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『稲盛和夫一日一言』 6月12日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 6月12日(水)は、「試練は幸福をもたらす」です。

ポイント:「試練」を絶好の成長の機会としてとらえることのできる人こそが、限りある人生を、豊かで実り多いものにすることができる。

 2007年発刊の『人生の王道 西郷南洲の教えに学ぶ』(稲盛和夫著 日経BP社)「第二章 試練」の中で、試練をどう受け止めるかによって人生は大きく変わってくるとして、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 人生は波瀾万丈です。人間は、幾多の試練に直面します。ときに壮絶なまでの辛苦(しんく)をどう受け止めるかによって、その先の人生が変わってきます。
 災難に遭って、打ちひしがれるままに諦めてしまえば、せっかく与えられた人生をただ暗く歩むことになります。
 逆に、艱難(かんなん)辛苦に前向きに立ち向かい、災難を克服することができれば、人間的に高まり、その後の人生も大きく開かれていくことでしょう。

 西郷が遺した有名な詩を紹介します。
【遺訓五条】
 或る時「幾歴辛酸志始堅 丈夫玉砕愧甎全 一家遺事人知否 不為児孫買美田」との七絶を示されて、若(も)しこの言に違いなば、西郷は言行反したるとて見限られよと申されける。

【訳】
 ある時、「幾たびか辛酸(しんさん)を歴(へ)て志始めて堅し。丈夫玉砕(ぎょくさい)して甎全(せんぜん)を恥ず。一家の遺事(いじ)人知るや否や。児孫(じそん)の為に美田を買わず」
(人の志というものは幾度も幾度も辛いことや苦しい目に遭って後初めて固く定まるものである。真の男子たる者は玉となって砕けることを本懐(ほんかい)とし、志を曲げて瓦(かわら)となっていたずらに生き長らえることを恥とする。それについて自分がわが家に残しおくべき訓(おしえ)としていることがあるが、世間の人はそれを知っているであろうか。それは子孫のために良い田を買わない、すなわち財産を残さないということだ)という七言絶句の漢詩を示されて、もしこの言葉に違うようなことがあったら、西郷は言うことと実行することが反しているといって見限りたまえと言われた。

 辛酸をなめるような苦難を耐え、努力に努力を重ねて乗り越えたとき、初めて人の志は定まる、西郷自身の壮絶な実体験がいわしめた言葉です。

 逆境は、自分自身を見つめ直し、成長させてくれるまたとないチャンスです。逆境をネガティブにとらえて悲嘆に暮れるのではなく、志をより堅固にしてくれる格好の機会ととらえて、敢然と立ち向かう。試練を通してこそ、志は成就するのです。

 西郷は、「児孫のために美田を買わず」、つまり、一番かわいい自分の子どもや孫にも財産を残さないと言い切っています。個人や一族の資産、財産を増やすことにうつつを抜かしているような人には、到底、公平な政(まつりごと)は行えないのだよ、と訴えています。

 これは「無私」の最たるもので、自分の子ども、子孫にまで厳しい生き方を課したのです。「私」というものを完全にどこかに置いてしまっているわけです。
 そのようなことは、人間の自然な情に反することだけに、完遂することはたいへん難しいことです。しかし西郷は、自分は多くの辛酸をなめてきただけに、決してその誓いを破ることはないと、自らの志の堅固さをいっているわけです。

 リーダーたる者、西郷のような人間の情をもってしてもいささかなりとも変節しない、堅い志を持っていなければなりません。西郷は、まさにそのような堅固な志をもって、その生涯を生き抜きました。(要約)

 今日の一言には、「さらには、人生とは心を高めるために与えられた期間であり、魂を磨くための修養の場であると考えられる人は、限りある人生を豊かで実り多きものとすることができるばかりか、周囲にも素晴らしい幸福をもたらすことができる」とあります。

 長男に対して何とも甘々な処遇を繰り返しながらも、自身はのらりくらりとトップに居座り続けようと画策を続けている岸田首相や、自身は引責に見せかけて不出馬表明したものの、次期衆院選挙に三男を擁立しようとしている二階俊博氏等々、「自身の保身や一家一族の繁栄を最優先して何が悪い」と平然としているような人たちに、まっとうな政治などできるはずはありません。
 次回選挙で、「今度こそはそうした意志をはっきりと示さなければ」と思っている国民は、私だけではないと信じています。

 そして、これは政治の世界に限ったことではありません。企業であってもまた自身が属する身近な小集団・組織であっても、「無私」の心で周囲の人たちのために尽くすといった気概を持てない人は、リーダーになるべきではありません。

 そうした気概を持って臨むことこそが、周囲からの賛同・協力を集め、結果として幾多の試練を乗り越えていくための駆動力となっていくのではないでしょうか。


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