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『稲盛和夫一日一言』 10月8日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 10月8日(日)は、「ナンバー2の要件」です。

ポイント:ナンバー2の要件とは、第一に「人物」、第二に「管理会計的な計数に明るい人」、第三に「部下の意見に耳を傾け、衆知を集めて物事を決めていく人」。

 2011年発刊の『新版・実践経営問答 こうして会社を強くする』(稲盛和夫著 盛和塾事務局編 PHP研究所)の中で、盛和塾生からの「ナンバー2の要件とは」という質問に対して、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 社内人事において、ナンバー2として適格だということを、どのような基準で判断すればよいのかというご質問かと思います。
 正直なところ、私自身がいつも悩んでいることですから、大変難しい質問だと思います。

 一般に「やり手」という人に跡を継がせると、能力があるがゆえに、積極経営をして会社をだめにしたり、順調に経営していると今度は傲岸不遜になってとんでもないことをしでかす、といったことがよくあります。

 できれば、自分を超える能力のある人に跡を継がせ、もっと会社を伸ばしたいというのは道理ではあります。しかし、安全に事業を継承するということを第一に考えれば、非常に保守的ではあるかもしれませんが、私ならナンバー2の条件に「人柄」を挙げます。心がきれいで、人間として正しいことを貫いていくような真面目な人物を、やはり選ぶべきだろうと思います。

 「仁は人の心なり、義は人の道なり」といいます。ナンバー2には、部下に対する思いやりと、トップであるあなたに対する思いやりの両方がベースに要りますから、「仁」「義」「誠実」そういうものがある人が選ばれるべきです。才能だけを一人歩きさせることなく、その才能を従えるだけの人格を持ち得て初めて、「才を使う人」になれるのです。

 次に必要なのは、「会計に明るい」ということです。計数に強くなければ、経営はできないからです。ただし、ここでの会計とは、商法上の会計ではなく、企業経営をしていくための管理会計のことです。

 第三の資質として必要なのは、「人の話によく耳を傾けることができる」ということです。才知に富む人ではないだけに、衆知を集めて物事を決められる人でなければなりません。

 ナンバー2に手堅い人を選んだ場合、そういう人はいくらか冷たいものですから、私なら「仕事ができるだけではいかん」と諭して、一緒に勉強していくでしょう。(要約)

 一般的には、才能があって器用に売上を伸ばすことができる人、利益がつくれる人が重視されがちですが、名誉会長は、「そうした才能がなければならないのですが、真のリーダーとは、集団を守っていくためによく考え、公平無私な心で判断できる人です。人物を見誤ってはいけません。人物優先で人を選び、育てていくべきです」と諭されています。

 ナンバー2について語られる際、その関係性はさまざまです。
 例えば、社長と副社長、創業者とその後継者、共同代表(パートナー)、店主と大番頭等々。経済界でよく語られるのは、ホンダの本田宗一郎さんと藤沢武夫さんの関係、古くは、三国志における劉備玄徳と諸葛孔明などについても語られています。

 ナンバー2ではあるものの、どちらかと言えば昨日の一日一言タイトル「相棒」に近い関係性にある、ニデック(旧日本電産)の永守重信社長(現代表取締役会長)と、創業時から永守氏を支えてきた小部博志副社長(現代表取締役社長執行役員)とのエピソードを紹介します。

 永守氏が目をかけていた社員が、懲戒免職相当の不正を犯した際、永守氏は、「期待している社員だから大目に見たい」、一方の小部氏は、「他の社員に示しがつかないから処分すべきだ」と主張して口論になりました。
 そこで永守氏が、「お前なんか辞めてしまえ!」と言い放つと、小部氏は「辞めて困るのはアンタやろ!」と痛烈な一言を返します。
 剛腕で知られる永守氏が「その通りやな・・」と反論できなかった。嫌われようがどやされようがトップを守り切るのが、ナンバー2としての矜持。

 今日の一言が、自分が果たしてきた役割をどう移譲していくべきか悩んでおられる方の参考になれば幸いです。


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