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『稲盛和夫一日一言』 6月5日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 6月5日(水)は、「いい仕事をする条件 ①」です。

ポイント:いい仕事をするために必要不可欠なことの一つは、「細部にまで注意を払う」ということ。いい仕事とは、細部をおろそかにしない姿勢からこそ生まれる。

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSIONー 』(稲盛和夫著 PHP研究所)「細部にまで注意を払う」の項で、有意注意(ゆういちゅうい)を習慣づけることの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 人間の本当の能力は、正しい判断ができるかどうかで測ることができます。
 正しい判断をするには、自分が今どういう状況にあるかということを、よく知っている必要があります。そのためには、物事の核心に触れるほどの、鋭くかつ細部にまで行き渡る観察力がなければなりません。

 この鋭い観察力を生むのは、神経の集中です。しかし、こうした集中力は一朝一夕に持てるようになるわけではありません。
 集中するというのは習慣性の問題です。もし細部にまで注意を払う習慣を身につけていれば、どのような状況にあってもたちどころに集中することができるでしょうし、そのような習慣がなければ、極めて難しいことになるでしょう。

 忙しすぎてできないと思うかもしれませんが、逆に忙しいときこそ、細部にまで注意を払う努力を意識して行うべきです。
 これがいわゆる「意図的な注意」、つまり「有意注意」なのです。

 この有意注意を習慣づけることにより、いざというときに正しい判断を下せる能力が涵養(かんよう)されるのです。
 正しい判断を素早く下すための注意深さと洞察力を見につけている人こそが、本当に「有能な」人なのです。
(要約)

 今日の一言には、「雑用のような単純作業でも、いや単純作業であるからこそ、丹念に丁寧にこなす必要があります。『神は細部に宿りたまう』というドイツの格言があるように、仕事の本質は細部にあるのです」とあります。

 2012年発刊の『京セラものづくりの心得を語る』(伊藤謙介著 京セラ経営研究部編/非売品)の中で、「ささいなことをおろそかにしない」として、伊藤元京セラ会長は次のように述べられています。

 良品を100%再現しようとすれば、現物を徹底的に観察すると同時に、どんなささいなこともおろそかにせず、地味な作業を一つひとつ確実にやっていくことが必要です。

 セラミック材料の組成を決めるための実験では、まず数種類のセラミック粉末を粉砕メディアと一緒に小さな円筒形のポットの中に入れ、数時間回転させて混合します。素材の種類や比率などの条件を少しずつ変更して調合するため、私もよく同時に数個のポットを使って実験をしていました。

 創業当初、粉砕メディアは現在使用されているようなきれいな表面をしたセラミックボールではなく、玉石(たまいし)と呼ばれる扁平な形をした天然石でした。
 繰り返し使用しますから、毎日丁寧に洗浄しておかなければ、玉石の表面にあるピンホール状の隙間に、前の実験で使用した原材料が詰まっていて、それが影響しておかしな結果がでてしまうといった失敗がありました。
 そのため、私は何百個もある玉石を1個ずつ丁寧にタワシで洗って使用するようにしていました。寒い日などは、かじかんだ手をストーブにかざしながら、一生懸命に洗ったものです。

 そうした地味な作業を確実にやっていくことが、しっかりとした再現実験につながっていくのです。ささいなことではないかと思われるようなところをいいかげんにしていると、いくら実験を繰り返しても同じものを再現することはできません。
 100%再現に求められる基本的な姿勢は、研究開発をしている人であれ、工程の歩留り改善を担当している人であれ、同じだと思います。非常に細かいことにも気を配り、すさまじいまでの集中力を持って完璧な実験をすることが大事なのです。
(要約)

 この内容は、「起こった現象を100%再現する」という項の一部なのですが、そこには、「研究開発においては、一つの良品ができあがった過程を忠実に再現することができれば、その製造仕様が見えてくる」という名誉会長の考えが背景となっています。

 日ごろから意識を研ぎ澄ませ、すさまじい集中力を持って仕事に取り組むことで、細部の条件からそこに臨んでいるときの自身の精神状態に至るまで、自分の身の回りに起こったすべての現象を正しく把握しておく。
 そうすることが、起こった現象を100%再現することにつながっていく、という考え方です。

 Don’t sleep through life!

 『チコちゃん』に叱られないよう、毎日「有意注意」で生きていきたいものです。


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