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東京って、どこ?

東京生まれでありながら、「流行の東京」に詳しくない、ことに長い間引け目を感じていた。それは、大学に入ってからあからさまに私の心に宿った。なぜなら地方出身の先輩や友達の方が、私よりも全然「東京」に詳しい!話題のお店も、JJに載ってる服がどこで買えるかも、彼らの方がよく知っていてスラスラ店の名前が出てくる。どうして原宿のお店に迷わずに行けるの?渋谷の通りの名前も覚えられない私はもはや、知ったかぶりすらできなかった。

「えー東京出身なんだ、いいお店教えてよ」

と言われても、私よりもあなたの方が全然詳しい。当時私が人に教えられた役に立つ東京の知識といえば、「不思議な不思議な池袋、東が西武で西東武」というビックカメラのテーマソングで得たご当地池袋で迷子になった時のための呪文くらいだった。

「東京って〇〇だよね!」と言われると「うーん……」と曖昧に首を傾げるようになったのもこの頃だ。

そういう所もあるかもねえ、という曖昧な同意しか示せない。相手が感じている「東京」と私の中での「東京」の乖離にモヤモヤモヤモヤしていた。

スッキリしたのは「オードリー」の若林さんのインタビュー記事を読んだ時だ。若林さんは築地近くの「入船」出身。でも「入船」といっても誰も知らないから「築地出身」といっていたとか、自分が生まれ育った近辺や中高時代を過ごしたところだけが自分にとっての「東京」で有名でおしゃれな「六本木」は記号でしかない、というお話で、ああ、これか!と長年のコリが取れたような清々しさだった。

自分が生まれ育った街=東京、と世間で言われている街=東京は違って当たり前。それでいいじゃないか。

私など、ほぼ地元、の「池袋」ですら二十年以上前のドラマ「池袋ウエストゲートパーク」はすごくハマって面白く見たけれど全然「自分の地元がテレビになっている」とは思わなかった。むしろ、え?この路地どこ?こんな商店街あるの?と思いながら見ていた。

普段暮らしている街をわざわざ「深く知ろう」と歩くことはほとんどなかった。一方、別の街から引っ越してきた人がその街を「深く知ろう」と貪欲になって街を歩けば、私のよりも詳しくなって当然なのかもしれない。

確かに私も、旅に行くときは行く先の街をのことをすごくよく調べるし、その街出身の人に「○○がよかった」といっても「知らないなあ」とつれない返事をもらうことがある。

それに、新しく住む街と生まれ育った街では注目する部分も違う。

私にしかわからない街、私にしかわからない東京。

そういう場所があっても良いのだ。







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