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『稲盛和夫一日一言』 12月19日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 12月19日(火)は、「強欲企業の限界」です。

ポイント:自社の利益だけを最大にしようとする経営を行って、成功し続けているような企業は存在しない。

 2015年発刊の『稲盛和夫経営講演選集 第3巻 成長発展の経営戦略』(稲盛和夫著 ダイヤモンド社)の中で、企業の成長と同時に人間的な成長に努めることの大切さについて、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 いい商売、いい仕事などありません。誰しも、自分がやっている仕事はあまりパッとしないと思っています。しかしそうではありません。パッとしないと思っているその仕事が、やりようによっては素晴らしい展開をし出すのです。それは、その事業をやる人によって変わってきます。

 税引前利益で10%くらいの利益が出ないようでは、事業のうちに入りません。朝から晩まで気張って働いて、まずは収益性を上げることをやり遂げる。そうして基礎をつくっておいて、その後に多角化しながら成長していく。

 同時にその過程で、「技術がない」「資金がない」「人材がいない」と、ないない尽くしをボヤいてはいけません。成功した人たちはみな、ないない尽くしの素人でしたが、そうしたことを一切ボヤかず、なんとかなるだろうと、陽気に積極的に考えた人たちです。ですから、誰にでも成功する資格は十分あるのです。

 ただし、少し成功して会社の規模が大きくなってくると、今度は「慢心」が始まります。いわゆる「天狗」になるわけです。いくら会社が大きくなり、立派になっても、謙虚さを失ってはなりません。そうした経営者の慢心が会社をつぶしてしまうからです。

 ですから私は、「ある程度の規模になれば、その企業の経営者は人間ができてこなければならない」と言っているのです。自分の欲望のために事業をやるのではなく、世のため人のために尽くそうというように、人生観が変わっていかなくてはなりません。

 成長の過程で、経営者が人間的に成長し、素晴らしい人生観を持った人間に変わっていく。そうならなければ、その企業は決して大企業まで行く着くことはできません。
 ですから、成功すれば成功するほど人間性を高めていく。「心を高める、経営を伸ばす」という言葉のとおり、会社を成長発展させていこうと思うなら、人間性を高めていくことがたいへん大事なのです。
(要約)

 今日の一言には、「企業は人間の集まりであるから、どうしても欲望から発した『もっと儲けよう』という行動が出てきてしまう」とあります。

 2011年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅡ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究部編/非売品)の「自利と利他」の項で、企業のあり方について、名誉会長は次のように解説されています。

 厳しい自然界の中で生きていくためには、一生懸命自分で努力をするということは絶対条件です。
 ただ、相手と戦って、相手を食い殺して自分が生き延びていくという弱肉強食ではなく、努力をする人は生き残っていけるけれども、努力を放棄する人は淘汰されてしまうという、適者生存の原理なのです。
 つまり、社会に適応できる企業だけが生き残って繁栄していき、適応できないような、いわば努力をしない企業は世の中から退場を迫られていくということです。

 私たちが「利他」と言っているのは、仕事をしていて物事を判断するときに、自分だけよければいいという「利己」をベースに戦略、戦術を考えないようにするためです。社会に調和し、みんなが共存していけるような「利他の心」をベースにして、戦略、戦術を組むことが大事です。
 少なくとも、自分の会社だけがよければいいという考え方で、戦略、戦術を練ることだけは絶対にしてはならない、と私は言っています。


 企業経営というのは利己の塊みたいなものではないかとおっしゃる方がいますが、そうした経営は決して長続きするものではありません。一方、相手によかれかしと願う利他の心に基づく経営は、周囲の協力を得て、長く繁栄を続けていくことができるのです。(要約)

 経営に限らず、人が生きていくうえで常に「利他の心」をベースに行動することができるようになれば、周囲との軋轢に悩むような事態に陥ってしまうようなことはなくなるでしょう。
 「我が身可愛さ」からどこまで脱却できるのか、そのあたりが心豊かな人生を過ごしていけるかどうかの分かれ目ではないかと思っています。


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