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『稲盛和夫一日一言』 3月16日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 3月16日(土)は、「チャンスをつかむ人」です。

ポイント:素晴らしいチャンスは、ごく平凡な情景の中に隠れている。それは、強烈な目標意識を持った人の目にしか映らない。

 2022年発刊の『経営12ヶ条 経営者として貫くべきこと 』(稲盛和夫著 日経BP/日本経済新聞出版)「第3条 強烈な願望を心に抱く」の項で、「何としても達成したい」という願望をどれくらい強く持つことができるかが成功のカギになるとして、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 人間には「顕在意識」と「潜在意識」があると言われています。顕在意識とは目覚めている意識のことで、自在に駆使できるものですが、潜在意識は、通常は意識の下に沈み込んでいて表面に出ることはなく、自分の意のままにはコントロールできないものです。

 心理学者によれば、潜在意識は顕在意識よりもはるかに大きな容量を持っていて、私たちも日常生活の中で知らず知らずのうちに使っていたりするものです。車の運転操作などがそのいい例でしょう。

 この潜在意識を自在に活用するには、二つの方法があると言われています。一つ目は衝撃的な印象を受けることですが、そのような経験はなかなか望んで得られるものではありません。
 二つ目は、繰り返し繰り返し何度も経験することです。例えば、ある目標を立てて、それを朝起きてから夜寝るまで、明けても暮れても四六時中考えるようにします。すると、強く考え続けた願望が自分の潜在意識の中に入っていきます。

 そうした状態にまでなれば、たとえ別のことを考えていたとしても、その願望に対して勝手に強く潜在意識が働き、それが実現する方向へと自然に向かわせてくれるようになるのです。
 そうした潜在意識にまで透徹するほどの強く持続した願望は、一瞬の出会いさえも逃しません。私にもそうした経験がありました。

 1983年夏のこと、まだ京都の一中小企業でしかなかった京セラが、国家的事業である電気通信事業への参入について検討を重ねていたころのことです。当時、私が副会頭を務めていた京都商工会議所に、NTTの技術幹部が講演に来ました。この出会いにより、計画は一気に進捗していったのです。

 本来なら、講師として招かれたその技術幹部との出会いも、そのまま通り過ぎてしまうような事象だったのかもしれません。しかし、私の潜在意識のなかには、「何としても実現したい」という強い願望が浸透していましたから、その一瞬の出会いを逃さず、素晴らしいチャンスとして生かし、その後の事業の成功へと導いていくことができた、と思っています。

 そのようになるまでには、繰り返し繰り返し強く思い続けることが必要です。つまり、全身全霊を傾けて顕在意識を働かせ続ける過程が必要になってくるのです。
 目の前の案件を軽く受け流し、適当に処理しているようでは、決して潜在意識にまでは浸透していきません。炎のように燃える願望を持ち続けることでしか、潜在意識を活用することはできないのです。
(要約)

 そこには、次のような例もあげられています。
 
 ある日、飲み屋で飲んでいると、隣の席から、見ず知らずの人が話している声が聞こえてきた。その内容は今まさに自分がやりたいと考えている分野のことで、話し声の主はどうもその専門家のようだ。
 こらえきれずに、「すみません。今のお話をお聞きしていたのですが」と思わず話しかけてしまう。それが縁で、見ず知らずの人であったにもかかわらず、やがてその人と一緒に仕事をするようになり、それを契機に新規事業が展開していくことになる。
 そうしたことは往々にしてあることです。
(要約)

 私にも、突然別の部署の先輩から「相談があるから会えないか」と連絡があり、会って話をしてみると、まさに自分がやりたいと思っていた新規ビジネスを検討するための新しい組織を立ち上げたいと思っているので、ぜひ君にも参加してほしい、という内容だったという経験があります。

 京セラフィロソフィでは、「ものごとの結果は、心に何を描くかによって決まります。心が呼ばないものが自分に近づいてくることはないのであり、現在の自分の周囲に起こっているすべての現象は、自分の心の反映でしかありません」と説かれています。

 強烈な目的意識を持っているかどうかで、目の前の平凡な出来事も、まったく違った意味を持ってくるのだということを、常に意識しておきたいものです。


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