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師弟の作品を見較べる〜『拝啓 ルノワール先生 ─梅原龍三郎が出会った西洋美術』展

印象派絵画に関する企画は日本では鉄板ネタ。なかでもルノワール展ともなると、私の住む大阪に限っても、2010年に国立国際美術館で『ルノワール─伝統と核心』展を大々的に開催したのが未だ記憶に新しい。昨年、大阪市立美術館で行なわれた『デトロイト美術館展』でもルノワールの作品はやってきました。というわけで、ルノワール展は今さら感なきにしもあらずなのだけれど、本展は梅原龍三郎との師弟関係を軸にしたところが切り口としては新しいかもしれません。

梅原は日本人で初めてルノワールに教えを受けた画家。梅原をとおして日本はルノワールを受け取り、西洋画を発展させてきた、ということらしい。なるほど、ルノワールと梅原を同時に鑑賞するというのはおもしろい体験です。たとえばギリシャ神話に材を採った〈パリスの審判〉。ルノワールの作品とそれをパロディ風に模写した梅原作品の対照の妙。(梅原作品では何故かヘルメスが描かれていない。)あるいは二人が描いた〈バラ/薔薇〉を見較べるのも一興でしょう。もちろん梅原初期の代表作〈黄金の首飾り〉にみる女性の体型はいかにもルノワール風です。

このほか梅原と交流のあったピカソやルオーの作品もいくつか。ピカソの〈オンドリと、スイカを食う人〉は恥ずかしながらよく知らなかったけれど、いかにもピカソらしい印象深い作品。ルオーの〈エバイ(びっくりした男)〉もなんだか愉しい。モネの〈草原の夕暮れ、ジヴェルニー〉は、原田マハの小説『ジヴェルニーの食卓』の読者ならばさらりと通り過ぎることはできないでしょう。ブラックの〈海景〉も小品ながら惹かれるものがありました。

ちなみに同展は昨年末から年をまたいで東京・三菱一号館美術館で開催され、その後大阪に巡回してきたものです。

*『拝啓 ルノワール先生 ─梅原龍三郎が出会った西洋美術』
会場:あべのハルカス美術館
会期:1月24日〜3月26日
主催:あべのハルカス美術館、朝日新聞社

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