『稲盛和夫一日一言』 9月14日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 9月14日(木)は、「理念の力」です。
ポイント:人材や商品、設備、資金といった目に見えるものだけでなく、経営理念や経営哲学といった目にみえないものも、企業が反映し、存続していくうえで欠かせない重要なもの。
2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)の中で、経営理念を持つことの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
京セラの経営理念は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」です。
自分の会社をつくるとなれば、最初は誰でも「金儲けをしたい」と思うものでしょうが、私の場合はそのような動機で始めたわけではありません。
そもそも京セラは、私の技術を信用して支援してくださる方々に出資いただいて設立された会社です。当時の私にはお金がなかったものですから、支援者から「あなたの技術を資本金に換算してあげましょう」と言われて、株をいただきました。
当初、京セラは「稲盛和夫の技術を世に問う」ためにつくった会社だと位置づけられていました。つまり、私が前に勤めていた会社で研究した成果がその会社の経営者に理解されず、あまり高く評価されなかったため、それならば、私の技術を自由に世間に問うことのできる場として、新しい会社を興せばいいではないか、ということでスタートしたわけです。
しかし、会社はスタートしたものの知名度は全くなく、なかなか思うようないい人材も集まりませんでした。三年目には高卒入社の新入社員が待遇改善と将来の保証に関する団交を申し入れてきました。
彼らと三日三晩にわたって話し込むなかで、私は「会社の目的とは何なのか」ということをつくづく考えさせられました。
企業経営の真の目的とは、技術者の夢を実現するといったことではなく、ましてや経営者自身が私腹を肥やしたり豊かになることでもない。
現在はもちろん、将来にわたって、社員やその家族の生活を守っていくということにあるのだ、ということに、私はそこで初めて気がついたのです。
そのときの経験から、私は、会社の目的を「自分の技術を試す」ということから、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」こととし、さらに「人類社会の進歩発展に貢献する」ということも合わせて謳うこととしました。
この経営理念をベースに経営を進めてきたことが、現在に至る京セラの発展をもたらしたのだと、私は考えています。(要約)
一般に、企業には二つの資産、つまり「目に見える資産」と「目に見えない資産」があるといわれています。目に見える資産とは、現金や土地、建物などで、目に見えない資産とは、ブランド力や人材など将来収益を上げる要因として作用するものです。
今日の一言では、「資金力があり、優秀な人材を集めたとしても、企業の理念や哲学が明確でなく、従業員のベクトルがそろっていなければ、組織としての力を発揮することはできない」とあります。
2011年発刊の『経営理念とイノベーション』(佐々木圭吾著 生産性出版)の冒頭に、次のような言葉が紹介されています。
「経営理念が希薄になったとき、企業組織の命運も尽きる」
これは、京セラ創業メンバーの一人である伊藤謙介京セラ元会長が、長く企業経営に携わってこられた経験のなかから生み出された経営のエッセンスともいうべき言葉です。
企業本来のミッション、理念が形骸化して、不祥事を起こす、さらにはその事実を隠蔽してしまうといった事例は枚挙にいとまがありませんし、企業が長く存続するにつれて、経営理念が希薄化し、ひいては企業の屋台骨そのものが揺るがされるといった事例も散見されています。
経営者やリーダーは、「理念の力」を信じて、本気になって経営理念の創造と浸透に努めなければならない立場にあるのではないでしょうか。