会社が業務命令として指示できる限界ってどこ?

1 業務命令とは

そもそも、業務命令ってどんなものでしょう。

・上司からの日々の仕事の指示
・企業秩序を守るための指示
・禁止事項の指示
・配置転換の命令
・提出物の提出命令

などなどが思い浮かぶかと思います。

では、これらを会社が従業員に命じることができる根拠はなんでしょうか。

2 業務命令を行える根拠は

このことを理解することができる判例がありますので、記載しておきます。

「労働者は、使用者に対して一定の範囲での労働力の自由な処分を許諾して労働契約を締結するものであるから、その一定の範囲での労働力の処分に関する使用者の指示、命令としての業務命令に従う義務があるというべきであり、したがって使用者が業務命令をもって指示、命令することのできる事項であるかどうかは、労働者が当該労働契約によってその処分を許諾した範囲内の事項であるかどうかによって定まるものであって、この点は結局のところ当該具体的な労働契約の解釈の問題に帰するものということができる」(電電公社帯広局事件)

要するに、前半は、
労働契約を結んだ以上、会社は従業員の労働力を自由にできることを許されている。
従業員は、その労働力を処分する行為である会社の指示・命令に従う義務がある
ただし、一定の範囲で
となります。

労働契約があるからといって、従業員に関して何でも会社の自由にコントロールしていいわけではないことは知っておく必要があります。なんでも、指示・命令していいことにはなりません。もしそれでいいのなら、従業員は奴隷と変わらない状況も出てきてしまいますから。
これはよろしくないということです。

3 業務命令が可能な範囲は

では、どの範囲なら指示・命令していいの?

それが判例の後半部分です。
労働契約を根拠にして、指示命令していいと許していたり、承諾したりしている事項が、会社は指示・命令していいのだと言っています。

4 労働契約の解釈が重要

さらに、それは、労働契約の解釈によるのだと言っています。

こうしてみると、最後は、解釈によるからわからないと言われているようにも思えます。

法律の正解は、条文や契約内容があっても、それをどう解釈するかによって答えがちがってくることがあるので、判例もこういうしかないのでしょう。

5 労働契約の内容になるもの

実務上、労働契約の内容となるものはなんでしょうか。

従業員一人ひとりと交わす労働契約書あるいは労働条件明示書はもちろんそうです。しかし、その労働契約は就業規則と違ってしまうことで問題になる場合がありますので、就業規則が労働契約の内容なんだと理解しておく必要あがります。

ただし、就業規則の内容が合理的な内容の場合という条件がつきます。

「合理的」って
ざっくり言いますと、社会の常識に照らして、多くの人が「そうだね」となるもの
と理解しておいてください。

就業規則の労働契約との違いの問題、合理性の問題は、別な機会に詳しく書きたいと思います。

6 だから、契約内容はよりわかりやすく

契約内容は解釈によるなどと言われれても困るというのが実態かと思います。このめんどうなことを避けるには、契約内容を抽象的にせず、不明瞭にせず、具体的にはっきりしておくことに尽きます。

グレーゾーンを作らないことです。グレーゾーンであるということは、場合によっては、極端な話、どのようにでも解釈できるということにもなりかねないからです。

労務の契約の話って、このように簡単にはいかない少々めんどうなことが入り込むんです。

「わかりずらい」となるのも当然かもしれません。

でも、知・不知を問わず適用される世界でもあるのです。

【特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】


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