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『稲盛和夫一日一言』 6月18日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 6月18日(火)は、「謙虚であれ」です。

ポイント:人は、自分に誇るものが何もないからこそ威張り、ふんぞり返って自己顕示欲を満たそうとする。謙(へりくだ)ることは、何もみっともないことではない。

 2016年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第5巻 リーダーのあるべき姿』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)の中で、リーダーが最も大切にすべきものとして、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 際立った能力もない、どこにでもいそうな青年であった私が、ただ一生懸命、誰にも負けない努力を重ね、一途に働いてきた結果、京セラは次第に大きくなっていきました。

 ところが、いつ何時どんなはずみで会社が潰れてしまうかわからないと、心配でなりませんでした。その気持ちは、会社が一兆円を超える売上規模になっても変わりませんでした。
 しかし、そのような絶えることのない心配が、むしろエンジンとなって、私に一生懸命仕事をさせてくれたのだと思っています。なぜなら、経営者がほっこりして危機感を失ってしまったとき、会社はダメになるからのです。

 会社がうまくいけば、多くの経営者はすぐに有頂天になり、自分の力で成功したのだと驕り、やがて没落してしまいます。成功を遂げた後こそ、「謙虚にして驕らず」ということが大切になるのです。

 京セラが上場したとき、私は自分自身にそのように言い聞かせましたが、西郷はそのことについて遺訓集の中で次のように言及しています。

【遺訓二六条】
 己れを愛するは善からぬことの第一也。修業の出来ぬも、事の成らぬも、過(あやま)ちを改むることの出来ぬも、功に伐(ほこ)り驕慢(きょうまん)の生ずるも、皆自ら愛するが為なれば、決して己れを愛せぬもの也。

【訳】
 自分を愛することは、よくないことの筆頭だ。修行ができないのも、事業が成功しないのも、間違いを改めることができないのも、自分の手柄を誇って生意気になるのも、すべて自分を愛するがためである。だから、決して自分を愛してはならない。

 人は、自分が一番大事で一番可愛い。だから、自分が傷ついたり、損なわれたりすることを最も嫌います。そしてともすれば、自分は能力があり、仕事ができるのだといって自分を褒(ほ)め、つい天狗になる。それを西郷は、「己を愛する」という言葉で表現しているわけです。

 経営者が自分を誇るようになってしまったら、会社はダメになっていきます。私は自分自身を戒め、「謙虚にして驕らず」という言葉を座右の銘として、いくら京セラが発展しようとも、今日まで営々と仕事に励んできました。

 西郷南洲の思想は、「無私」という考えに貫かれています。公平に心を操り、自分自身を無くすという、「無私」の考え方は、リーダーにとって一番大事なことです。

 経営者でも政治家でも官僚でも、偉くなればなるほど、率先して自己犠牲を払うべきです。自分のことはさておき、自分が進んで損を引き受けるというような勇気がなければ、上に立ってはならないのです。いや、上に立つ資格そのものがない。自己犠牲を払う勇気のない人が上に立てば、その下に住む人たちは不幸になります。

 リーダーにとって最も必要な要諦は、私心をなくすることです。西郷南洲自身の思想は、すべてそうした「無私」の考え方に帰結していると私は考えています。(要約)

 今日の一言には、「謙虚、つまり謙ると言えば、何かみっともないような感じを抱かれる人もあるかもしれませんが、それは誤りです。もし、控えめに謙虚に振る舞うことによって、他人からバカにされたなら、それはバカにする人間のほうが間違っているのです」とあります。

 冒頭のイラストに示した「arrogance」という単語には、「横柄、傲慢、尊大。自分が他人よりも優れていると思い込んで、高慢な態度や言動をとること」といった意味が、一方「modesty」には、「謙遜、謙虚、慎み深さ、地味、つましさ、控えめ、穏当、しとやかさ」といった意味があります。

 「無私」「勇気」「率先垂範」「自己犠牲」「世のため人のため」「人間として何が正しいのか」「思いやりの心」・・・

 自らの心の中にある判断の基軸に従って次の行動を起こそうとするとき、あなたは果たしてどちらの一歩を選択しているでしょうか?


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