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チロル民話が生まれ変わって絵本になった〜『ドクロ』

◆ジョン・クラッセン著『ドクロ』(柴田元幸訳)
出版社:スイッチ・パブリッシング
発売時期:2024年4月発行

真夜中にどこからか逃げ出したオティラが森を抜けてたどり着いたのは一軒の大きな屋敷。そこで出会ったドクロとの交流。ドクロと踊る場面など一般的には不気味あるいは滑稽と感じられそうですが、同時にリリカルな味わいが醸し出されます。あれやこれやでオティラは屋敷に泊まることになるものの、夜になると、頭のないガイコツがやって来てドクロを追いかけまわすらしい……。

作者のジョン・クラッセンはカナダ出身の絵本作家で、本作はチロル民話を焼き直した作品だといいます。

「僕が一番惹かれるのは、ユーモア、死の影の二要素に、さらに叙情性が加わったクラッセン作品だ」と訳者の柴田元幸はあとがきに記しています。
「デビュー以来良質の作品を発表しつづけているクラッセンの作品群の中でも、本書は最高傑作の部類に属すと思う」。

とかく説明過剰な文学作品が増えてきたなかで、多くの謎を謎のまま放置して読者のイマジネーションに委ねる本書は、大人の読書にも耐える素敵な絵本だと思います。

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