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『稲盛和夫一日一言』 10月23日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 10月23日(月)は、「才能を私物化してはならない ①」です。

ポイント:才能とは、集団を幸福へ導くため、天が人間の世界に一定の割合で与えてくれた資質なのではないか。そうであるならば、たまたま才能を授かった者は、それを世のため、社会のため、集団のために使うべき。

 2008年発刊の『「成功」と「失敗」の法則』(稲盛和夫著 致知出版社)「才能を私物化してはならない」の項で、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 私は、『南洲翁遺訓』を自分の机のそばに置き、ことあるごとに紐解いていますが、その中に次のような一節があります。

 「己を愛するは善からぬことの第一也。修業の出来ぬも、事の成らぬも、過ちを改むることの出来ぬも、功に伐(ほこ)り驕慢(きょうまん)の生ずるも、皆自ら愛するが為ならば、決して己れを愛せぬもの也」

 これは、「自分を愛すること、つまり自分さえよければ人はどうでもいいというようなことは、最もよくないことである。修業ができないのも、事業が成功しないのも、間違いを改めることのできないのも、また自分の功績に驕(おご)る心を持ってしまうのも、みんな自分を愛することから生じるのであり、決してそういう利己的な思いを持ってはならない」という意味です。
 西郷隆盛は、「成功するためにも、さらにはその成功を持続するためにも、常に謙虚でなければならない」と説いているわけです。

 京セラは創業後わずか12年で上場を果たしました。そのとき、マスコミや周囲の方々は、私に対して口々に賞賛の言葉を投げかけてくれました。
 実はそのころの私は、西郷が言うように、成功に驕り高ぶり、傲慢に陥りそうになっていました。

 しかし私は、「京セラに成功をもたらしたのは、仮に自分の才能であったとしても、その才能は決して自分一人だけのものではない」ということに気づいたのです。
 私は経営者として、京セラという企業を成功に導いたかもしれないが、それは天がたまたま自分という存在に「世のため人のために使いなさい」と経営の才を授けてくれたからであって、その才能を自分のためにだけ使うようなことがあってはならない。
 もし、自分に才能が与えられているなら、それは従業員のため。お客様のため、そして社会のために使わなければならない。そのためには、これまでの成功に驕ることなく、もっと謙虚に、さらに懸命に努力を重ねなければならない」、そう気づいたのです。

 京セラが今日まで何とか発展を続けることができているのは、私がそのことに気づき、常に謙虚さを失わず、社員と一緒に懸命な努力を続けてきたからに他ならないと考えています。(要約)

 また名誉会長は、中国の古典『書経』にある次のような言葉を引用されています。
 「満は損を招き、謙は益を受く」

 古来、満ち足りて驕り高ぶる者は大きな損失を被り、一方、常に謙虚に「相手に善かれかし」と考えている者は、素晴らしい幸運を勝ち取る。
 これは、まさに時代を超えた世の道理であり、今日においても決して変わることはないはずです。
(要約)

 京セラ在籍40年の間、私もさまざまな業務を通して、単純に「生きる糧」を得ること以上の貴重な体験をすることができたと思っています。
 退職した現在、私の中に蓄積された知見や経験則といったものが「才能」と呼べるレベルのものであるならば、「従業員のため、お客様のため」に使うことはかなわなくても、さらに一歩踏み込んで「世のため人のため、社会のため」に使っていくことはまだまだ可能なのではないでしょうか。

 大した成功はしてこなかったものの、健康である限り、「世のため人のため、社会のため」になることを率先して求め、常に謙虚な姿勢を崩すことなく、さらに精進を重ねていければと考えています。


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