人生初、あこがれのラン友誕生。
初心者でも、アスリートじゃなくても、走り出す意味がある。
ランニングを始めて1年ほど経った頃のことです。初めての10kmの大会を完走して、張りつめていた緊張の糸が解けたのか、走る気力が全くなくなってしまいました。
もともと、健康のために走ることを決めたのです。日頃ぽつぽつと走ることで、身体を動かすことの楽しさ、運動して体力をつけることの大切さを感じ始めていました。
せっかく1年も続けたのに、ここでやめてしまっては、もったいないという気持ちもあります。
けれど、どうしてもモチベーションが上がらず困っていました。一旦走ることを休んでしまうと、またジャージ姿で家の外に出ることが、恥ずかしくてたまらなくなるのです。
「何かを継続したい時は、人を巻き込んで一緒にやるといい。」と本には書いてあります。
私が走りたいと思った理由の一つである、たかぎなおこさんのコミックエッセイ。その中でも、作者のたかぎさんは女性3人のラン仲間を作って、賑やかに走ることを楽しんでいらっしゃいます。
その本を読む中で、私も、お友達と楽しく走ることを楽しみたい。一人で黙々と孤高のマラソン道を突き進むよりも、みんなを巻き込んで一緒に練習したり、マラソン大会に出られるようになったらなんて素敵なのだろう。
という気持ちが膨らんでいました。
自分の心がワクワクするのを感じていました。
ある日、ご近所のママ友さんと、子どもたちを遊ばせながら世間話をしていた時のことです。
そのママ友さんは、私が風邪をひいて寝込んでいるときは、お手紙付きの差し入れを持ってきてくださるような心優しい方で、私が大好きなお友達の一人。
その方も、わが家と同じ歳ほどの子ども3人の子育てに追われていて、私と同様に、運動らしきものは学生以来したことがありません。
「最近からだの調子が、なんとなく悪くて。これが歳なのかしら。このままだと、自分の体力がなくなって、子どもたちのパワーに押されて死んでしまうわあ、あはは。」
なんて軽い冗談を交えながら、自分たちの体力の低下をぼやいていました。
私は、ママ友さんに、
自分の体力の低下に危機感を感じて、ランニングを始めたこと。そして、今気持ちが上がらなくてどうしても走れなくなっていること。一人だと恥ずかしくて走れないこと。
そんなことを伝えました。
私はしゃべりながら、心の中で密かに温めていた思いが、だんだん熱くこみ上げてくるのを感じていました。
「みんなと一緒に走れたら、きっとすごく楽しい!仲間を作りたい!」
そして、これは本当に口がすべったとしか言いようがないのですが、
「ねえ!一緒に走ろうよ!」
こんな言葉を、私が気がついた時にはもう言い終わったあとでした。
繊細さんで、大人しい私です。自ら人を誘うなんて、滅多にしないことです。この言葉を言った自分が一番おどろいています。
勢いに乗って、なんだか変なこと言っちゃったかな。少し後悔しかけていたとき、
「え?!うん、走ろう!走ろう!」
私の勢いに押されて、一瞬とまどったような表情も、ちらりと垣間見えたような気がします。けれど、心優しい穏やかなママ友さん。ここ何年も運動なんてしてなかった方が、一緒に走ると言ってくれたのです。
私は、自分が人を誘えたことと、そしてお友達がそれに応えてれたことに、鳥肌が立つように心が震えているのを感じました。
人生初の、私のラン友の誕生です。