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本読みの記録(2018)

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ブックレビューなど書物に関するテキストを収録しています。対象は2018年刊行の書籍。
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2018年4月の記事一覧

西洋哲学の文脈で読み直す〜『京都学派』

◆菅原潤著『京都学派』 出版社:講談社 発売時期:2018年2月 京都学派とは『善の研究』で知られる西田幾多郎、西田哲学を継承した田辺元、さらにそれを展開した京大四天王(西谷啓治、高坂正顕、高山岩男、鈴木成高)たちの学派を指します。戦前は「大東亜共栄圏」のスローガンと結びつき、戦争に協力した哲学だと批判されてきたことは周知の事実でしょう。とくに京大四天王たちは雑誌における好戦的な発言の責任を問われ、戦後、京大から追放されました。のちに復帰できたのは西谷一人だけです。 けれ

知性の再定義を迫られる時代を生きる〜『人間の未来 AIの未来』

◆山中伸弥、羽生善治著『人間の未来 AIの未来』 出版社:講談社 発売時期:2018年2月 異業種対談なるものは、往々にして両者が無理に話を噛み合わせようとするあまりに一般化・抽象化に流れてしまい、一流人同士でも思ったほどおもしろくならないことが多い、と常々感じてきました。けれども本書はその不首尾を免れた貴重な一冊といえそうです。 話題は多岐にわたります。iPS細胞研究の最前線やノーベル賞受賞時の挿話、将棋界の新しい動きや藤井聡太論、人材育成のあり方……などなど。二人の達

現場の活動と憲法をつなげる〜『子どもの人権をまもるために』

◆木村草太編『子どもの人権をまもるために』 出版社:晶文社 発売時期:2018年2月 1989年に国際連合で採択された「児童の権利条約」(発効は1990年)には日本も1994年に参加しました。さらに2002年には、この条約に関する2つの選択議定書が国連総会で採択されました。日本もそれぞれ2004年と2005年に批准しています。日本国憲法にも子どものための特別の権利規定がいくつかあります。26条と27条です。 では、子どもの人権は本当に守られているのでしょうか。「子どものた