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『稲盛和夫一日一言』 8月4日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 8月4日(金)は、「有意注意 ②」です。

ポイント:「有意注意」の習慣がついていないと、大事なことを自分の判断で決めなければならないときに、考えることも決めることもできずに失敗してしまう。人生においては、どんな些細なことでも、全神経を集中して物事を考えることを習慣にすることが大事。

 2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)の中で、意識を集中して考えることの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 日ごろの私は、急な頼まれ事があってもなかなかすぐに時間がとれないほど忙しくしています。そのような過密スケジュールの中では、直前に会話した内容が頭の中に残ったままだと、次の案件で他の人と話をしても頭の切り替えができなくて、なかなか効率が上がりません。
 そのため、私は次の人と会う前に、直前まで話をしていた内容を頭の中から全部消してしまうようにしています。

 そんなことを朝から夕方までやっていると、クタクタになってしまいます。物理的な運動をしているわけではない、考えて会話をしているだけなのに疲れ果ててしまう。それくらい、「考える」ということはエネルギーを消耗することなのです。

 ですから、「有意注意」で考えられていないときは、往々にしていい加減な応答をしてしまいがちです。それが後々大変な問題を引き起こしてしまったという若いころの苦い経験から、私はその後廊下やトイレといった集中できない場所で簡単に相談にのるということを一切やめました。
 話しかけられても、「今は聞く耳を持ちません。相談事なら、集中できるところに場所を移して聞きましょう」といった対応をすることにしたのです。

 つまり、話を聞くときは、すべての意識を集中させなければならない。何かのついでに、ちょっと話を聞いて軽く判断を下す、ということは決してしてはならないのです。これは、話の内容に関係なく必要な姿勢です。
 たとえ些細なことであっても、集中して深く考えて判断を下す、そうした「有意注意」を習慣づけることが必要です。そうすれば、判断力は必ず研ぎ澄まされていくはずです。
(要約)

 今日の一言には、「これは些細なことだから部下に任せよう、これは大きなテーマだから自分で考えよう、ということをしていたのでは、『いざ鎌倉』というとき、つまりたいへん大事なことを自分の判断で決めなければならないときに、ふだんから有意注意の習慣がないものだから、考えることも、決めることもできない。そのために失敗する例がよくあります」とあります。

 つまり、ここ一番というときに急に最良のパフォーマンスを発揮しようとしても、日ごろからトレーニングを行っていなければ、そう簡単にはできるものではありませんよ、と言われているわけです。

 ちなみに、「いざ鎌倉」とは、鎌倉時代、幕府に一大事が起きると、諸国の武士たちは、「いざ鎌倉へ」と急きょ馳せ参じなくてはならなかった、という史実に由来した言葉のようです。

 中村天風師の「人生においてはどんな些細なことでも全神経を集中して物事を考えることを習慣にしなさい」という教えを、取り返しのつかない失敗をしでかしてしまう前に、自分のものにすることはできないものか。

しかし残念ながら、人間は何度も痛い目を見なければ、なかなか骨身に沁みない生き物です。「有意注意」が習い性になるまで、まだまだ修行は続きそうです。


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