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『稲盛和夫一日一言』 2月2日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 2月2日(金)は、「動機善なりや、私心なかりしか ②」です。

ポイント:「動機善なりや」と自問自答し、動機の善悪を確認する。さらに「私心なかりしか」と問いかけ、自己点検してみて「一切の私心はない」と確認できれば迷わず手を挙げること。

 2015年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第2巻 私心なき経営哲学』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)収録の「第一回経営講座トップセミナー講演」(1995年)の中で、電気通信事業への参入を決断した際の経緯について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 そもそも、「べらぼうに高い料金を取っている独占企業はけしからん。誰かが新規参入して競争原理を導入し、その結果、一般大衆の通信料金を安くしてほしい」とは思っていたものの、まさかそれを自分がやるとは思ってもみませんでした。

 その後、同じ志をもつ若手技術者を集めて勉強会を始めたのですが、なかなか声をあげるところがありません。
 それなら、「社会正義のために私がやろう」と言ったら、電電公社(当時)を辞めて京セラに入ってくれていた千本君も「やりましょう」と乗り気なのですが、話を聞いた百人が百人とも「失敗する」と言います。

 しかもその失敗は桁違いで、「ちょっと手がけて失敗して撤退しただけで、最低でも1,000億円の損失にはなるでしょう。だから、大企業や大手商社、銀行も手が出せないのです」と言われました。

 このままでは、私の義侠心、正義感が許さない。しかしちょっと冷静になって考えてみると、「やめておこう。これは危険すぎる」と思う。

 私は何か物事を考えるとき、「これは悪魔のささやきではないか」と自らに問います。いい話が来ても、「悪魔はニコニコ顔で近づいてくる」と、自分に言い聞かせながら聞いているわけです。
 それほど慎重な私ですから、いざ「やろう」と思っても、非常に危険だと諭されると、たいへん心配になりました。

 お酒を飲んで酔っ払って帰ったときでも必ず、寝る前に目をつぶって「動機善なりや、私心なかりしか」と自分自身に問い続けました。
 そうやって、「動機は不純ではなく、私心があるわけではない」ことを確認していったのですが、そこに至るまでには数か月を要しました。

 ものごとを判断するときは、本能で判断するのではなく、また感覚で判断するのでもなく、感情で判断するのでもなく、理性で判断するのでももちろんなく、魂に照らして判断すること。

 私たちは、放っておくとすぐに本能や感覚、感情で判断をしてしまいがちです。だからこそ、「そうあってはならないのだ」と常に自分に言い聞かせることが大切です。そうした反省の繰り返しがありさえすれば、少しずつ素晴らしい判断ができるようになり、人生も経営もうまくいくようになっていきます。(要約)

 2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)「動機善なりや、私心なかりしか」の項で、名誉会長は次のように説かれています。

 この「動機善なりや、私心なかりしか」というフィロソフィ項目は、私が日ごろお話ししている人生方程式のなかの「考え方」の一つです。

 自分の行動は、ほんとうに「利己」から発せられたものではないのか、誤った考え方に基づいてはいないかを自己点検するための問いなのです。そうした意味から、人生方程式の「考え方」を補完する大事な項目と言えるでしょう。

 ここで出てくる「善」とは、単純に、良いこと、正直なこと、人を助けること、優しさ、思いやりのある心、美しい心、さらに言えば、純粋な心という意味です。

 つまり自問自答する際に、あなたのその動機は、良いことなのか、正直な気持ちから出たものなのか、人の助けになることなのか、そこに優しさはあるのか、人に対する思いやりの心はあるのか、美しいことなのか、さらに、その思いは純粋なのか、と聞いていくわけです。そう考えれば、分かりやすいかと思います。(要約)

 私にとって、この「動機善なりや、私心なかりしか」という問いかけは、「後ろ暗い気持ちにならないか」という言葉に置き換えられると思っています。

 何かしようとしたとき、それは会話であっても行動であってもそうなのですが、何かしら気が引けて止めてしまった、逆に、あまり深く考えもせずにやってしまった後にイヤ~な気持ちが残ってしまう。誰しもそうした経験はあるはずです。

 心の中、あるいは魂のどこかに、自分の「良心」というものがあって、考えもなく良心に反したことをしようとすると、そこからアラームが発せられて、自分の言動にブレーキがかかる。
 それは、まさに自動車に装備されている自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)のようなもので、「善」なるものと異なる思いが心に浮かんできたら、いちはやくそれを察知して、先行して制動をかけてくれる。

 そうした心の自動ブレーキを正常に作動させ続けるために必要なのが、「反省のある毎日を送る」ということではないかと思っています。


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