KUA(京都芸術大学)通信教育部イラストレーションコース 1年目雑感
今年もあっっっっっっと言う間に終わってしまった。
去年の今頃は鬼滅の漫画一気読みをしていたけど今年は吸血鬼すぐ死ぬとゴールデンカムイを大人買いしました。二階堂くん…
サンタを捕まえそこねたせいでクリスマスの朝に首を寝違え、笑うと背骨が砂ァになりそうだったので「でぇーへぇーへぇー」とかいう奇声を発することで衝撃を逃がす最高にキモいオタクになってました。グレゴール・ザムザもドン引き間違いなしです。その他12月は作業用アニメとして一念発起してジョジョの奇妙な冒険3部を観ていて、つい先日観終わったのですが一番の感想が「吸血鬼全然死なんやん」になってしまったのは食い合わせの問題かと思われます。やれやれだぜ…
ゴールデンカムイは夏頃の全話無料開放のときに見事にドハマリしてしまい、それがちょうどドイツのドュッセルドルフにDOKOMI(イベント)参加のときだったのでイベントレポが書けなかったのは本当に鶴見劇場のせいと言っても過言ではありません。適当な屋台飯とビール買ってきてホテルで夜更けまで漫画一気読みするの最高じゃないですか。愛です。
とまぁこいつオタク生活をエンジョイしまくっているなと思われるかもしれませんが(してます)実はめちゃくちゃ仕事とか仕事とか課題とかが忙しくてオタ活に支障をきたし「こっちは仕事してる暇ないんやが?!」ってキレ散らかすこと度々でした。おちんぎんに勝てない。。。
ありがたくも忙しくしていた原因の1つに今年度から身分が学生に戻ったことがあるので、折角なので今年の締めくくりとして1年間の感想を書きたいと思います。
この年でもらえる花丸があるんですか?
というわけで2021年4月から京都芸術大学通信教育部のイラストレーションコースに編入しました。(以下長いのでKUA、イラストコースなどと呼称します)添削された画像がPixivのバナーデビューしたりしました。はなまる~
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/course/illustration/
私は大卒資格を持っているので3年次への編入扱いとなり、最短2年で卒業できる計算になります。ピカピカの新コース、記念すべき1期生です。
なんで入学したの?
色々と理由はあるのですが、簡単に言うと「イラストやデザインについていい加減ちゃんと学びたいなと思ってはいた、ついでに学位が取れるならラッキーだと思った」です。
前提として入学前2020年の私は
・エストニアのタリンに住んでいる個人事業主
・コロナの影響でメインだった仕事がなくなって割と時間的余裕があった(幸か不幸か仕事が増えてのでこの余裕はなくなりました)
・相対的に副業だったイラストや漫画の仕事の割合が増えていた
(幸いか不幸以下略)
・仕事はともかく()として趣味で同人活動をしており、ヨーロッパのイベントもちょこちょこ出ていた。同人誌文化があまりないこっちのアーティストたちの模範となるべくもっとイケてる同人誌を出したいと思っている
・ウン年前に日本で経済学部を卒業している
・いつかオンラインで修士取りたいと思っている
同人誌の表紙で毎回死にそうな気分になるのでちゃんとイラストの勉強したいなって思ってたんですよ。昔から(モノクロ)漫画を描いていたのでどうしてもカラーの1枚絵には苦手意識があって。
そんなこんなの条件がちょうど重なっていた時分だったので、2年ほどしっかりイラストに向き合って生きるのも良いのではないか?と思ったのがきっかけです。今はいくらでもイラスト勉強するコンテンツがインターネッツに転がってはいるのですがその中でもわざわざお金を払ってこのコース選んだのは正規の大学で学位が取れるからです。
ドイツの絵師さんと過去イベントで話す機会があったときに(彼女たちは現地の芸大生)日本の芸術・美術系の高等教育について聞かれたのですが、そんなもん1ミリもかすってきていない私は完全に言葉に詰まってしまいました。確かにネットや即売会、各雑誌の漫画賞あたりはささやかながら経験や知見や聞きかじりの知識があるものの、そういえば一番正規ルートっぽい高等教育機関について全然知らないなと。となれば入学すればネタ的に面白いかもしれないというのが半分、芸術系の学位を取って仮に修士を選ぶ際に少しでも選択肢が広がるといいなというのがもう半分です。
海外にいると必ずビザ(または滞在許可)の問題が立ちはだかります。学士より修士、修士より博士。別になくても全然良いんだけど、あるに越したことはない。大企業に属しているわけでもなく大した資産もない私のペラペラな社会的信用力が少しでも補強されればというのと、後は結局どこの国でも一番学生ビザが確実なので、手段と手札はできるだけ多く持っていたほうが良いであろうとの思いからです。いつ何時どんな理由でどこの国に行きたくなるかわからないし。大学は滞在許可とある程度現地コミュニティーとのコンタクトが得られる数少ない場所なので。
後は何より2021年からややまとまった仕事がちょうど決まっており、それだけで2,3年の学費は無理なく払える見通しがついたのが背中をタックルで押してくれました。試験もなく入学金と書類さえ準備できればこちらのもの、自分のお金だから誰にも文句言われないし悩みや迷いを札束で解決できる大人って最高だなって思いました。実際は日本円の貯金をほとんど定期に入れてしまっていて普通口座に残っていた額をかき集めてギリギリ入学金を用意しましたが。過去大学の学費を滞納しまくってて事務局のお姉さんに「ろうあさん今お金ありますか?生活厳しいですか?」って聞かれたことを思い出します。
そんなこんなで無事に4月から入学しまして、ペカペカの芸大生ですよ。響きがなんかかっこいいですよね。爆発してそうで。偏見です。
それからX年ぶりにシラバスを読むなど…シラバスをまともに読まず履修登録でやらかしたかつての例に漏れずとりあえず必修とればええんやな!!という大雑把な感じで今まで来ました。実際3年時編入だと卒業要件の9割は必修なのであながち間違ってはないと思います。KUAは履修登録期間というのがなく、期限内に課題を出せば評価がつく=履修できるので、個人的このシステムはすごくありがたいです。履修登録でやらかしたことのない人間だけが私に石を投げて良いです。
実際のところどうだったか
良くも悪くも社会人学生、かつもともとの専攻が経済学部というザ・文系・座学・試験点数至上主義・卒論も結構頑張るゼミだったため、「比較すれば割と楽」です。あくまで個人の感想ですが「絵を描いて(好きな実技)で単位もらえる」のはちょっとお得感があります。これは多分経験によって感じ方千差万別だとは思いますが…
もちろんきちんと評価基準はあるし私の成績はあんま良くないです。
おそらく好成績をキープしようとするときちんと練習したり課題の読み解いたりなどのまっとうな努力を要するでしょうが、取り急ぎ単位という意味では多分大きく課題の要求を外していない限り大丈夫じゃないかと思います。
基本は動画視聴と課題作品してそれに講評が返ってきます。一部授業では講評動画なるものがあり、いくつか作品をピックアップしそれに対する講師の講評を見る感じです。
最初この講評動画の意図があまりよくわからなかったのですが(取り上げられたらラッキーみたいな感じ?)無記名レジュメだけのゼミ発表に近いです。姿の見えぬ同じコースで同じ授業を受けた仲間の発表を見守ると考えると中々面白いので今では結構楽しみにしています。
動画は私は仕事の方の漫画の作業しながら2倍速で2-3日程度でざっと流し見をし、履修予定科目の課題を確認し大体の予定を先に立てるようにしています。課題をしているときに気になる部分を見返す、または該当の動画を流しながら作業する感じです。幸い私は「作業時間」がそこそこあるので動画自体はそれほど時間的に無理なく観ることができています。
それで課題。これは社会人…だと主語が大きすぎるとは思いますがでもやっぱり社会人、「課題」の優先度が低いのでどうしても時間と妥協の産物になりがちです。というか仕事が忙しい時期は完全に時間と妥協の産物です。差し込みの仕事があればそちらの対応が第一だし、お金を出して描く絵よりお金をもらって描いている絵が優先されるし、同人ができないと同人系オタクは心身に不調をきたします。
そう考えると私の課題の評価はすごく妥当なラインでしていただいていると思います。ここ微妙なまま出してしまったな…と思ったら大体そう指摘されますし、自己評価と講評のズレがないことを確認できるだけでもまぁ価値あるかなと。
流石にこれに関しては私も度々反省するのですが、金銭が絡まないからこそ色々実験的なことができるチャンスであるのに仕事と課題の締め切りを天秤にかけるとどうしても自分が後数時間で仕上げられる無難なラインを守ってしまうの本当に良くないと思います。学生の人とか時間的に余裕のある方とか色々試して思う存分機会を活用してください。
これを言うとそれやる意味ある??とつっこまれますが、私の場合は目的が学位取得ですのでまぁ…とだけ。やらないよりかはやるほうがいいし、上記のように自分の主観と客観的評価に大きくずれがないこと確認できるだけでも有意義だと思いますし。それにいわゆる必修(専門系)科目の中でも1~2年時のものは骨格とか色彩とかの純粋な知識系を別としてはなんだかんだと言って今まで同人活動や仕事の中で手探りで得てきた知識や感覚、やり方とあまり変わらない感じですが、後期科目ではもっとよい意味で気づきになることも増えてきました。様々な分野?ジャンル?の「さわり」に触れる機会となっているので個人的にはよい授業構成なのではないかと思います。
後すごいアホな感想ですがスライドがおしゃれ。
えっっっっっスライドおしゃれすぎないですか?センスの塊か?
そりゃイラストコースのスライドがデザインセンスの欠片もなかったら多分めちゃくちゃ不安になっちゃうもんね!
一般的?な大学の拡大印刷してレジュメにして配ってくださいみたいなスライドを想像していると度肝抜かれます。す、スライドがおしゃれ~!!!
好きこそものの上手なれとは
後は授業、びっくりするくらい褒められるし(というかEncourageされる)楽しんで絵を描こうとかSNS気にし過ぎちゃだめだとかそういう心構えまで伝えてくれるのには正直びっくりしました。私もあのくらい丁寧に手取り足取り微分を教えてほしかったし論文読めたら偉いねすごいねってめちゃくちゃ褒めてほしかった。
それはともかくとして裏を返せば学生相手にそこまで言わないといけないと現役勢が判断するくらいクリエイター個人が追い詰められがちというか、まだまだ色々な部分で未整備の業界であり産業なんだろうなとも思いました。
同じくらいのタイミングでたまたま音楽系の専門学校関係の方と話したのですが、時代的な何かかそちらでも同じような状況だそうです。彼女はやや「甘すぎる!」と厳しい意見をお持ちでしたが私個人としてはそれでもある程度の技術と知識をもった人材をある程度の規模で供給できないと業界として安定した成長も見込めないであろうし、ここに集まってくる学生はイラストを消費する将来第一線の顧客でもあるわけだから大いにイラストレーターとの一体感みたいなものを醸成しておくのは有効じゃないかなと思います。まぁ個人的にはそういうお絵かき楽し~!!だけで誤魔化してきた末の入学なのでどちらかというともう少し根性入れて作品と向き合う気概の方が聞きたいかもしれないですが。
ところでそうした心構えも含め結局、二次創作を始めとする同人創作活動一般、ほぼセルフユニバーシティと言ってもよいくらいやばい成果を上げているなと改めて思いました。もともと「自治」である中世大学の意義を考えるとセルフどころかこっちの方がむしろ正しいのかもしれない。オリジナル創作ももちろんそうですが、1から創作するよりも(プロが作った)元となる作品とそれを好きなコミュニティが存在するのは圧倒的に強い。
まず絵を描くことを苦に感じている暇がない。いや実際締め切り前とかはめちゃくちゃ苦しいんですけど推しを見ると脳内物質がどばばするので多分総合的には苦しくない。苦しいけどな。
そしてその苦行をアホみたいに煽ってくる素敵な仲間がいる。何なら同じように原稿の苦しみまで味わってくれる。強い。
とにかく描くんだよ。ごまかして描くんだよ。わかる。出ない神本より出るクソ本。うっかり作者がハイパー緻密描写変態画力な作品にハマったら、時代考証が必要な作品にハマったら、少女漫画で生きてきた人間が突然ゴリゴリ筋肉作品にハマったら(最終的にゴリゴリ筋肉ジジィにキラキラ柄トーンを散らす友人を見て私は謎の感動を覚えました)自転車とか武器とかが必要になって苦し紛れに3Dに手を出すフォロワーもたくさん見てきました。私はBlender挫折中です。エトセトラエトセトラ…
だから本当に純粋に絵がうまくなりたいのであればこうやってひたすら二次創作でもなんでもいいからただただ描きまくってネットで楽しくきゃっきゃやってる方がいいんじゃないかな。同人界隈にも色々問題があるのは承知していますが結局今を生きるイラストレーターはそれの対応対策も含めて今後生きていけるかどうかといった感じのお話でしたし。
美大や芸大や関連する専門学校を全然知らない私のような人間からすると、あぁいう学校ではなんか我々が思いもつかないすごい知識や技術をこっそり学んでいるんじゃないか…と思わず邪推しがちなんですが、この現役絵師もYouTubeでばんばか動画をあげる時代、それほど特別なことは(今の所)なかったです。卒業試験で亜空間に連れて行かれてそこでバチバチに鍛えられ数多の絵師をぶちのめし最後に勝ち抜いたものだけが卒業し神絵師になれるとかいうシステムかもしれないのでまだ油断はできませんが。
というわけで
・自分でやると好きなことしかやらないタイプがある程度体系的に、強制的に幅広くサワリを学ぶため(私は結構このタイプ)
・学位を取るため、履歴書に書くため
・通信大学を試してみたい(2022年から仕事でEdtech関連に携わることになり、まさかこんなところで役に立つとはなぁと思いながら改めて生徒用ウェブサイトをチェックしたりしています)
みたいな学歴とお絵かきが大好きな人間に結構いいんじゃないかなと思います。おすすめします。私は別に学歴は必要ではないけどそれで納得してくれる一般人は想像以上に多いと思っているだけで学歴が好きなわけではありません。歴ヲタなので日本国における大学は帝国大学令に定められた帝国大学だけしか認めていないのでぶっちゃけ現在の大学なんてもう全部ただの学校法人ですよ会社と同じですよロマンがないんですどこでも同じです(一息)
これからの期待
課題する時間なくてぎゃーすかすること毎期の通りですが個人的総合点としては1年間結構満足でした。まだ冬季終わってない。その通りです。2月の課題提出期間がイベントとダダかぶりしてるので既に締め切りチキチキレースです。別に学歴とお絵かきが好きな人間じゃなくても(お絵かきは好きでないと駄目ですが)普通に興味とお金に少し余裕があるならやってみてもいいんじゃないでしょうかと思います。
同じコースの皆さんとはツイッターやDiscordなんかで時々交流させてもらっています。本当はもっとお近づきになりたい(将来ここから神絵師が爆誕するかもしれないので)のですが時差や仕事のあれこれでコアタイムになかなか顔を出せず…
イラスト描けるコミュニティを築きたいっていうのも期待の1つだったので、(うまく行けば)後1年、来年はもう少し積極的にコミュニケーションを図っていきたいです。VRで卒制の展示会とかやりたい。皆やろうね。なんか美大系の漫画で得た知識…
そういえば大学側でも交流用コミュニティはあるのですがこっちは全然活用できていないです。このご時世「イラスト」に関わる人間同士のコミュニケーションとしてまず学生といえど本名表示はやめるべきだと思うのですが。というかやめてくれ。Vな存在として在学したい。というか実際Vtuberが入学したら結構良い宣伝になるのでは??
後もう一つ期待しているのがオンラインであることを生かしてゆくゆくは海外受講生を受け入れ+増やしてもらうことですかね。海外でも有名になってくれたら第一期卒業生(予定)のわたくし、こちらでの仕事にもいい影響が出るかもしれないので。笑 できれば学生証に英語表記を入れてください。
以上、思いつくまま書いて長くなりましたがもし入学を迷っている人へは少しでも判断の参考になればと思います。(主に社会人向けだと思いますが)
また同じ大学、コースの人はぜひお友達になりましょう。何か面白い仕事や企画があればお声がけください!物理は遠いですが大体ツイッターなどのオンラインにいます。
以下宣伝
★1 現在Webtoon漫画のアシスタント募集しております。詳細はこちらのドキュメントをご確認ください。実は!同じコースの皆さんにも既にお手伝いいただいています。大学入ってよかった!いつもありがと~
★2 エストニアのタリンで同人活動をするJPEE編集部というのをやっています。JPEEエストニア・アンソロジーVol02(PDF版)が12月31日発行!
Kindle版(1月上旬)製本版(1月下旬)も追加予定です。
BOOTH予約・購入(12/31~):
https://rouatnt.booth.pm/items/3544141
サンプル(Pixiv):
JPEE編集部、Vol01についてはこちらから
以上!皆さまよいお年を!
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