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『稲盛和夫一日一言』 8月15日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 8月15日(火)は、「知識より体得を重視する」です。

ポイント:「知っていること」と「できる」ことは、必ずしもイコールではない。その二つの間には深くて大きな溝があるが、それを埋めてくれるのは現場での経験。

 2004年発刊の『生き方』(稲盛和夫著 サンマーク出版)の中で、「知識より体得を重視する」ということについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 人生では、「知識より体得を重視する」ということも大切な原理原則です。これは、いいかえれば「知っている」ことと「できる」ことは必ずしもイコールではないということであり、「知っているからといって、できるようなつもりになってはいけない」という戒めでもあります。

 セラミックスの場合にも、この原料とこの原料を混合して何度で焼成すれば、狙った通りのセラミックスが合成できるということは、本や文献を読めば書いてあります。しかし、その通りにやってみても、なかなか思い通りのものはできませんが、現場で何度も経験を積んでいくうちに、次第にその真髄を把握できるようになってきます。
 つまり、知識に経験が加わって初めて、物事は「できる」ようになるのであって、そういう状態に至るまでは、「単に知識として知っている」というだけに過ぎません。

 情報化社会の進展に伴い、ますます知識偏重の傾向が強くなり、「知っていればできる」と思う人も増えてきているようですが、それは大きな間違いです。「できる」と「知っている」の間には、深くて大きな溝があり、それを埋めてくれるのが、現場での経験なのです。

 偉大な仕事をなしうる知恵は、経験を積むことによってしか得られません。自らが身体を張って取り組んだ実体験こそが、もっとも貴い財産になるのです。(要約)

 京セラに入社して研究所に配属された私は、まさに「知識より体得を重視する」という原理原則がぴったり当てはまるような毎日を送ることになりました。
 新しい特性を持つセラミックス材料を研究する際は、まず最初に参考になりそうな文献を調査・入手するところから着手します。文献が手に入ると、そこに記載された原材料や製造プロセスを忠実にトレースして、記載通りの特性を持つ材料が合成できるのかどうかを確認する、いわゆる再現実験を行うのが常でした。

 しかし、同じ主成分の原材料を入手できたとしても、それをどのくらいの粒子径に粉砕するのか、また添加物を配合する際、どの程度の混合状態にすればうまく焼結させることができるのかといった詳細な実験条件などは、ほとんどといっていいくらい記述されていません。
 また、最も厄介なのが焼成というセラミックスを高温で焼き固める工程でした。焼成といっても一般の方には分かりにくいかと思いますが、炊飯器でご飯を炊く際の炊飯器が持っている役割をイメージしてもらえれば分かりやすいかと思います。

 お米を研いで水を足して炊飯器にセットする。後はスイッチを押してしばらく待てば、おいしいご飯が炊き上がるのですが、それを実現させているのが、炊飯器に内蔵されている温度制御プログラムです。常に理想的な温度プロファイルを選択してご飯をおいしく炊き上げてくれるようセットされているのですが、そのプログラムの詳細がどのようなものかということは、各メーカーの企業秘密となっています。

 シミュレーション技術が大幅に進歩してきて、バーチャルで体験する機会も確実に増えてはきていますが、まだまだ実際に身体を使って体験しなければわからないことは数えきれないくらい存在しています。

 当然のことながら、正しい知識を整理された形で頭の中にインプットしておくのは大切なことですが、それ以上に、自分で実際にやってみて五感で感じるという行為が大切だということは、誰しも納得できるところではないでしょうか。


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