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『稲盛和夫一日一言』 10月5日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 10月5日(木)は、「実力主義」です。

ポイント:組織を運営していくうえで重要なことは、本当に実力のある人が、その組織の長につくこと。素晴らしい人間性と能力を有し、仕事に対して熱意を持ち、人間として尊敬され、信頼できる人物を適材適所に配置してこそ、会社は成長していくことができる。

 2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)の中で、「実力主義に徹する」の項で、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 組織を運営していくうえで最も重要なことは、それぞれの組織の長に本当に力のある人がついているかどうかということです。
 本当に力のある人とは、職務遂行の能力とともに、人間として尊敬され、信頼され、みんなのために自分の力を発揮しようとする人です。こうした人が組織の長として場や機会を与えられ、その力を十分に発揮できるような組織風土でなければなりません。

 こうした実力主義によって組織の運営が行われれば、その組織は強化され、ひいてはみんなのためになっていきます。京セラでは年功や経歴といったものではなく、その人が持っている真の実力がすべてを測る基準となっているのです。

 つまり、大家族主義ではあっても、立派に仕事を遂行していける能力を持っていて、同時に人間としても尊敬でき、信頼できる人を組織の長に据えましょう、ということです。
 それは、皆が幸福になっていくためには、どうしても必要なことだと思います。実力を持った人が皆を引っ張ってくれ、事業を成功に導いてくれるからこそ、経営の理念に掲げている「全従業員の物心両面の幸福」を実現できるのです。

 もし能力のない人を、単に一番年長だからという理由でリーダーに据え、それで経営がうまくいかなくなってしまったのでは、全従業員でその不幸を背負うことになってしまいます。そのような温情主義の経営はしない、そのことを強調したいがために、「実力主義に徹する」と言っているわけです。(要約)

 2022年発刊の『経営のこころ 会社を伸ばすリーダーシップ』(稲盛和夫述 稲盛ライブラリー編 PHP研究所)で、「成果主義ではなく実力主義でいく」と題して、名誉会長は次のように述べられています。

 実力主義は「一将功なりて万骨枯る」というようなものではない。実力主義にも課題はあるが、説明と説得によって弊害は防ぎ得る。
 実力主義によって選ばれた人たちが活躍することで、会社に益がもたらされ、会社が立派になっていくのである。
(抜粋)

 「一将功成りて万骨枯る(いっしょうこうなりてばんこつかる)」とは、輝かしい功績をあげた人の影には、それを支えた無数の人々の努力や犠牲がある、という意味です。
 一人の将軍が名を上げた影には、無名のまま犠牲となっていった多くの兵士が骨と化して戦場にさらされているという状況が由来とされていて、「上に立つ者は、下で働く者の苦労を忘れてはならない」という戒めの意味も含まれているとされています。

 また名誉会長は、京セラ創業メンバーとの次のようなエピソードを紹介されています。

 私は、「我々は、この京セラという会社をもっともっと大きくしていこうとお互いに約束し合ったのだから、よしんば創業メンバーである我々の上に途中入社の人が来てもかまわない、会社が大きくなっていくのが目的なのだから、それは結構だと言ってくれるなら、採用していきたいと思うがどうか」と他の創業メンバーに問いかけました。
 すると、皆が「結構です。我々の上に来てもらっても構いません」と応えてくれましたので、その後社外の優秀な人たちを入れて、会社が発展していったという歴史があります。それが、京セラにおける実力主義の原点なわけですから、説得力があるのではと思います。(要約)

 会社の規模が大きくなると、誰もが一様に納得できる人事を行うのは至難のことだと思いますが、京セラでは今なお、実力主義に基づいて適材適所に配置する、みんなのために一番頑張ってくれる人をリーダーに据える、という風土は維持されているように思います。


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