『稲盛和夫一日一言』 10月6日
こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 10月6日(金)は、「人事の要諦」です。
ポイント:人事は公明正大に行い、公平を旨とし、いささかなりとも私心をはさむことがあってはならない。
京セラの社是は、「敬天愛人」です。
「常に公明正大謙虚な心で仕事にあたり 天を敬い 人を愛し
仕事を愛し 会社を愛し 国を愛する心」
2007年発刊の『人生の王道 西郷南洲の教えに学ぶ』(稲盛和夫著 日経BP社)の中で、「敬天愛人」という教えについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。
人間はもともと、世のため人のために何かをしたいという善なる思いを持っています。そのような家族のために働く、友人を助ける、親孝行するといった、つつましく、ささやかな個々の利他行が、やがて社会のため、国のため、世界のためといった大きな規模の利他へと地続きになっていくのです。
この自己の欲望を抑え、他を利するという考え方は、西郷南洲の「敬天愛人」という教えの核心です。
【遺訓二一条】
道は天地自然の道なるゆえ、講学の道は敬天愛人を目的とし、身を修するに克己(こっき)を以て終始せよ。己れに克つの極功は、「毋意(いなし) 毋必(ひつなし)毋固(こなし)毋我(がなし)」(『論語』)と云えり。
総じて人は己れに克つことを以て成り、自ら愛するを以て敗るるぞ。
(中略)故に己れに克ちて、睹(み)ず聞かざる所に戒慎するもの也。
【訳】
道というものは、この天地のおのずからなる道理であるから、学問を究めるには敬天愛人(天は神と解してもいいが、道理と理解すべき。すなわち、道理を慎み守るのが敬天である。また人は皆自分の同胞であり、仁の心をもって衆を愛するのが愛人である)を目的とし、自分の修養には己れに克つということをいつも心がけねばならない。
己れに克つということの真の目標は論語にある「意なし、必なし、個なし、我なし」(当て推量をしない。無理押しをしない。固執しない。我を通さない)ということだ。すべて人間は己れに克つことによって成功し、己れを愛することによって失敗するものだ。
だから、常に自分にうち克って、人が見ていないときも聞いていないときも、自分を慎み戒めることが大事なことだ。(要約)
名誉会長は常々、「企業経営は公明正大に行うことがもっとも重要である」と言われていました。
そのことについて、2015年発刊の『「稲盛和夫の実学」を語る』(稲盛和夫著 京セラ経営研究部・経理部編/非売品)の「第七章 透明な経営を行う【ガラス張り経営の原則】」の中で、名誉会長は次のように述べられています。
いくら経理部門が正しく仕事をしていたとしても、ほかの部門が原則を無視していては、経理部門がまとめる数字も信頼性のないものになってしまいます。ですから、社内のすべての部門が公明正大であることが必要なのです。
しかし、人種も違えば言葉も違う京セラグループの全従業員が、公明正大な態度で正しいことを正しく貫くのは至難の業です。各人の努力に任せるだけでは、やはり不正が起こってしまいます。そのようなときに、非常に厳しい態度で不正の原因を究明し、一切の不正を許さない態度を取ることが必要です。
そのために、京セラフィロソフィの一部である「公明正大に利益を追求する」「フェアプレイ精神を貫く」を率先垂範し、社内のすべての組織に浸透させてきたのです。(要約)
人事はなかなか数字で示すことが難しい部門ではありますが、他の部門と同様、決定までの過程において、「公明正大であること」「フェアであること」が求められることは変わりありません。
「公明正大、公平を旨とする」
あらゆる場面で、大事にすべき心がけのひとつではないでしょうか。