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ペルー、コロンビア、メキシコのコーヒーシーン(Red Fox Coffee Merchantsインタビュー)

こんにちは、ROUTEMAP COFFEE ROASTERSです。

本日は、「Red Fox Coffee Merchants」より、コーヒーの主要生産国であるペルー、コロンビア、メキシコのコーヒーシーンについて歴史から振り返り、今後3カ国のコーヒー産業は今後どうなっていくのかについて、インタビュー記事から抜粋し日本語訳にてご紹介していきます。

中南米に拠点を置き、コーヒー農家から協同組合、市場やロースターなどサプライチェーン上の各ポジションを献身的に支えているRed Fox Coffee Merchants。

彼らの視界から見る今後のコーヒー生産の動向は、業界に携わるコーヒー従事者、そしてコーヒーを日常に取り入れ、習慣化している消費者のみなさまにとって非常に重要な情報であると思います。

Red Foxの活動理念も併せて紹介いたしますので、長くなってしまいますがぜひご一読いただけると嬉しいです☺︎



1)Red Fox Coffee Merchants


「Red Fox Coffee Merchants」は、ペルー、コロンビア、メキシコなどコーヒー生産が盛んな中南米を中心に拠点を置き、主に↓

○コーヒー農家へは市場参入を容易にするサポート(設備支援サポートやトレーニング、コミュニティへの紹介など)               ○協同組合との関係構築                       ○焙煎業者、消費者へのフォローアップ

など、サプライチェーン全体の関係構築と取引の透明性を主張し、活動しているコーヒーインポートアソシエーションです。


今までのサプライチェーン構造を見直そうと、仲介業者の立場として、生産者が取り組んでいる品質向上のために惜しみなくフォローし、適正な品質評価、フィードバック、そして消費者の手元に届くまで品質管理を徹底して行う"Consistency and repeatability"=「一貫性と再現性」の実現を特に重要事項としており、収穫されたその農園の最高品質を、そのまま各国の市場に流通させ、適正な価格で透明性のある取引を行い、生産者へ還元しています。





コーヒーサプライチェーンにおける「一貫性と再現性」…

○「一貫性」…収穫から消費までの品質管理、取引の透明性       ○「再現性」…1シーズンだけでなく、毎年の収穫に向けて品質を維持・向上するためにどう取り組んでいくか


2)ファビアンとカリーナ from Red Fox Sourcing 

ファビアンとカリーナは、Red Fox Sourcing Programにおいて中心的な人物で、主に現場での品質分析、生産者のサポート、関係構築など、さまざまな面でサポートしています。

ファビアンはコロンビア、カリーナはペルー(リンク先ページ写真:写真左がカリーナ、右がファビアン)と、2人はそれぞれRed Foxが設立当初から活動している主要なコーヒー生産国の出身であり、コーヒー生産の現状と長期的な発展、そしてそれを支える大きな政治的状況について、多くの洞察を持っています。

そして今回のインタビューでは2人に、主な仕事についてから、コーヒー業界に対する考え方、そして未来への思いについて書かれています。


3)2人のそれぞれの役割

まず、インタビュー冒頭では2人の主な役割について述べられていました。

ファビアン…新たなコーヒー生産者と各関係者をつなぐ機会をオーガナイズ。また、品質管理を担当しており、生産から最終的な出荷までのすべてのフォローアップを行い、コーヒー生産者から最終的な顧客までのすべての関係がひとつになり、完全に透明性のあるビジネスになるよう、チェーン全体を管理している。
カリーナ…ファビアンとほぼ同じような内容で、受け取ったコーヒーサンプルのロジスティックスを管理し、カッピング・セッションを企画、その結果に関して特定の協同組合とのコミュニケーションを図る。そして、受け取ったオファーや出荷前のサンプルの品質管理を行い、購入したロットがドライミル(精製所)で必要とされる品質基準を満たしているかどうかを確認している。また、マーケティングの役割も担う。

Red Foxが担う事業は幅広く、2人はメキシコ、ペルー、コロンビアで活動し(ファビアンはコロンビア人である)、現地のコーヒーシーンを肌で感じながら過ごす経験を持っています。


4)コーヒー産業の印象について

カリーナはペルーで生まれ育ち、そして長い間ペルーのコーヒー業界に従事し、現地のコーヒーシーンとはより深い関係を築いてきたと述べています。

そんな彼女がペルーのコーヒー生産の将来についての意見として、「楽観的な視点で見ていく必要がある」と言及しています。

カリーナ:私たちは今、非常に複雑で、不安定な政治的状況から脱却しつつあります。このことは、何らかの形でコーヒーの生産チェーン内に影響を与えるでしょう。しかし、このような政治的な状況を除けば、スペシャルティコーヒーのレベルだけでなく、コマーシャルレベルでのコーヒー生産量という点では、まだまだ成長の余地があると感じています。
また、品質に関しても、過去を振り返ってみると、特にコーヒーのリーフラスト(葉さび病)の時期から、かなり改善されてきているように感じます。また、国内の消費量が増えたことで、ほぼ自動的に生産量が増え、国レベルでのインセンティブにもつながっています。ですから、今シーズンや次の年は、政治的な状況から少々不安定になるかもしれませんが、楽観的に見る価値はあると思います。


続いてファビアンは、コロンビアのコーヒー産業について、そしてペルーとメキシコのコーヒー産業の印象についても述べています。

ファビアン:皆さんもご存知の通り、コロンビアはコーヒーに関しては非常に先進的な国です。品質管理や生産の透明性など、さまざまな分野で進歩しており、日々、生産や加工に革新をもたらしています。非常に進んでいます。
ペルーに関しては、数年前のコロンビアの大規模な生産量を思い起こさせます。より多くのマイクロロット、新しい産地。ペルーにはまだまだ開拓すべきことがあります。(※マイクロロット…明確な基準はないが、農園、品種、地域など可能な限り生産背景の情報が細かく追跡できる商品のことを指す)
メキシコでは、ベラクルス、チアパス、オアハカのすべての地域で、新たな産地や生産者を開拓していますが、それぞれの地域にはまだ多くの生産における可能性が隠されています。これからも成長し続けられる品質がたくさんあり、私たちはそのすべてを探しています。メキシコでは、小規模な生産者が多く、コーヒーにとても熱心に取り組んでいるので、期待が高まっています。


ファビアンの説明に補足するように、カリーナもメキシコに訪れた際に実際にメキシコのコーヒー産業に触れ、ファビアンの「非常に多くの可能性がある」ということについて同意をしています。

それは、コーヒーの品質において世界的に認められる生産国になるほどである、ということを示し、それを叶えるためには、

○生産流通における安定した経路を確保するための組織化(運送、管理、取引などの役割)                           ○ラテンアメリカ全体で不足している政府のサポート

これらの要素が必要不可欠であると述べています。


5)コロンビア、ペルー、メキシコのコーヒー市場の変化

次のトピックでは、インタビュアーは各国のコーヒー市場環境の比較と、これまでの変化について、2人に尋ねています。

カリーナはこの質問に対し、自分自身コーヒーの貿易や取引に関して幅広う経験は持っていないと言いつつも、需要のニーズ、トレンドについて常に把握しておき、その上で生産者が何をどのあたりまで生産できるのかを理解しておくことが取引において重要であると述べました。

一方ファビアンは、自信が持つ経験から各国の市場環境の変化について以下のように述べます。

ファビアン:コロンビアでは、コーヒー市場の変化が非常に大きくなってきており、生産者が自分のコーヒーをどこで売るかを決めるための準備は、市場環境においてすべて整っています。生産者にとっての市場環境は、自分たちが生産したコーヒーをどこでも簡単に売ることができ、良い価格を得ることができる、とても便利なものになっています。コロンビアでは、そのような市場を見つけるのはとても簡単で、早くて安全なのです。
ペルーは現在環境変化の過程にあります。協同組合が市場を探し、それぞれの地域で見つけられる良質なコーヒーを紹介することで、開発は非常に着実に進んでいます。
メキシコでは、市場の発展がより早く進んでいます。というのも、全国のコーヒーショップが原産地呼称のコーヒー(=シングルオリジンコーヒー)を求めており、生産者は自分たちの市場を知り、誰にどのような店で商品を売るかを知ることができるからです。メキシコでは、国内市場で多くのコーヒーが消費されており、価格は国内企業との競争力が高く、国内外で非常に人気の高い産業です。多くの地域の生産者にとっては、自分たちの商品をめぐって常に高い競争が行われているのです。

コロンビアは現在生産者が市場にアクセスしやすい環境へと次第に変化していることを述べ、さらにペルーはその変化の過程にいると言及。

そして何より、メキシコのコーヒー市場は国内外への消費量から、ペルーよりもシングルオリジンコーヒーの分野はスタートが遅いにもかかわらず、産業全体でめざましい発展を遂げており、メキシコの今後のコーヒーシーンと市場環境についてどう発展していくのか、興味を示しています。


6)コロンビア、ペルーの政治情勢とコーヒー市場への影響

続いてトピックは変わり、ペルーとコロンビアが今直面している政治情勢について。

現在のペルーの政治情勢はかなり混乱している状況にあり、この5年間のうちに大統領は4人入れ替わり、つい最近の大統領選挙では不正行為の摘発により選挙が長期間に及んでしまうなど、コロナの影響も相まってそれらに対処しなければならない人々に大きなダメージを与えました。

このような情勢不安は国民に多大なストレスに加え、さらにソル(ペルーの通貨)価格がドルに比べて切り下げられたことで国の財政状態にも大きな影響も与えたことから、国全体に大きな不安が広がっているとのこと。

これらの影響により、ペルーの政治が直面する今後のシナリオとして浮上しているのは、保守的な左派社会主義による政権の可能性です。国民の間には、ベネズエラのような社会主義モデルの独裁政権に陥るのではないかという、ラテンアメリカの国民全体が抱く不安があります。

カリーナはこのことについて、国際市場商品としてのコーヒーを取り扱う立場として、以下のように述べます。

カリーナ:私たちはできる限り冷静に、パニックを起こさないように、物価の上昇を招かないように、不安定な状況を招かないようにしています。今後5年間で、これらのことがどのように展開していくのか、意識をしていきたいところです。私たちは企業として注意を払い、これが農業分野にどのような影響を与えるのか、新政府が農業分野でどのような政策を実施するのかを見極めなければなりません。

さらにカリーナは、今後の政策について、農業部門の権限が保護されることを期待しつつ、経済と農業に関して政府がどう行動していくのか、注視していきたいと語りました。


続いてファビアンから、コロンビアの政治情勢について語られています。

コロンビアに関して言えば、今年は長い間国民全員が政府に対し憤りを感じ、爆発した怒りによって大規模な反政府デモが行われていました。

こちらの記事では、政府の税制改革によるものと記述していましたが、ファビアンによると、「あくまでこれはきっかけの一つに過ぎない」とのこと。

コロンビア国民はニーズは無視され続け、政府に守られていない産業もまだまだたくさんあるなか、汚職やコロナの影響なども重なり、今回の大規模なデモにまで発展していったそうです。

多くの場合、ガス、エネルギー、水が削減され、遠く離れた人々の食料の入手が妨げられ、非常に複雑な状況となっています。ファビアンはこれらを踏まえ、以下のように述べています。

ファビアン:人々の憤りが爆発し、パンデミックのせいですべてがより複雑になっています。政府も国民の声に耳を傾けようとしません。今、このような時代に、彼らは声を一つにし、叫びを一つにして、大統領や政府の誤った決定に反対しています。商業は影響を受けています。このパンデミックは、システムによって不当に扱われてきたすべての人々の反発であり、私たち全員に影響を与えています。コロンビアの生産チェーン、医療チェーン、システム全体が...崩壊してしまったのです。

コーヒーの市場価格高騰の原因には、生産量の多いコロンビアのこのような影響もありました。情勢不安によって招かれた流通の停滞によって、世界のコーヒー経済にも多大なる影響を与えてしまうのです。


・・・

まとめ

以上、ファビアンとカリーナ2人のインタビューから、中米3ヶ国…コロンビア、ペルー、メキシコのコーヒーシーン、今後の発展について、日本語訳ににて抜粋し、記事にまとめました。

現地で従事している人の、現場の様子について語られているのはなかなか貴重だったと思います。

これら3ヶ国をはじめ、ラテンアメリカはコーヒーの生産において主要な地域が数多く存在し、それに伴い非常に多くの人たちが産業に携わっています。

ゆえに、今後コーヒー産業がどう発展していくのか、はたまた気候や政治情勢で、世界中のコーヒーシーンにどう影響してしまうのか、サプライチェーン構造の複雑さゆえ、常に生産者や消費者に対し適切なアプローチができるようにそれらの状況を把握しておく必要があります。

特に消費先進国でコーヒーに携わる以上、コーヒーの品質やブランドだけに目を向けるのではなく生産国の情勢、政治動向に注目し、生産者へどうフォローをしていくべきなのか。しっかり目を向けながらコーヒーに取り組んでいくべきだなと、僕自身いつも考えています。


長くなりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました🍀

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