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2022年7月の記事一覧

ハエの声が聴こえる

絵を描いていると、驚くほど多くの人が邪魔をしてくる。(noteではそれが一切ないので、奇跡と思っている) 絵で食べていくなんて絵空事。絶対に無理だよ そんな絵を描くなんて、紙がもったいない それ、まさか面白いとおもってるんじゃないよね? これは、わたしが絵を描いていて、先生と呼ばれる人たちから直接言われた言葉である。わたしはこれまで、こう言った言葉たちを真正面から受け止め、傷ついてきた。 安い絵の具使ってるんでしょ、みればわかるよ と言われたこともある。ちなみに、わた

未来の〈仕事〉を精緻に書いてきた藤井太洋が、〈労働〉へとスコープを拡大した −−『東京の子』

生まれて初めて文庫解説の仕事をいただいた。 依頼をくださったのは藤井太洋さん。正確には担当編集者さんからなのだが、『東京の子』の解説を書いてくださいというご依頼メールをいただいたときは「えっ、初めて書く文庫解説が藤井太洋作品でいいのか?」とかなり怖気づいた。 藤井太洋さんといえば元プログラマー。処女作を2012年に電子書籍で自費出版してデビューし、2012年の「Best of Kindle本」に選ばれ、出版界に衝撃を与えたことで知られている。 この記事によると、デビュー

梨泰院にあるLEEUM(リウム)美術館

以前から行きたい行きたいと思いつつ、いつでも行けるから…と先延ばしにしてきたリウム美術館。先日、ついに行ってきました。 Leeum(リウム)美術館は、サムスングループの創始者、イ・ビョンチョル氏が生前に所蔵していた美術品コレクションを一般にも公開するためにオープンした美しい美術館で、館名の「Leeum」とは、イ・ビョンチョル氏の名字の英語表記「Lee」と「Museum」を意味しています。 それぞれの建物を世界的な建築家であるマリオ・ボッタ、ジャン・ヌベール、レム・コールハ

日々に再生する

 部屋でほとんど24時間、冷房を入れている季節になると自分は結構内側に入っていっていく傾向があるな、とふとリネンの肌触りに癒されながら気づいた。  鶏と卵ではないが、「24時間、熱を避けて体を冷やしているから(外出もしないし)思考の世界に入り込んでいくのか」、あるいは「外的な世界が起因して内側に入り込みたくなるから24時間、熱を避けて鬱々と暮らすのか」。この因果ははっきりしないのだけれど、気がつけば20代の頃からこの傾向があった。真夏になればなるほどに、太陽が生命力を喚起しま