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アルミロードでPBPは完走できるのか?~ふりかえり~

走行編では時間順に徒然なるままに書いてみましたが、ここでは計画と実際をポイントごとに書きます。


先にまとめ

ついつい冗長になるので先にまとめを書かせて頂きます。

初めて買ったロードバイクのキャノンデールCAAD12でPBPを無事、完走することができました。

バイクがエントリーモデルかどうかなど、フランスの過酷な1200kmを走るときに考慮すべき多くのパラメーターの中ではほんの一つに過ぎないということかと思いました。

全てのパラメーターの組み合わせは無限にあり、それらすべてを日頃のブルベで経験することは時間的にも不可能です。PBPでは、可能な限りフィジカル面とそれ以外の準備をして、本番で発生する想定外のことに対して臨機黄変に対応できる柔軟性が問われているとのだと思いました。

昨今のビジネス環境はVUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, and
Ambiguity)などと言われていますが、自然と自身の体を相手にするブルベ業界では当たり前のこと、距離が1200kmとなるPBPでも同様で、前回の一桁前半の気温も、今回の熱中症になりそうな暑さも、想定外ではなく、いかに想定内にすることなのかな、とたくましくPBPを走る参加者を見て思い、自分の想定外対応力をさらに鍛えるためにも次回2027年のParis Brest Parisに参加することを決意しました。

(追記)より安心、安全に走るためにも、今回の2日目に発生したアキレス腱炎と3日目辺りから出てきたシャーマンズネック初期症状の予防、眠気対策が特に次回走る時に解決しておくべき課題になりそうです。

走行計画と実際、特に休憩と仮眠

走行計画とキューシート

当初の走行の大まかな前提は

  • 休憩はできるだけPCで

  • 大休憩は往復ともにルデアック

  • 復路のルデアック以降は適宜、休憩仮眠

  • ブレストまでは借金は作らない。不測の事態に備え1時間の貯金は確保。

これに基づいて作ったミニキューシートは下図です。名刺大のこの表を休憩時に眺めながら、前へ前へ、と進むことにしました。巡行速度はこの通りにはいっていません。クローズまでの貯金時間を常に見ながら、臨機応変に進めるのは、いつもやっていることなので、計算ミスをしない限りは大丈夫です。

フル版のキューシートは背中のポケットに入れていましたが、一度も見ていません。日本のブルベではPCのクローズに時間が近いときは見ることがあります。
簡易版のキューシートは下記のものを用意して、いつの間にか飛んで無くなっても良いように、トップチューブバッグ、反射ベストのポケットなどに複数入れて、休憩などで止まるときは常ににらめっこしています。

非公式サイトのリザルトー87時間40分で完走

初参加でしたが、時間の借金も作ることなく、制限時間内に余裕を持ってゴールできました!非公式サイトの生データは以下の通りです。
これはPCの滞在時間込みのもので、実際どう走ったかが伝わらないので、Garminのログでもっと細かく見てみました。

次回走行のためにもっと細かく分析してみた

以下のような条件で細かく見てみました。

  • 速度の計算にPCまたはその代替の食事休憩の時間は除いたが、PCの間で取った仮眠、休憩はそのまま。

  • 10分以上の休憩はわかる範囲で抽出して書き出した。

さて、予定と実際の違いの最大のポイントは、ルデアックの滞在時間が長かったのにしっかりとした睡眠時間が取れなかったこと。2時間しか確保できていませんでした。PCに寄って、ドロップバッグをピックアップし、AirB&Bの宿にチェックインして、買い出しに行って、ご飯を食べて、充電をして、睡眠以外に3時間も費やしているのです。これは過去最悪の非効率さです。もっと考えておくべきでした。しかし貯金は2時間弱のまま出発できました。

その睡眠不足の影響が早速CARAIX-PLOUGUER以降に繰り返し睡魔として出てきました。

ブレスト以降は想定巡行速度ががくんと落ちるので、それに合わせて休憩の回数と時間を増やしていき、借金にならないように進み、それは成功しています。しかしこうして数字を見ると、貯金が20分台まで何度か減っていたのは結構危ない橋を渡っていたなと思いました。

今回の一番の成功要因は、一度も爆睡の寝過ごしがなかったことです。Garminの無音振動アラームのセットは間違えず、一発で起きることができました。逆に言えば、ホテル以外はあまり深い眠りを一度もしていないということでしょう。よくそれで耐えられたと自分を褒めてあげたいです。

ウェアと温度管理の計画と実際

前回のPBPが1桁台前半まで気温が落ちて寒さが一番大変だったと聞いており、それに雨が加わると、筆者は汗かきのため、汗冷えによる低体温がものすごく心配でした。そのため、あの暑さの中でも上はメリノウールの長袖ジャージ、下はロングのビブタイツでスタートすることにしました。天気予報を見る限り10度を下回ることはないのですが、最悪を想定しました。

しかしご存じの通り、これではあの暑い中、大変でした。ルデアックでピックアップするドロップバッグにビブショーツとレッグカバーを入れていたので、往路のルデアックで着替えました。ただし上はメリノウールの長袖のままです。RaphaのMサイズだと袖をまくり上げることができるのと、通気性がよいので、暑くても大丈夫で寒い方にも止まらずに対応できるからです。アームカバーは着たり脱いだりするのは私は止まらないとできないです。

夜は基本的にレッグカバーもつけて走行していましたが、2回目の夜明け前は、9度まで下がったとき、眠気が来るのは体温が下がるからと思って、レインジャケットとレインパンツまで着込んで体を温めました。登り坂では極力パワーを下げて汗をかかないようにしましたが、うまくマネージできました。

雨の低温でも耐えられるようにと用意したのは、Finetrackのドライレイヤーのグローブ版とWorkmanのイナレムという組み合わせで、温度が下がるにつれ、指切りのグローブの下にドライレイヤー、さらにその上にイナレムをつける予定でしたが、今回、低温による眠気対策のために一度だけイナレムだけを使いました。

もし今回の気温の範囲は雨が降っていたとしても、経験済みなので、マネージできていたと思います。1桁前半は冬仕様のウェアでしか経験がないので、次回参加時は上が33度にも耐えられるウェアで5度の練習もしておかないといけないと思いました。

胃腸のマネジメントの計画と実際

今回、胃腸がつらいと思ったのは24日の未明の1回だけだったかと思います。熱中症になりそうな中、水をがぶ飲みしながらエネルギーのために食事も繰り返していると、いつものブルベなら胃腸がかなり弱るのですが、今回はなぜかそれが起きませんでした。

パンシロンと龍角散を常に服用するようにしたことは大きかったと思います。今までのブルベで私は持っていても、ほとんど飲んだことがなかったのですが、これは師匠が強く勧めていたので、今回は予防的にフランスに入国してから毎日服用するようにしていました。スタート前日も牛肉のステーキ、スタートの食堂でもチキンを食べたりしているのに、全くもたれませんでした。

おそらく、今回、食事を少し抑えめにしたこと。バランスの取れた普通の食事を心掛けて炭水化物に偏りすぎなかったこと。そして、何よりも大好きなフランス風の味付けの食材だったのと、酸味のある人参サラダやパスタサラダ、フルーツなどを取るようにしたことで、いつも胃腸のすっきり感があったことなどが思い出されます。

バッテリーマネジメントの計画と実際

600km超のブルベを一度も走ったことのない私はこれが実は一番の懸念点でした。特に私はより安全に走るためにナビはスマホのRide with GPSを音声で主に耳から利用するようにしており、バッテリー消費が大きいからです。

ライト(Cateye VOLT800Neo)の電池

今回は往復ともにルデアックで民泊で大休憩をしたので、そこですべての機器がフル充電できましたが、滞在時間が短くなる場合に備え、短時間でフル充電できるかが課題でした。師匠からの直前アドバイスで、ライトの充電時間が一番課題なので、予備バッテリーを持っておいた方がよい、ということで、直前に旧型VOLT800の電池を二本調達しました。2回目のルデアックまでは予備はそれぞれ1晩ずつなので、予備はドロップバッグに入れ、重量を減らし、その後は1本だけ予備を携行したら、2本とも切れて使うことになりました。

ナビ用スマホの電池

Pixel 6aでRide with GPSを動かし主に音声でポイントで画面を見てナビとして利用していますが、サインボードを見たり、周りの参加者を見ていたらコースを間違えることがほぼないので、22日、23日の日中はナビ用スマホを切りました。これで全くバッテリーに問題がなくなりました。利用時はもちろん機内モードにしてRide with GPSはオフラインモードで利用しています。ルデアックの宿ではもちろんフル充電にしています。23日の夜は走行中にモバイルバッテリーで充電したと思います。

サイコン(Garmin Edge 840 Solar) の電池

今回はよく日が照りましたので、Solar機能がフル活用でき、ホテルでフル充電した以外の追加充電は23日の夜に少ししました。バッテリー消費節約のためにGPSは最高精度にはしていません。あと夜間のディスプレーの輝度も見えるか見えないかのぎりぎりの明るさに設定しています。かなり見づらい輝度まで落としていたので、夜間は距離以外の情報は見ていません。(暗すぎて見えなかった)。クライムプロは坂の多いPBPでは本当に役に立ちましたので、起動しています。

スマホの電池

iPhone 13 mini を携行していましたが、昼間は写真を撮ることがあるので電源を入れていますが、PC以外では機内モードにしました。夜間は走行中は写真は撮らないので、電源を切りました。PCに到着する手前に電源を入れて写真を撮りながらうろうろしました。23日の夜に走行中にモバイルバッテリーから一度、充電しましたが、それ以外はルデアックのホテルのフル充電だけで足りました。

Garminウォッチ(ForteAthlete 245)の電池

ホテルのフル充電だけで大丈夫でしたが、仮眠時の無音アラームが利用できなくなると寝過ごしでタイムアウトになる恐れがあるので、ケーブルは携行しています。このアラームはスマホのアラームと同じでスヌーズと完全なストップの2つがあるので、仮眠時はスヌーズを押して、寝過ごしを防止しました。もっともどっちを押しているのかわからないくらい寝ぼけてしまっては役に立たないのですが、今回はそういうことがありませんでした。このアラームを使ったのはフランス入りしてからでしたので、本来なら普段の朝やブルベ中に使ってリハをしておくべきでかとは思います。

補給食の準備と実際

今回、日本からゼリードリンク、カロリーメイト、お茶とスポーツドリンクの粉末などスタート時の携行用とルデアックのドロップバッグ用に日本から大量に持って行ったのですが、私は2,3回補給食を使用した程度で、水分と栄養はPC、Bar、私設のエイドでほぼ賄うことができました。特に未経験ゾーンの600km超えは巡航速度が下がり休憩の機会も増えたのも理由です。
水分はボトルケージにCamelbakの長いボトル1本、Therrmosの水筒、Apiduraのフードパウチにペットボトルの水を1本(なくなると補給食入れ)の3本体制でしたが、この量だと約80kmごとにPC/WPのあるPBPだと途中のBar, スーパー, エイドをタイミングを逃さず利用すれば停止する時間のロスはあるものの、休憩を兼ねられるので、今回のような暑さの中でもほぼ問題ないと感じました。ただし、BrestのPCの後、どこか適当な食事休憩場所があるだろうと思ったら、しばらくほとんど見つけられなかったのはかなり不安でした。そこは補給食でハンガーノックだけ気を付けました。

眠気覚まし対策の準備と実際

スマホに好きなラジオのバックナンバー、オーディオブック等を入れていましたが、一度だけラジオは聞きました。

インド人が夜間走行時に大音量で民族音楽的なものをかけていたのは面白かったですね。しばらくトレインに加わらせて頂いたときは私も口ずさみました。

そういえば今回、眠気覚まし用のガムを持っておらず、次回は携行しようと思いました。

途中のPCでカフェインジェルを売っており2つ購入しましたが、24日の未明に一度飲みました。しかし気持ち悪くなりました。効果があったかというとよくわかりませんでした。

痛み対策と実際

600kmブルベでいつも後半に腰痛と手の痛みが出ていたので、ハンドル周りの対策として、購入時からつけていたハンドルをカーボン製のフラットなエアロハンドルに交換しました。

またいろいろな痛み対策としてロキソニンを携行しました。

エアロハンドルは安全かつ手のひら全体で体重を乗せて楽なポジションを取ることができたので、効果絶大でした。腰痛は手の痛みも全くなくなりましたが、最終日あたりから手の外側と小指全体に痺れが出てきました。この記事を書いている3週間後もだいぶましにんまったものの、痺れが残っている状況です。

これまでと違った点としては、アキレス腱炎が出てきたことです。往路のルデアックに到着する頃が最も痛かったです。原因は序盤のトレインに乗る際のオーバーペースもありますが、これまでのライドの疲労もあるかと思いました。足回りの筋肉痛がなかなか引かない状態が続いていたので、かなり硬くなっていたのだと思います。

ただロキソニンを飲まないといけないほどひどくはなく、一度も服用しませんでした。

(追記)ここに書き漏らしていた大事な点、それはシャーマンズネックの初期症状が出てきていたことです。日に日に首の後ろ側の大きな2本の筋の周りを中心にかなり凝り固まっているな、と感じてきていましたが、伸ばすと少し痛いな、と思う程度なので大したことはないと思っていました。しかし23日頃からいつの間にか目線が下にいくのでなんでだろうと思ったら、首が下に垂れてきているのです。自覚症状のないまま首だけ前に垂れさがるのはやばいと思い体をできるだけ起こして目線が前を向く角度を維持するようにしました。もう少し距離が長かったら危なかったかもしれません。

その他の装備品の準備と実績

チューブは3本携行し、ドロップバッグにさらに3本用意していましたが、一度も使いませんでした。これは一度も雨が降らなかったからかと思います。

タイヤも1本だけドロップバッグに用意しましたが、使っていません。

フレーム用のテールライト2つ、ヘルメット用のテールライト、スピードセンサー、ケイデンスセンサー、心拍計兼パワーメーターのPowerCalの電池はすべて新品にしていましたが、ケイデンスセンサーが残り100kmくらいでなぜか切れました。原因はまだ確認していません。
PowerCalは最近調子が悪かったのですが、今回、スタート直後から使えませんでした。故障していたようです。この機器、防水が完璧ではないようで、同じものが前も3年ほど使って壊れました。今回、たまたまPBPにそのタイミングが合ってしまったようです。それ以外の電池はなくなっていません。

Finish LineのウェットルブCeramic Wet Chain Lube数ccを2つ小分けにして機内持ち込み手荷物としてSDS付で持ってきたのですが、問題なく持ち込め、それを本番走行時も携行しました。往復のルデアックの大休憩時に予防的にさし、さらにその後、変速の調子が若干悪くなりチェーン落ちを1回起こしたので、そこでもさしたら、その後問題がなくなりました。


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