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『稲盛和夫一日一言』 7月6日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 7月6日(土)は、「美しい思いやりのこころを抱く」です。

ポイント:こころが呼ばないものは、決して周囲の現象として現れない。美しい思いやりに満ちた利他のこころを抱けば、その抱いたような事や物が周囲に現れてくる。

 2022年発刊の『経営12カ条 経営者として貫くべきこと』(稲盛和夫著 日経BP/日本経済新聞出版)の中で、「いかにして思いやりの心を身につけるか?」ということについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 人間は二面性を持っています。「利己的な自分」と「利他的な自分」です。「利己」とは、生きている人間が自分の身を守るため、よりよくするために神様が与えてくれたものです。本能と言ってもいいでしょう。お腹が空いたら飯を食いたい、人よりたくさん食べたい、また人からバカにされたら腹が立つなどといった感情は、いずれも本能に根ざした利己的なものです。

 闘争心も、自分の身を守るために欠かせない本能のひとつです。文明的な生活をする以前の人間は、野生動物などの襲撃にも耐えてそれらに立ち向かい、自らの一族を守ってきたわけです。その他、ジェラシーや憎しみといったものも自分を利するためにあるものです。

 一方、「利他」とは、愛です。自ら犠牲を払ってでも相手を愛すること、他を利することです。利他とは思いやりの心であり、思いやりとは他人の喜びが自分の喜びに感じられることです。
 そしてこの利他の心も、本来人間が本性として持っているものです。どれほど利己主義で極悪非道な人間であっても、もう一面には、相手を思いやる利他的な心が隠れているものです。

 ですから、その人のなかにある利己と利他の比重の大きさによって人間性が決まるわけです。利他のほうが大きければ「あの人は人格者だ」となり、利己のほうが勝っていれば「あいつはえげつないな」ということになります。

 経営の原型は、「何が何でもこうありたい」「どんなことがあろうと私は絶対に負けないぞ」という強烈な願望、すなわち利己から発するものです。
 特にたくさんの人を雇っている場合、その人たちを食べさせていかなくてはなりません。そのためには、激しい格闘技をやっている人が持っている闘争心よりも、さらにすごい闘魂が必要になります。そうでなければ経営にはなりません。

 しかし、利己心だけが強くなってしまうと、一時的には成功したとしてもいずれ破綻してしまいます。だからこそ「利他」も大事で、「利己」だけを肥大化させてはいけないのです。
 利己を肥大化させると同時に、利他も肥大化させていかなければなりませんが、その際には、利己に比例して利他を肥大化させるというよりは、利他の比率のほうが少しでも大きくあるべきです。

 そうした利他を目覚めさせるためには、学ぶしかありません。利己は本能ですから、学ばなくてもしょっちゅう出てきますが、心の奥底に沈んでいる利他の心は、意識してそれを伸ばそうとしなければ出てきません。
 そのためには学ぶことが重要で、それが「人間性を高める」ということなのです。私はそれを「心を高める」と言っています。

 利他の心は意識して伸ばしていかなければなりません。常に耕し、肥やしをやらなければ成長していかないのです。(要約)

 上記は、稲盛経営12カ条の「第11条 思いやりの心で誠実に 商いには相手がある。相手を含めて、ハッピーであること。皆が喜ぶこと」の補講内容をまとめられたものです。

 2011年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅡ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究部編/非売品)「自利・利他」の項で、名誉会長は次のように説かれています。

 事業は「自利・利他」という関係でなければなりません。
 「自利」とは自分の利益、「利他」とは他人の利益です。つまり、「自利・利他」とは、自分が利益を得たいと思ってとる行動や行為は、同時に他人、相手側の利益にもつながっていなければならないという意味です。
 自分が儲かれば相手も儲かる、それが真の商いなのです。

 自利、利他の精神がなければ、たとえ短期的には成功することがあっても、長続きはしません。必ず軋轢(あつれき)が起こってうまくいかなくなってしまうものなのです。
 常に相手にも利益が得られるように考えること、利他の心、思いやりの心を持って事業を行うことが必要です。
(要約)

 「自利・利他」とは仏教で使われる用語ですが、自分が利益を得ることと、他の人が利益を得るということは、相矛盾するものではないということを表現したものです。

 事業に限らず、社会生活を営んでいくうえでは、常に「思いやりの心で誠実に」という心構えを持って相手に接することで、お互いがハッピーな関係を構築していくよう努めることが大事ということではないでしょうか。


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