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『稲盛和夫一日一言』3/27(月)

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 3/27(月)は、「実体験が財産となる」です。

ポイント:自らが身体を張って取り組んだ実体験こそが、最も貴(とうと)い財産となる。

 2004年発刊の『生き方』(稲盛和夫著 サンマーク出版)の中で、現場で汗をかくことの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 人生では、「知識より体得を重視する」ということも大切な原理原則です。これは、言い換えれば「知っている」ことと「できる」ことは必ずしもイコールではない。「知っているだけで、できるつもりになってはいけない」という戒めでもあります。

 情報化社会となり知識偏重の時代になって、「知っていればできる」と思う人も増えてきたようですが、それは大きな間違いです。「できる」と「知っている」の間には、深くて大きな溝があります。それを埋めてくれるのが、現場での経験です。

 創業して間もないころ、私はある経営セミナーに参加しました。講師のなかに本田技研工業を創業された本田宗一郎さんの名前があり、高名な経営者の話をぜひ一度は聞いてみたいと思い、高額な参加費用を払い、周囲の反対を押し切ってなかば強引に参加を決めました。

 当日、参加者は温泉に入って浴衣に着替え、大広間に座って本田さんが来るのを待っていたのですが、本田さんは浜松の工場から油のしみた作業着姿のまま直行で来られ、開口一番、こう一喝されたのです。
 「みなさんは、いったいここに何をしにきたのか。経営の勉強をしにきたらしいが、そんなことをする暇があるなら、一刻も早く会社に戻って仕事をしなさい。温泉に入って、飲み食いしながら経営が学べるわけがない。それが証拠に、私は誰からも経営について教わっていない。そんな男でも経営ができるのだから、やることは一つ。さっさと会社に戻って仕事に励みなさい」そして、「こんな高い参加費払ってくるバカがどこにいる!」とまで言われました。

 私は本田さんによりいっそう魅せられるとともに、「よし!、オレも早く帰って仕事にとりかかろう」と思いました。
 本田さんは、「畳の上で泳ぎを習ったところで、泳げるようにはならない。それよりも、いきなり水に飛び込んで、無我夢中で手足を動かせ。現場で自ら汗をかかないかぎり、経営なんてものはできやしないんだ」ということを私たちに教えられたのです。
(要約)

 今日の一言には「偉大な仕事をなしうる知恵は、経験を積むことによってしか得られない。自らが身体を張って取り組んだ実体験こそが、最も貴い財産になる」とあります。

 今は「・・・について教えて!」と発声するだけで、たいていのことなら即座に回答が得られる社会環境になっています。

 3/25、26二夜連続で、『キッチン革命』というスペシャルドラマがTV放映されました。
 第一夜は、今では誰もが当たり前のように使っている計量カップ、計量スプーンを生み出し、現代で言うレシピ、“料理カード”を作りあげた女性医師をモデルとしたストーリーでしたが、私が京セラで永らく担当していたセラミック材料の研究開発も、まさに料理そのものでした。

 Aという主原料にB、Cという添加物を加え、それを成形して焼成炉で焼結させる。それだけ聞けば、誰もがとても簡単な仕様(=レシピ)じゃないか、と思うかもしれません。

 ハンバーグ料理を例にとると、肉は合い挽きにするとして、牛と豚の比率は?、挽き具合は?、具材のタマネギはどのくらいの大きさに刻むの?、つなぎに使う卵とパン粉と牛乳の比率は?、塩はどうするの?、どのタイミングでどのくらい混ぜ合わせればいいの?、楕円形に成型して手の平で打ちつけるけどどのくらいで空気が抜けるの? 焼き具合は何で判断すればいいの??? ・・・「超簡単」と書かれているレシピでも、実際に自分でやってみないと分からないことだらけでしょう。
 しかし、実際にレシピ通りの素材、分量でつくってみると、レストランの味には到底かならないものの、家族に食べてもらえるくらいにはできそうだ、と気づけます。

 名誉会長はご自身の経験も踏まえて、「実体験が財産になる」と言われたのだと思っています。
 自らの経験知にこだわり過ぎて失敗する人も少なくありませんが、自ら身体を張って取り組むからこそ、後々の財産となる貴重な実体験を手にすることができるのも、また事実です。  ” Let's Try ! " 
 いくつになってもチャレンジ精神だけは失いたくないものです。


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