で、1998年の京セラ経営方針発表会における名誉会長の言葉を紹介して、地味な努力を積み重ねることの大切さについて、伊藤元京セラ会長は次のように説かれています。

 「京セラは一瞬たりとも休むことなく新技術開発に努めてきました。それは、京セラが創業以来保有していた単一の製品や技術が大きく拡大して、成長したたぐいの会社ではないということです。小さな技術、小さな商品をいくつも開発し、それらが集積されて今日の一兆円企業になったのです。

 創業以来の、常に新しい創造的なものを開発していくという伝統を、若い社員の方々にも引き継いでいただき、それぞれの事業を展開していただくならば、今後ともさまざまな制約条件があろうとも、京セラは依然として高い成長が期待できるはずです」

 京セラは、常に他社にはまねのできない製品や技術を開発し続けることで成長してきました。そこには、たくさんの地味な努力の積み重ねがあったわけです。一人一人が必死に技を磨き続けた成果の集約が、会社の大きな財産となっていくのです。(要約)

 働いている限りは、自他ともに満足できるような仕事をしたい。そう考えるならば、「地道な作業を続けていくことを厭わない」という気概を持ち続けることが大事なのではないでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?