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『稲盛和夫一日一言』 5月28日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 5月28日(火)は、「感性的な悩みをしない ②」です。

ポイント:人生や仕事で起きる障害や問題に、感情や感性のレベルでとらわれても何も解決しない。苦しければ苦しいほど、理性を使って合理的に考え尽くし、一生懸命に努力する。「人事を尽くし」たなら、あとは余計な心配はせず、「天命を待つ」こと。

 2015年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第2巻 私心なき経営哲学』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)の中で、経営における「六つの精進」の一つ、「感性的な悩みをしない」について、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 「感性的な悩み」とはどういうものか。我々は肉体をもっていますが、その肉体を動かしているのは心です。心の構造は、一番外側から本能があり、その内側に感覚・感情があり、理性があり、霊性があり、中心に魂がある、といった多重構造になっています。

 この中で、肉体がもっている本能と、大脳がもっている感覚・感情に伴う悩みは一切しないということです。例えば、手形が落ちないので会社が明日つぶれるかもしれない、といった悩みは一切しないようにするということです。

 こんなことを言えば、会社がつぶれるかもしれないというときに心配しないでいれば、本当につぶれてしまうではないか、と思われることでしょう。
 もちろん、そのようなときには、手形を落とすために走り回り、倒産を回避すべく必死に頑張らなければなりません。けれども、そのことで心を深く悩ますような心労をしてはいけない、ということです。

 一生懸命頑張ったのに会社がつぶれてしまう、というような苦難は、いくら努力をしても、この現世で生きている中で起こり得ることです。
 一生懸命頑張ったが会社がつぶれてしまった、ということならば、それはそれでしようがないと思うべきなのです。

 そんなばかな、と思われる方もあるでしょうが、私は本当にそう思っています。それを奥さんや世間に顔向けができないなどと余計な心配をするものだから、心労が積み重なるのです。
 一生懸命頑張った結果、会社がつぶれてしまうのはしようがないことです。たとえあなたが一生懸命頑張っても、回し手形をくれた相手が倒産し、たいへんな負債を抱え込んでしまうといったケースもあり得るからです。

 もちろん、誰にも負けない努力をすることが一番大切ですから、一生懸命努力はしなければなりません。しかしそのことで、心を煩わすような悩み方をしてはいけないのです。

 会社の経営以外でも、現世では自分の思うようにならないことがたくさんあります。災難にも遭いますし、重病にかかることもあります。
 さらには、生まれながらに五体満足でない方もいます。そのような方は、たいへん苦労をして人生を歩んでいきますので、我々から見れば、非常に不幸であるように見えます。ですが、そのような方のほうが、我々よりもはるかに素晴らしい心をもっているものです。我々に希望と夢を与えてくれるような、素晴らしい言動をされる方すらおられます。

 人生ではいろいろな悪い出来事が起こります。ですから、そのようなことで心まで病んでしまうような悩み方をしてはいけません。ましてや、自殺するほどまでに思い詰めてしまうような悩み方は、決してしてはいけないのです。

 私は、「六つの精進」を、毎日の経営の場で実践していけば、必ず魂の浄化、純化につながると思っています。
 宗教家のように荒行をやったり、毎日座禅を組んだりしなくても、毎日の仕事でこれだけのことを実践すれば、魂の浄化、純化ができると思っています。

 実は私がこの「六つの精進」に気づき、実践し始めてから、人生も仕事も私の才能や能力を超え、あたかも神様が手伝ってくれたかの如く、順調に進み始めたのです。普通は、やることなすこと全部がそんなにうまくいくはずはありません。

 決して難しいことでなくても、誰にでもできる、このような精進を綿々と毎日続けていたことで、自分の能力以上の偉業を成し遂げられた、素晴らしい人生が開けた、と私は考えています。(要約)

 2010年発刊の『六つの精進』(稲盛和夫著 サンマーク出版)の帯には、次のような言葉が書かれています。

 いま、語り尽くす 「稲盛人生訓」の神髄!
 京セラ、KDDIをつくり、JALの再建を託された著書が実践してきた六つの教え。『生きるとは、魂を磨くこと』

 いまもっとも必要な、「生き方」のエッセンス。
 1.誰にも負けない努力をする
 2.謙虚にして驕らず
 3.反省ある毎日を送る
 4.生きていることに感謝する
 5.善行、利他行を積む
 6.感性的な悩みをしない

 感性的な悩みで心労を煩わせることなく、さまざまなトラブル、災難を乗り越えて、命ある限り前向きに力強く生きていこうとする。
 そうしたことを実践していくことが、「人事を尽くして天命を待つ」という心境につながっていくのではないでしょうか。


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