『稲盛和夫一日一言』 7月27日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 7月27日(土)は、「欲望から感謝へ」です。
ポイント:おのれの欲望を抑圧して我慢するのではなく、今あるものに対して感謝の心を持つこと。今の世の中においては、「欲望から感謝へ」というような心の転換が必要なのではないか。
2011年は発刊の『京セラフィロソフを語るⅡ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究部編/非売品)の中で、人間の持つ欲望について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
人間の利己的な欲望は、放っておけば際限なく肥大化していきます。すでに手に入れた豊かさに満足せず、さらなる豊かさを求めようとします。
しかし、いくら欲望を満たそうとしても、それは決して満足させられるものではありません。なぜなら、際限のない欲望にとらわれている人は、どんなに物資的に豊かになろうとも、心の豊かさを感じることができないからです。
人間にとっての豊かさとは、「足るを知る」心があって初めて感じられるものです。足るを知り、日々感謝する心を持って生きることによって、人生は真に豊かで、幸せなものとなっていくのです。
「足るを知る」とは、もともと仏教の教えからきた言葉ですが、私は
人間として最も大事だといってもよいくらい重要な思想、考え方だと思っています。人生を真に豊かで、幸せなものにしていくためには、利己的な欲望というものを抑え、足るを知らなければなりません。
自然界では、すべての生物がもともと「足るを知る」ということを本能として持っています。
例えば、アフリカの草原にいるライオンなどの肉食動物は、周辺にいる草食動物を殺して食べますが、お腹がいっぱいのときには、近くにどんなにか弱い草食動物がいても襲おうとはしません。一度獲物を捕らえて食べると、一週間くらいはそのままダラダラしています。そしてお腹が空いたら、また周辺にいる草食動物を捕らえて食べる。つまり、「足るを知る」ということを本能として知っているわけです。
しかし、人間だけが利己的な欲望が非常に強いため、「足るを知る」ということを、改めて知識として教えなければその必要性を理解できません。
ですから人間は、「足るを知る」ということを知識、または知恵として、どうしても学んでいかなければならないのです。
今までの資本主義における象徴的な考え方は、「使い捨てることが経済を大きくしていく。長持ちするものをつくってはいけない。ある一定限度使えば壊れてしまうものをつくるべきだ。それが経済の発展には不可欠である」といった使い捨ての考え方でした。
「もっともっと欲しい」という利己的な欲望が科学技術の進歩を促し、経済の発展を促し、今日のような素晴らしい物質文明の世界をつくりあげる原動力となったのは紛れもない事実でしょう。
しかし、今後とも「足るを知る」ことを知らず、新しい文明に転換できずに利己的な欲望だけでつくり上げてきた文明をますます肥大化させていった場合には、おそらく人類は破滅への道へと向かうのではないでしょうか。
どこかで、利他的な欲望が求める文明へと切り替わっていかなければならなくなるのではないか、私はそう思っています。
「飽くなき欲望の追求は、悪をなす」
これは、人間が生きていく上でたいへん大事なことですから、よく覚えておいていただきたいと思います。(要約)
今日の一言には、「今ここにこうしてあることをありがたいと思い、それに感謝できることは、心が豊かで充実している証(あかし)である」とあります。
昨日の一言『素直な心がもたらすもの』でも示しましたが、感謝の気持ちを持つことの大切さについて、名誉会長は次のように説かれています。
感謝の気持ちを持つことで、自分の心が美しくなっていき、運命そのものが明るく開かれていく。感謝をする心が、幸運を呼び込むのです。(要約)
皆さんも、「我慢するのは良くないことだよ」とか、「自分の心の欲するままに素直に生きていこう!」などといったアドバイスや励ましの言葉を聞かれることがあると思いますが、私たちは、「どうしてもしなければならない」我慢があること、そして「欲し過ぎてはならない」欲望があることも知っておかなければなりません。
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