『ピアノ・ソナタ 第17番 「テンペスト」 ニ短調 Op 31-2』 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

(P)クラウディオ・アラウ 1965年5月録音
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ピアノソナタ第17番 ニ短調 作品31-2は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが作曲したピアノソナタ。『テンペスト』の通称で知られる。

概要
作品31としてまとめられている3曲のピアノソナタ(第16番、第17番、第18番)は1801年から1802年の初頭にかけて、ほぼ同時期に作曲が進められた[1]。初版譜はハンス・ゲオルク・ネーゲリが企画した『クラヴサン奏者演奏曲集』に収録される形で、第16番と組になって1803年4月に世に出された[1]。同年秋にジムロック社より「厳密な改訂版」が出されたのも第16番と第17番であったが、その後1805年にカッピが作品29として出版した版から現在の作品31がひとまとめとなった[1]。曲は誰にも献呈されていない。

カール・ツェルニーによると、ベートーヴェンは作品31を作曲している頃にヴァイオリニストで友人のヴェンゼル・クルンプホルツに対し「私は今までの作品に満足していない。今後は新しい道を進むつもりだ。」と述べたという[1][2]。作曲時期は難聴への苦悶からハイリゲンシュタットの遺書がしたためられた時期にも一致しており[2][3]、作品31の中でも特に革新的で劇的な本作にはそうしたベートーヴェンの決意を感じることができる[4]。また、3つの楽章の全てがソナタ形式で作曲されている点もこの作品のユニークな点のひとつである[4]。

『テンペスト』という通称は、弟子のアントン・シンドラーがこの曲と第23番(熱情)の解釈について尋ねたとき、ベートーヴェンが「シェイクスピアの『テンペスト』を読め」と言ったとされることに由来している[4][5][6]。しかし、ドナルド・フランシス・トーヴィーはこの曲の中に戯曲の登場人物を見出そうとする試みは「英雄やハ短調交響曲(運命)が演奏されているときに、『紅はこべ』の功績のみに目を向けているようなものだ」と記している[7]。

演奏時間
約21分-23分[6][8][9]。

楽曲構成
第1楽章
Largo - Allegro 4/4拍子 ニ短調
ソナタ形式[8]。幻想的に始まる冒頭主題からめまぐるしくテンポが変わっていく(譜例1)。

第2楽章
Adagio 3/4拍子 変ロ長調
展開部を欠くソナタ形式[5][10]。第1楽章と同じくアルペッジョで幕を開け、遠く離れた2つの声部が対話風に応答し合う第1主題が現れる

第3楽章
Allegretto 3/8拍子 ニ短調
ソナタ形式。熱気を持ってほとんど休むことなく動き回る無窮動風の音楽。譜例7の第1主題に始まる。作曲者が馬車の走行から譜例7の着想を得たという逸話がツェルニーによって伝えられている]。

その他
赤い激流 - 1977年に放送されたTBS系の水谷豊主演のドラマ。この曲がピアノコンクールの3番目の課題曲。
疑惑の家族 - 1988年に放送されたTBS系の風間杜夫主演のドラマ。劇中で天才ピアニスト・朝倉茂が第3楽章を演奏する。
こちら葛飾区亀有公園前派出所 - 第125話「遠い放課後」で由紀子が生前リサイタルで上演。
こちら葛飾区亀有公園前派出所 - 第313話「ワシが麗子で私が両ちゃん?!」で絵崎教授の発明を使用した次の朝、麗子が両津の体と入れ替わった時に本人と証明するために演奏。
ALFARSHEAR 〜双神威に廻る夢〜(beatmania IIDX 13 DistorteD) - TЁЯRAの楽曲。途中でこの曲の第3楽章が引用されている。
テガミバチ - 登場人物ザジ・ウィンタースの心弾銃として散弾銃型の「テンペスト第三楽章」という名前が使用されている。
トータル・リコール (2012年の映画)- 主人公のダグラス・クエイドが作中で第三楽章冒頭部分を弾いている。
南こうせつ「夢一夜」は、第三楽章に触発されて作曲された。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?