亡者と生者の交歓〜『寝ずの番』
津川雅彦ことマキノ雅彦のデビュー作品。
たいした予備知識もなく劇場に足を運び、R−15指定がついているのは何故と思っていたら、いきなり冒頭のエピソードで、それと知れました。以下、テレビではピー音が入るだろう言葉のオンパレード。
上方落語のとある一門関係者三人が相次いで他界し、その通夜の席を舞台に繰り広げられる死者と生者の交歓ドラマ、というよりドンチャン騒ぎ。
中島らもの原作の映画化ですが、上方落語ファンにはよく知られた故六代目笑福亭松鶴や鶴瓶、故桂歌之介らの実話に材を採った挿話が盛り込まれていて愉しい。
猥談も艶歌も決してイヤらしくならず、三代目マキノ監督は遊び心を持って粋に演出しています。その分、上方芸人のコテコテ、モッチャリした雰囲気や空気感はちょっと希薄でしょうか。中井貴一は最後まで落語家に見えなかったし、堺正章なんてどうみても水に油。せめて主要な役どころは、ネイティブ関西人でキャスティングしてほしかった。この手の映画で、訛った関西弁が出てくると(うるさ型の関西人観客にとっては)それだけで興が醒めてしまいます。
それはともかく、本作は封切り当時はさして話題にならなかったと思いますが、この後、落語ブームが到来し、テレビでも映画でも落語をテーマにした作品が増えました。あらためて本作を見直すのも一興かもしれません。
*『寝ずの番』
監督:マキノ雅彦
出演:中井貴一、木村佳乃
映画公開:2006年4月
DVD販売元:角川ヘラルド映画
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