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ロウドウ Re:ビュー(株式会社オプト新卒採用MOVIE/ブラック企業大賞2012)

2012年11月18日発行 ロウドウジンVol.5 所収

この就活動画がすごい!

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株式会社オプト新卒採用MOVIE
インターネット広告代理店である株式会社オプトの2012年新卒採用動画。5分超のハイクオリティなアニメは、MV等で活躍する椙本晃佑とミュージシャンのハンサムケンヤのコラボレーション。暗黒就活動画という新ジャンルを開拓した。

 かつて就活動画といえば、リクナビ2008の「山田悠子の就職活動」など、就活をドラマティックに描き、 就活生を勇気付けるものが多かった。ところが、リーマン・ショック後の不況を反映し、「餃子の王将」の新人研修や『やずやへの思い』といった、辛い現実を描いたリアルな就活動画が注目された。その流れの延長として、広告業界から新たな注目企業が登場した。

 本作は、就活生を勇気付けるテンションにはなっているものの、描かれているのは就活ではなく入社後の仕事。激務に耐える新入社員をフィルタリングするという意図は感じられるし、実際に機能することだろう。しかし注目すべき点はそれだけではない。

 通販コスメ広告主を担当している新入社員達は大きな失敗を犯し、涙を流す。そこへ先輩社員が颯爽と現れ、新たな資料を提示することで、時間が巻き戻るループものとなっているのだ。『まどマギ』等、ループものは近年のサブカルチャー物語の王道であるばかりでなく、労働こそがループ構造であるという本質を表している。労働はループではあるが人生はループではない。就職できない者はループ構造に組み込まれないため、一度失敗したら脱落してしまう過酷な現実が待っている。だから就職をしよう。そうこの動画は伝えているのである。

この過労死がすごい!

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ブラック企業大賞2012
ブラック企業をイメージさせる漆黒のページデザイン。本大賞自体は2011年からのようだが、実施母体であるPARC(NPO法人アジア太平洋資料センター)というのが謎で気になる。
http://blackcorpaward.blogspot.jp/

 作家、ジャーナリスト、弁護士、大学教授などから構成される「ブラック企業大賞企画委員会」によって実施された本大賞。過労死やパワハラ・セクハラといった労働環境の問題が広く知られるようになってきたものの、単独の企業問題として扱われることが多い現在の状況から脱却し、ロウドウ現場全体の問題としての認知を促進するのが目的だという。ここではこのたび市民賞を受賞した株式会社ワタミ(以下、ワタミ社)を紹介しよう。

 今回ワタミ社の受賞の契機となったのは、2008年に発生した女性従業員の過労自殺問題。入社からわずか2ヶ月でマンションから飛び降りた彼女の1ヶ月の残業時間は、過労死ラインと呼ばれる月80時間を大きく超過した140時間! 休日も与えられなかっった彼女の手帳には、悲痛な叫びが残されていたという。のちに2012年に労働災害として認定されたが、創業者である渡邉美樹はTwitter上で「労務管理ができていなかったとの認識は、ありません」「ワタミは天地神妙に誓ってブラック企業ではありません」等の発言を繰り返している。一方、2011年の東京都知事選に無所属で出馬した際に、氏は「自殺者ゼロの社会」を公約に掲げていた。すなわち、すべての過労死は自殺ではなく他殺だと主張しているのだ。流石。

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