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『稲盛和夫一日一言』 7月18日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 7月18日(木)は、「若い人たちへ ②」です。

ポイント:好きになれば、どんな苦労も厭わず、努力を努力とも思わず、仕事に打ち込めるようになる。まずは、自分の強い意志で仕事を好きになること。そうすれば、人生は実り豊かなものになっていく。

 2004年発刊の『君の思いは必ず実現する 二十一世紀の子供たちへ』(稲盛和夫著 財界研究所)の中で、どういう人生をおくるかということについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 私の後を引き継いで、京セラの社長、会長をやってくれた伊藤謙介という人がいます。彼は、京セラを立ち上げる前にいた松風工業(しょうふうこうぎょう)という会社で、私がファインセラミックスの研究をしていたとき、岡山の高校を卒業して同じ研究室に入ってきて助手を務めてくれた人です。

 貧乏な会社でしたから、研究助手といっても、大学の研究室のように、白衣を着て格好よく仕事ができるわけではありません。
 また高価な設備など買えませんから、彼は手動の中古設備を使い、セラミックスの粉にまみれながら、朝から晩まで成型作業を続けてくれました。毎日毎日ベンチプレスのような力仕事を続けたせいで、彼は一ヵ月も経たないうちに筋骨隆々の体型になっていました。

 その伊藤さんが、「自分は高校を卒業して働いているけれども、夜間大学に行かせてほしい」と言ってきたことがありました。そのとき、すでに大学の夜間部には合格していたのですが、私は「大学になんて行かなくても、私が教えるから」と言って、そのまま会社の仕事を続けてもらいました。

 彼はその後もずっと、本当に一生懸命仕事に打ち込み、素晴らしい能力を発揮し、素晴らしい人間性を備えた人物になっていきました。
 京セラには国内外で一流といわれる有名大学を卒業して幹部になっている人もたくさんいますが、その中にあって、高校しか出ていなくても、京セラグループのトップとして、多くの人から尊敬され、素晴らしい仕事をしてくれたのです。
 他にも京セラでは、地方の工場に行けば、中学や高校しか出ていなくても事業部長などの大事な仕事をこなしてくれている人がたくさんいます。

 では、どうしてそのような人がいい仕事をしているのかというと、それはその人たちの人間性ができているからです。素晴らしい人間性が多くの人を魅きつけ、集団を率いているのです。

 では、そのような素晴らしい人間性を持った人になるには、どうすればいいのでしょうか。それは単純なことです。仕事に打ち込み、地味な努力を際限もなく続ければいいのです。
 頭がいいとか、いい大学を出ているといったことより、身を粉にして人知れず苦労を重ねることで、「人間ができてくる」のです。
 例えばスポーツの世界でも、苦労を重ね、困難を克服してきた人は、人間として非常に魅力のある人になっています。苦労をするということ、難儀をするということが、人間をつくっていくのです。

 何事であれ、常に全力で事にあたる、全力を尽くすということが大事です。(要約)

 今日の一言には、「仕事に打ち込めるようになれば、おのずと力がついてくる。力がついてくれば、必ず成果を生むことができる。成果が出れば、周囲から評価される。評価されれば、さらに仕事が好きになる。こうして好循環が始まるのです」とあります。

 2001年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅠ』(稲盛和夫著 京セラ経営哲学課編/非売品)「仕事を好きになる」の項で、名誉会長は次のように説かれています。

 仕事をやり遂げるためには大変なエネルギーが必要です。そしてそのエネルギーは、自分自身を励まし、燃え上がらせることで起こってくるのです。

 そこで、自分が燃える一番良い方法は、仕事を好きになることです。どんな仕事であっても、それに全力を打ち込んでやり遂げれば、大きな達成感と自信が生まれ、また次の目標へ挑戦する意欲が生まれてきます。

 その繰り返しのなかで、さらに仕事が好きになります。そうなれば、どんな苦労も苦にならなくなり、素晴らしい成果をあげることができるのです。
 こうした心境にまで高まって初めて、本当に素晴らしい仕事を成し遂げることができるのです。
(要約)

 私も、仕事を通して新しい課題にぶつかるたびに、エネルギーを持続させることの難しさに直面してきました。
 私の心が弱ったこともあれば、またチームのメンバーの心が折れかけたことも多々ありました。しかし、そうした危機的な状況を打開できるかどうかは、そこに関わっている全員の「何としてもやり遂げたい」という熱意と執念にかかっていたように思います。

 京セラ在籍40年の間、高い成功率を確保できたのかというと、残念ながら胸を張れる状況ではないのですが、「身を粉にして働き続ける」ことを通じて、少しは人間性を高めることができたのではと思っています。


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