見出し画像

自分の意思を社会に生かすための実践〜『18歳からの民主主義』

◆岩波書店編集部編『18歳からの民主主義』
出版社:岩波書店
発売時期:2016年4月

2016年の参議院選挙から選挙権の年齢が「18歳以上」に引き下げられました。本書はそれにちなんだ企画で、若年層向けに政治全般についてわかりやすく解説し政治への参画を訴えるアンソロジーです。

文字どおり民主主義の基礎知識をレクチュアした〈民主主義のキホン〉、投票時の論点となりそうな政策課題を論じた〈選挙。ここがポイント〉、若い世代から高齢者まで思い思いに政治について記した〈立ちあがる民主主義!〉の三つの章から構成されています。

後半の〈立ちあがる民主主義!〉に寄せられた文章がそれぞれに筆者の個性が出ていて私にはもっともおもしろく感じられました。

民主主義という道具を使いこなすことの重要性を説く上野千鶴子。性的少数者の考える民主主義について記した東小雪。在日コリアンとして日本社会の荒波に立ち向かうだけでなく人が共存していく可能性を大事にしたいと表明する金明奈。香港の困難な政治状況を熱く語るアグネス・チョウ。幼少青壮老の五連帯を説くむのたけじ。
伊藤野枝の評伝で話題を集めている栗原康の一文は、さほどの切れ味は感じられませんが、「権力をつくるのはもうやめよう」とアナーキックに呼びかけて、優等生的な大人の民主主義論が大半を占めるなかで異彩を放っています。

もちろん前半のお勉強モードの文章のなかにも優れた論考はあります。民主主義と同義化されているものの短所も多い多数決ルールに代わるものとして順位に配点する「ボルダルール」を紹介している坂井豊貴、地方議会選挙のより良いあり方を具体的に提起する砂原庸介の論考が勉強になりました。
良くも悪しくも岩波新書らしい内容といえます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?