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身近に起こった話し

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アンズ飴        その15

アンズ飴        その15

 僕は三年生になった。無為に入学からの二年間を過ごした。反省から僕はゼミに政治色の強いものを選んだ。法学部でありながら、すこしだけ政治寄りになり、六法全書を読む、理解するから逃れられてほっとしていた。ゼミで一緒になった人間はすごく真面目な者が多かった。ゼミで話すようになった女の子は高坂 正堯を先生と呼び、僕に熱く語った。高坂 正堯の本を僕も読まないと彼女と対等に話すこともできないの辛い。最近、知ら

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アンズ飴        その14

アンズ飴        その14

 彼女に電話をかけた、案の定出なかった。分かっていた。二人のいまの状況を理解しない男、ストーカー予備軍の背筋が寒くなる男としかみえないだろう。
 親切心から電話している訳ではない、ガラにもなく正義からかけている。明日も電話しようと思う。いつまで続けるかは分からない。彼女はしばらくしたら諦めると思っているだろう。諦めたダメような気がするから、僕は電話をから続ける。諦めたら彼女を見捨てることになる。坂

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アンズ飴        その13

アンズ飴        その13

 僕は漫然と大学生活を送っていた。法律家に成りたくて法学部に入った訳ではないから、一年生の間は長い五月病のような感じを続けていた。
 部活、同好会などに入って仲間を見つけ、どこかに遊びに行ったら気持ちが上向いたかもしれない。
 女の子に声をかけ彼女を作って、毎日一緒に行動して、ラブラブしていたら違っていたかもしれない。
 ただ漫然と無愛想に無自覚に無責任に無計画に無頓着に一人でいた。
 そんな僕を

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アンズ飴        その12

アンズ飴        その12

 ▽▽さんは実に男前な顔をしていた。額が縦にも横にも広く、左右の眉は漢字の一の字を筆で書いたようにこめかみ向かって立派で、クッキリとした二重まぶた、鼻頭も大きい見事な鷲鼻、唇は小豆色をしてドンと存在感がある。全ての要素が絶妙なバラスで顔を構成している。そんじょそこらに居ない、油切った男性的な色気があった。もしかしたら夜も絶倫かもしれない。
「貴方が、○○(彼女の苗字)が言っていた予備校のときの彼氏

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アンズ飴        その11

アンズ飴        その11

 下北沢駅から歩いて30分の少し遠い場所に劇場はあった。昭和の経済成長期に建てられたビルを劇場に改装したモノのなのか、表からみる劇場は、中で芝居を遣っているようにはみえなかった。ビルの中は役者が舞台になっているではなく、会社員が働いている事務所が入っていてるように見えて、最初は中に入るのも躊躇われた。玄関を入ると廊下になっていて、公演を見に来た人達がずらりと並んでいた。
 先頭の前に受付があり、受

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アンズ飴        その10

アンズ飴        その10

 僕は辛くも専○大学の法学部にひっかかった。彼女は日○大学に入ったとメールが届いた。学部までは教えてくれなかった。女優やモデルになっても良いくらいの美人だから、顔で入学が出来るなら日芸の映画学科、演劇学科に入って女優を目指すという未来も彼女ならありえるかもしれない。ただし彼女はスポットライトを浴びるような仕事には興味がないようだ。当然、高校の頃から街を歩けばスカウトの目に留まり声をかけられ続けてき

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アンズ飴         その9

 僕たちは結局クリスマスもだけど、大晦日も会わなかった。僕が『会いたい。どうしてる?』『一ヶ月以上も君に会えなくて、寂しい。年末の寒さが骨まで染みる』などとメールを送ると、『今、受験勉強の追い込み中。がんばろうね v(^^)v 』と返信が返ってくるだけ。彼女のほうから会いたいとか、会えなくてさみしいという言葉はなかった。
 僕の方も彼女から“距離”をとったことにより――彼女から言われて強制的に――

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アンズ飴         その8

アンズ飴         その8

 僕たちは毎週、場所を換えてラ○ホに行き、身体を重ねた。
 十代の男女にとってそれはすごく自然なことにように思う。二時間の休憩のあと、シャワーを浴び、近くに公園があれば公園に行き、ベンチに座り時間を決めずにおしゃべりをした。楽しい時間だった。
 当然のごとく受験勉強ははかどらない。僕はただただ週末を楽しみに月曜日から土曜日まで予備校に通った。
 12月に入り、月末のクリスマス、年末年明けを残すのみ

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アンズ飴         その7

アンズ飴         その7

 季節は夏から秋になり、僕たちは新宿御苑に来ていた。今年最後になると予想された台風は、まだ関東に上陸しないはずなのに雨が突然降ってきた。冷たい雨。飲食店に避難して雨が上がるのを待つか、雨など気にせずうたれながら帰るか話した。彼女の答えは、飲食店に入るくらいなら、近くのブティックホテルに入って休もうだった。
「わたし一度、ラ○ホに入ってみたかったんだ。部屋の中にゲーム機があったり、カラオケ機があった

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アンズ飴         その6

アンズ飴         その6

 中野サンプラザでボウリングをしたあと、彼女の部屋に向かった。彼女の部屋は三鷹で、駅から徒歩で二十分ほど歩く場所のマンションだった。彼女のマンションから井の頭公園まで歩いて行けるらしい。井の頭公園を今まで避けていたのは、歩いて行ける場所に住んでいることが分かり後を付けられるとか、住んでいる場所を探されてストーカーされるのを予防していたそうだ。
 マンションはオフホワイトの外観の五階建てで、一階に五

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アンズ飴        その5

アンズ飴        その5

 ある日、彼女は予備校の事務所の呼ばれた。キャバクラでのバイトが予備校の知るとこになった。真面目に受験勉強を続けるか、真面目に受験勉強をしている人の邪魔にならないように退学するか、事務所の人間から迫られ、彼女は10月のその週にバイトを辞めると確約した。彼女のキャバクラからみた社会科見学は一ヶ月満たないで終わった。ファストフードを始め他のバイトも禁止となった。
 それをその週の週末に僕は聞かされた。

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アンズ飴        その4

 彼女は夏期講習が終わる頃バイトを始めた。もともと高校に通っていた現役の頃は真面目に勉強をしていたようだ。それが彼女の目指していた大学に一年早く入った友達、滑り止めに入った友達と、メールで連絡を取り合っているうちに、春にはあった上の大学を目指そうとする気持ちが今は落ち着き、夏になる頃にはもう勉強したくないに変わったそうだ。
 バイトは最初、初めてということで――高校の頃にはバイトはしていなかったら

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アンズ飴        その3

アンズ飴        その3

 危惧することはなかった。彼女とはその後も週一くらいの頻度で、街で買い物をしたりスィーツを分け合ったりのデートをした。
 笑顔で僕と話さなかった瞬間はなく、常に楽しそうだった。新宿、渋谷、原宿、表参道、青山といろいろな場所で僕らはデートをした。目に映る何か、話題になる物があるほうが話しやすいというのもあっただろう。まだ付き合って1~2ヵ月ということもあり真剣な話しはしなかった。つまり、話題は常にく

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アンズ飴        その2

アンズ飴        その2

 待ち合わせの東京駅に僕は25分ほど早く着いて、彼女を待った。僕は動ける格好ということで、その時期気に入っていた赤い地に白いカサブランカがプリントされたハワイアンシャツ、カーキー色のハーフパンツ、コンバースという姿だった。初デートの硬い感じを外し、かといって派手ではなく、しかもコンサートの楽しい気分をコーディネートに表してみた。
 彼女は僕より10分後に来た。この日は肩甲骨までのサラサラとして黒髪

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