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『稲盛和夫一日一言』11/8(火)

こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 11/8(火)は、「普遍的に正しい判断」です。

ポイント:「自分にとって」都合のよい判断ではなく、「人間にとって」普遍的に正しい判断を心がけなければならない。

 2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究課編/非売品)の中で、私心のない判断を行うことの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 何かを決めようとしたするときに、少しでも私心が入れば判断はくもり、その結果は間違った方向へと行ってしまいます。
 人はとかく、自分の利益となる方に偏った考え方をしてしまいがちです。みんなが互いに相手への思いやりを忘れ、「私」というものを真っ先に出していくと、周囲の協力も得られず、仕事はスムーズに進んでいきません。また、そうした考え方は集団のモラルを低下させ、活動能力を鈍らせることにもなります。
 自分さえ良ければという利己心を抑え、人間として正しいか、私心を差し挟んでいないか、常に自問自答しながら物事を判断していかなければなりません。
(一部要約)

 京セラでは、「公私のけじめ」が大切にされています。勤務時間中の私用電話は慎むなどはどの職場でも当たり前のことでしょうが、お客様や取引先の方からのいただきもの、例えば賞味期限のあるお菓子などは職場内で分け合うか、持ち回りにして他部署に配分したりします。また分けられないものや数量の少ないもの、例えばダイヤリーやカレンダー、販促用グッズやお酒といったようなものは管理部門で一定期間プールしておいて、忘年会やスポーツ大会などといった各種イベントの際の副賞として活用します。
 このように運用されているのは、ささいな公私混同であってもそれがモラルの低下を引き起こし、ついには会社全体にも蔓延してしまうからです。
 普段から公私のけじめをきちんとつけ、日ごろからちょっとした心の緩みが生じないよう、自らを厳しく律する、同時に自分の周囲にも気を配り、小さな不正も見逃さないようにする。小さなことの繰り返しではありますが、公私のけじめを大切にすることは、不正の起こりにくい職場風土を醸成するトレーニングにもなっています。

 実業家の石田禮助(れいすけ)が、日本国有鉄道再建のため78歳で第5代総裁総裁に就任後、国会に初登院した際の自己紹介で、「諸君!私は嘘は絶対つきませんが、知らぬことは知らぬというから御勘弁を。生来粗にして野だが卑ではないつもり。国鉄が今日の様な状態になったのは、諸君(国会議員)たちにも責任がある」と述べています。

 「粗にして野だが卑ではない」とは、言動が雑で粗暴な面があっても、決して 卑しい行いや態度を取るようなことはしない、といった意味ですが、「公私のけじめを大切にする」という京セラフィロソフィにも、決して従業員を卑しい人間に育てていくようなことがあってはならない、という稲盛名誉会長の強い思いが込められています。

 人間は、自分の欲望を満足させるためには、仕事上の立場さえ利用しかねません。会社の立場を利用して個人的に利益を得るということは、仲間に対する「背信行為」です。「人間として何が正しいか」を普遍的に正しい判断基準として、邪(よこしま)な心が芽生えることのないよう、日々自制していくことが大切ではないでしょうか。


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