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『稲盛和夫一日一言』3/11(土)

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 3/11(土)は、「なぜ長期計画を立てないか」です。

ポイント:今日のことさえうまくいかず、明日のこともわからないのに十年先が見えるわけがない。しかし、今日一日一生懸命に仕事をし、工夫を重ねれば、きっと明日が見えてくる。その連続が将来の大きな成果をもたらしてくれるはず。

 2015年発刊の『稲盛和夫経営選集 第3巻 成長発展の経営戦略』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)の中で、数字に表れない経営のベースとなる考え方について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 京セラを設立して36年になりますが、私はこれまであまり戦略というものを組んできませんでした。
 特に私が社長を務めていた期間には、中長期の経営計画は策定せず、年次計画だけをつくってきました。それは、中長期計画を立てても、自分たちの意志とは無関係な動きをする景気変動など、さまざまなファクターに影響されてしまって狂いが生じ、それをそのままにして、立てたスケジュール通りに展開していこうとすると、無理が生じてくるからです。

 私は、会社設立時からごく最近まで、「今日一日最善を尽くして生きれば、明日は見えてくる。今月一ヵ月精一杯生きれば、来月は見えてくる。今年いっぱい一生懸命生きれば、来年のことも見えてくる。しかし、二年先、三年先、五年先というのは、まことに神ならぬ身の知る由もなし」という考え方で、今日の京セラグループをつくり上げてきました。

 人間は生きている限り必ず何かに遭遇しています。
 例えば事業をしていると、「この会社を助けてくれないか」とか「困っているからこの工場を買ってくれないか」といった機会がいくつも巡ってきます。私はそういう事象に遭遇したとき、これに手を染めることは最善か、ということと、「天の時、地の利、人の和」について考えます。
 つまり、何かに遭遇して物事を実行しようとするとき、まず自らに「動機善なりや」ということを問いかけ、さらに自分の周辺に「天の時、地の利、人の和」という三要素が備わっているかどうかを考えます。
 それと同時に、相手の立場を尊重し、相手側のことを思いやる心、仏教で言う「利他の心」を常に念頭において、物事を判断してきました。
(要約)

 多くの企業では、まず経営ビジョンを実現していくための大枠となる中長期計画が策定され、それを短中期計画にブレイクダウンし、さらに各年度の具体的な数値目標が決定される、といったプロセスが一般的かと思います。

 京セラフィロソフィに「高い目標を持つ」という項がありますが、その中で、名誉会長は次のように解説されています。

 高い目標を設定する人には大きな成功が得られ、低い目標しか持たない人には、それなりの成果しか得られません。しかし、大きすぎる目標に向かってただ突っ走るだけでは必ず失敗します。
 長期的な視野で高い目標を立て、それに向かって具体的な計画を立てて進めるといった知識も余裕もないときには、今日一日を一生懸命に生きることに集中する。そうすれば、明日は自然と見えてくる。今週一週間を一生懸命に生きれば、その次の一週間が見えてくる。今月を一生懸命生きれば、来月が見えてくる。今年一年を一生懸命に生きれば、来年が見えてくる。だからこそ、この瞬間に全精力を傾注して生きることが大切なのだ。(要約)

 この考え方は、今日の一言「なぜ長期計画を立てないのか」とリンクしています。

 しっかりとしたビジョンを描き、それを実現するための中長期計画を立案し、それを確実に遂行していく。夢を実現していくには、そうしたアプローチがベターなのでしょうが、目の前のうまくいかない事象に苛立ち、今日一日を満足な結果で終わらせることもままならない。
 果たして睡眠時間を削ってでも今日中に終わらせるのか、あきらめて明日がんばろうと早々に妥協してしまうのか。頭の中は、冷静な判断もできないほど混乱してしまっていて、何も手に着かなくなる・・・

 そうした日々の葛藤を抱えながらも夢の実現に向かって確実に前進していくためには、まずは「今日一日を一生懸命に生きることに集中する」という取り組み方もあるのだと認めてみる、というのはどうでしょうか。


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