愛
その人と話すたびに、そこに愛がないと言うことを思い知らされるのは辛いことだ。初めからなかったのか、後になくなってしまったのかさえ、もはやわからない。
力でねじ伏せようとしても、言葉で追い詰めようとしても、真実は変わらない。
愛がないのではなく、無条件の愛がないだけだと自分を慰めた時もあった。愛の反対語は、憎しみではなく、無関心だから、と。
あれほどの激情をぶつけてくるのだから、無関心ではないのだろうと、そう思うことで愛を信じようとしていた。
でも、気づいてしまった。
あの人は私の悲しみに興味がない。それはもはや、愛がないと同意語ではないだろうか。
あの人には、私の痛みに寄り添おうとする気持ちがまるでない。それはもはや、愛が失われたと言っても良いのではないだろうか。
愛せない人と過ごすのはどんな気持ちなのか、実は私はわからない。だから私はあの人のことが、結局のところわからないままなのかもしれない。
私はただ、生まれただけだった。
そうして、愛して欲しかっただけだった。期待に応えれば笑顔を向けてもらえたから、頑張って頑張って、いっぱい頑張ったけれど。
やっぱり寂しいだけだった。
誰もが、疑う君が悪いと言う。愛されているに決まってる。ただのわがままだよ、と。そうなのか、私が悪いのか。
それは終わりのない渦巻だった。
愛を確かめる勇気はなくても、嵐の渦巻きを、愛を勝ち得るまで走る勇気は、なぜか私にはあった。
終わりのない渦巻を走って走って走って……たどり着いた先は、彼の隣だった。
彼がいるから、もう大丈夫。
愛を注いでくれる人がそばにいると、自分の中に最初からあったことに気づく。
だからもう、大丈夫。
あの人の愛を、生涯感じることができなくても、生きていけるとようやっと思えるようになった。
もう、泣かないでいよう。
もう、愛が欲しいって言わないでおこう。
あの人からの愛を感じられなくても、私の中には愛があるから。
ただ、カーネーションを送る人が消えてしまっただけ。
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