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Red Apple Cigarettes

クエンティン・タランティーノ監督による『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の公開から約8カ月が経った。

本作は、彼の9作目にあたる作品だ。彼は生涯で10本撮ったら、監督業を引退すると言っている。おそらく、この作品がタランティーノ・キャリア最後の「自慰行為」だろう。(良い意味で)

やはり、彼の作品はワクワクするし、思う存分楽しませてくれる。いわゆる「性癖」を突いてくる。

例えば、映画冒頭、「QUENTIN TARANTINO」という黄色い字体で書かれたクレジットを見ると興奮してしまうだろう。

彼の映画には、数多くの過去の作品へのオマージュや彼が創作するギミックに溢れている。

それらの中の一つに、「レッド・アップル・シガレッツ」と「ビッグ・カフナ・バーガー」といわれるものが登場する。

この2つは、タランティーノが創った架空のブランドである。

上に添付した写真が、「レッド・アップル」という架空のタバコ・ブランドだ。タバコを咥えている緑のイモムシがリンゴから出てきている。


今回は「レッド・アップル」についてご紹介できたらと思う。

ずっと書きたかったトピックである。


『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』では、エンド・クレジットが流れている最中に、画面右半分にレオナルド・ディカプリオが登場し、「レッド・アップル」の宣伝をするシーンが映される。

筆者はこの映像に不意打ちをくらった。これまでの彼の作品の中では、上記した2つのアイテムは、劇中でどのような商品なのかが解説されず、ほんの数秒映るくらいだったからである。ディズニーやマーベルでいう、「イースター・エッグ」にあたるものと考えていただきたい。

9作目ということもあり、その全容を伝えたかったのであろう。

実は、この「レッド・アップル」は、彼の過去作にも登場している。時系列で追っていこう。

『パルプ・フィクション』(1994)では、ミア(ユマ・サーマン)が何げなく吸っている銘柄が「レッド・アップル」である。下に画像と映像を載せておく。

同じく『パルプ・フィクション』で、ブッチ(ブルース・ウィリス)が、ヴィンセント(ジョン・トラボルタ)と一触即発のにらみ合いを始める前に買い求めるタバコも「レッド・アップル」である。



次に登場するのは、タランティーノが4つからなる、オムニバス形式の作品『フォー・ルームス』(1995)に参加したときである。

2枚目の写真では、テーブルの一番手前に置いてある。


次に登場するのは、タランティーノが脚本に参加した、ロバート・ロドリゲス監督による『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(1996)である。

この作品では、車のダッシュボードに「レッド・アップル」が置かれており、フロントミラーに反射して見える。

ちなみに、個人的にこの作品が一番タランティーノの性癖をもてあそんでいると感じている。


次に登場するのは、タランティーノは直接関わっていないが、彼の元カノであるミラ・ソルヴィノが出演している映画『ロミーとミッシェルの場合』(1997)である。

どのように登場しているかというと、背景にある看板に「レッド・アップル」のイラストが描かれている。


次に登場するのは、『キル・ビル Vol.1』(2003)の劇中である。

『ジャッキー・ブラウン』(1997)の冒頭にもあった、主人公が歩く姿を横から撮っていったように、ザ・ブライド(ユマ・サーマン)を横から追っていくところで、後ろにレッド・アップルの看板が見える。日本が舞台ということもあり、カタカナで表記されている。このポスターでは、右端に3mg と書いてある。おそらく、低タールのバージョンだろう。


次に登場するのは、タランティーノがカメオ出演している、ロバート・ロドリゲス監督による『プラネット・テラー』(2007)である。個人的に一番好きなレッド・アップルの登場シーンだ。

この作品は、2本立て映画『グラインドハウス』の中の1編である。もう一つは、タランティーノが監督した『デスプルーフ』である。

さて、どのように登場するのか。映像がある。

「タバコ1箱とコーヒーをくれ」というシーンで出てくる。

タバコを買い求めるシーンでいうと、デヴィッド・フィンチャー監督による『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)の劇中で、ダニエル・クレイグが赤マルを1箱買い、1本取り出して残りは捨てるというシーンも好きだ。


そして、ここで『イングロリアス・バスターズ』(2009)の話をしたい。

劇中では、レッド・アップルに似たタバコがチラッと見えるが、実はこの作品には登場しない。というよりかは、登場するはずだったのである。

デザインはこのようなものである。

この作品で「ユダヤの熊」を演じたイーライ・ロスが公開前にMTVのインタビューで、「1940年代版」のレッド・アップルが用意されている旨を明かし、タランティーノのこだわりを紹介していた。ただ残念ながら映像には登場せず、「幻」に終わったものである。両切タバコで、WWII中のタバコをほうふつとさせるようなシンプルなデザインで作られており、封かん紙には“U.S. ARMED FORCES OVERSEAS”(在外米軍支給品)と記すなど、細部にわたってビンテージ風に仕上げられている。


次に登場するのは、『ヘイトフル・エイト』(2015)である。

この作品は、舞台が西部開拓時代なので、従来のデザインからこんな感じに変わっている。

猛吹雪に耐えられるように、紙から缶になっているっぽい。

そして、劇中では、ボブ(デミアン・ビチル)がレッド・アップルを吸っている。



そして、昨年の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に行き着く。この作品のエンドクレジットに流れたレッド・アップルのコマーシャルがこちら。

ディカプリオがレッド・アップルの歴史を語っている。

彼によると、レッド・アップル・カンパニーが創立されたのは1862年だという。昔は手巻きだったが、今は巻かれた状態で吸えると言っている。

そして、彼が映像の中でも言っている"Take a Bite, and Feel Alright"というのは、レッド・アップルのキャッチコピーと捉えられる。最後に、それが分かる画像と映像をご紹介したい。

この映像によると、アメスピのようにさまざまな種類が存在していることが分かる。そして、ラストにはバート・レイノルズも登場してくる。


今回は、タランティーノ信者になってから、ずっと書きたかった題材をこのような記事という形で皆さんにお伝えできてうれしい限りである。

この記事をきっかけに、タランティーノの作品をもう1度観てはどうだろうか?

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