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目玉の意味、敵への愛 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 考察・感想

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、先に英語のみで見ていましたが理解に自信がなく、やっと日本語字幕も見ることができたので思いの丈を残しておこうと思います。

劇中では家族関係を中心に様々なことが表現されていると感じましたが、特にニヒリズムとそれに関係する目玉に大きく感情が揺さぶられたため、クローズアップして書いていきます。

目玉に対する自分の理解

結論から言えば、目玉は「愛すべきところを見出す行為の象徴」だと感じました。

物語の終盤、ベーグルを覗いてすべての並行世界と繋がったエヴリンは強烈なニヒリズムに囚われ、ジョブ・トゥパキの言う「ほとんどのものは無意味で、意味のあるものなんて一瞬」という考えに同調します。そんな中、優しさや誠実さで世の中の良い面を引き出して意味あるものに変えようとするウェイモンドの戦い方を知り、ニヒリズムから抜け出します。
物語の冒頭で、ウェイモンドはエヴリンが憎む仕事の一環である「洗濯物」に目玉を貼り付けて愛らしさや面白さといった良い面を引き出そうとしており、そんな彼の"戦い方"を象徴するアイテムとしてエヴリンは目玉と"戦い方"を継承しました。

話は逸れますが、「クッキー」もウェイモンドの"戦い方"を示すアイテムとして登場します。
劇中の最初にディアドラと会ったとき、領収書の不備を責めていたディアドラは夜までの猶予を言い渡します。この時、いつの間にかウェイモンドが持ってきたクッキーを受け取っており、本来はそのまま終わっていた可能性があるところを、クッキーで絆されて猶予を与えたと考えられます。
その後、エヴリンがカンフーで映画スターになるバースの師匠が「クッキーもカンフーになる」と言って、ウェイモンドの戦い方を暗喩しています。

話を戻すと、劇中の目玉は良い面を引き出す意思の象徴であり、諦めやニヒリズムを象徴するベーグルと対極の存在になります。
ちょうど色的にも白と黒が逆になっており、おでこに目玉を貼り付けたエヴリンは黒丸を書いているベーグル教?の人々とも対になってるのが面白いです。
また、ジョブ・トゥパキは「意味のあるものなんて一瞬」と言っていることから全てが無意味というわけではないと考えていることが分かるため、白と黒を「意味のあること と ないこと」の捉え方の大きさだと考えても良さそうです。

これらのことから、敵の放った銃弾を目玉に変えて、それを敵に貼り付けるというのは「お前たちの良い面を引き出してやる」という宣戦布告のように思えました。
その後の戦いのシーンと合わせて、 バカバカしさ と カッコ良さ と 感動 を一度に感じるという、他の作品ではまだ経験したことのない感情の動きを体験できた時点でこの作品が大好きになりました。

余談 : ペット・ロック

アメリカでは1970年代に『ペット・ロック』という、石に目玉を2つ着けた、まさに劇中に出てきたようなものが商品として大ヒットする社会現象がありました。消費者がただの石に意味を見出すという点が劇中のメッセージと類似しており、象徴としてはただの目玉より分かりやすく感じる人もいそうです。
ちなみに、公式グッズとして『ペット・ロック』が販売されています。ちょっと欲しい。2個買って並べたい。

感想 : 人生の明るい面を見よう

私はエリック・アイドルの『Always Look on the Bright Side of Life』という曲が好きで、前向きに生きていこう、良いところを見つけようという歌詞内容が、この映画とリンクするように感じました。(この曲が使われた映画の皮肉を考えると微妙かもしれませんが)

これからは苦手な相手にクッキーを送り、目玉を貼り付けながら生きていこうと思います。

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