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スモールビジネス経営で 絶対に改善しておきたいポイントいくつか

こんにちは、琉球オフィスサービス 藤本です。
2019年にSMB(スモールビジネス)に特化したインキュベーションファンドを設立し、沖縄県内中小企業への出資と経営のお手伝いをしています。

今回は、出資検討時や実行後に真っ先に見るポイントを挙げてみました。
SMBでは割と共通して改善の余地がある点だと思いますので、ぜひ参考にしていただけると幸いです。

余剰キャッシュの調達

今回のコロナ騒ぎでもクローズアップされたように、何はともあれキャッシュです。極端な話、キャッシュがある限り会社は赤字でも潰れません。

例として、コロナ前に弊社から出資した企業にも、すぐに資金調達に入ってもらいました。キャッシュが薄かったわけではありませんが、成長軌道に乗っており、近いうちに拡大のための投資が必要になると考えたためです。
その後コロナショックに巻き込まれますが、すでに余剰資金を調達済みで手元キャッシュが潤沢なため、この状況にありながら前向きな取り組みを連発されており、活気が全く衰えていません。

今回のような非常事態でない場合でも、基本SMBはキャッシュに余裕がないので、常に資金繰りのことが経営者の頭にあることが多いです。キャッシュをしっかり積むことで、お金の不安を忘れて事業に集中できることも大きいです。

また、資金難に備えること以外にも、好機に機動的に動けるようにしておくという意味もあります。投資すべきタイミングが来たときに、そこから資金調達をしていてはスピードが出ません。手元に必要な資金を置いておくことで、金融機関への交渉をすっ飛ばして意志決定した瞬間に投資実行することができます。

キャッシュを積むには利益を出すことが重要ですが、それより手っ取り早いのは融資を受けることです。色んなポリシーがあると思いますが、僕は融資はしっかりコントロールしつつ積極的に利用していくべきだと考えています。
融資の価値とは、突き詰めれば時間価値です。1億貯めてから使うか、1億使ってから返すか。こと事業においてはこの差は大きいです。その利便性の代わりに金利を支払うわけですが、今は1,000万で月1~2万、1億で月10~20万くらいですので大変おトクですね。

余談ですが、銀行への金利交渉はほどほどに・・・というのが個人的な考えです。どうしても0.1%でも下げてもらいたくなるものですが、0.1%って1,000万の融資の場合で月1,000円くらいですからね・・・。銀行の職員さんにも成績というものがあります。無駄遣いは良くないですが、取引先として利益と成績に貢献する気持ちも大事だと思います。小さい融資のときに譲歩して、大きい商談になったときに頑張ってもらうのが得策かと思います。

業績が芳しくない場合は、銀行での借入が難しいかも知れません。その場合は日本政策金融公庫など政府系金融機関がおすすめです。彼らは事業再生の手伝いも仕事なので、取れるリスクが段違いに大きいです。金利も安いです。

給与アップの検討

めっちゃ大事です。大事なのは確実なのですが、SMBでは給料設定が低すぎることが多いです。

どんな事業であれ、人の能力に依存する領域が必ずあります。その領域をどんな人に担当してもらうかは非常に大事です。
単刀直入に言うと、可能な限り優秀な人に業務にあたってもらうべきで、優秀な人は良い環境、良い条件でしか採れません。給料は儲かってから嫌々上げるものではなく、無理してでもさっさと上げて優秀な人を採用して、その人に仕事を任せた方が圧倒的に楽です。体感ですが、70の能力を持つ人に70やってもらうより、100の能力を持つ人に80やってもらう方が簡単です。
給与が高いことが大事なのではなく、スタッフが優秀であることが何よりも重要です。

地方のSMBであれば、弊社も使用した基準で「当地の地銀の平均給与と同水準」というのが便利でした。地方での人気企業であればなんでもいいと思いますが、なんだかんだで地銀は人気あります。実は地銀の平均給与はそんなにめちゃくちゃ高いわけではない(沖縄の場合550~600万)のですが、立派な水準という共通認識ができています。一気にそこまであげることが難しくても、数年単位の中期で「公言して」目指すだけでもじゅうぶんに効果はあるんじゃないかなと思ってます。

給与を上げるのは、経営にとって大変しんどいことであることはわかります。しかし、1000人の会社が年収を5万上げるより、20人の会社が100万上げるほうが遙かに安上がりで効果も劇的です。求人市場の状況によっては、求人広告にお金突っ込むより投資対効果が出やすいかも知れません。

プライシングの修正検討

価格設定は言うまでもなくめっちゃ大事です。これひとつで数%~数十%の利益が変動しかねません。ですが、SMBは周辺の相場付近に価格設定したり、これまでの習慣で設定したり、合理性がないことが多いです。本来、周りに合わせること自体にまったく価値はなく、むしろ競争力を削ぐことにもなりかねません。

周りが1,000円のところに900円とか1,100円だと巻き込まれて埋もれます。3,000円の価値を2,000円で提供できないか、機能を最小限にして500円にできないかを考えた方が建設的です。周りに寄せるのではなく、できるだけ遠いところに設定できないかに知恵を絞った方が強い事業になる確率が上がると思います。

広義の価格設定という意味では、価格の絶対値だけではなく「お金のもらいかた」も含まれます。サブスクリプションやローンやリースもそうですが、一括50万で販売するのと1万×50回+リスクプレミアムでどちらの方が利益の総和が高くなるかを検討すると、大きな飛躍が生まれることも少なくないと思います。そういう意味ではやはり金融の考え方は商売にとって非常に便利に思います。

経営と所有の分離

SMBでは社長とオーナーが同一人物であることが多いため、社長=オーナーと思われているケースが非常に多いです。もちろんですが、社長(経営者)とオーナー(株主)は全然違います。

どう違うかというと、利益の享受の仕方からして全く違います。ある意味、利益相反している部分もあるくらいです。なので、ここを明確に理解しておかないと、ある意志決定が「株主としてメリットがある」のか「経営者としてメリットがあるのか」がハッキリしません。

株主は、その会社の株を所有している会社の所有者です。経営とは関係ありません。
経営者は、株主から会社の経営を任されているだけで所有はしていません。
※それぞれが同一人物のことも多いですし、そうでなくても社長が株の一部を持っていることもあります。

株主の利益は、会社が成長して持っている株の価値が上がることや利益の分配である配当です。
経営者の利益は主に報酬で、そういう意味では一般の社員と利益の構造は変わりません。

このように、それぞれ利益の出方が全く違います。
そして、ある程度の規模まで成長すると、経営者としての利益よりも株主としての利益の方が大きくしやすくなってきます。経営者としての報酬を大きくするのは大変ですし個人の税率はめちゃくちゃ高いのですが、法人税はまだマシな上に配当に対する税率はかなり低いです。
ですので、経営者としての報酬はほどほどで、会社の利益を最大化していくことが自分にとっての利益になるのですが、多くのSMBでは、役員報酬を上げて、公私混同した経費の使い方をし、会社の価値を毀損して株主の利益を削っています。これは、経営者としての視点でしか見ておらず、株主としての視点が欠如しているからです。税理士が株主視点のない指導をしていることも多いです。
株主としての視点で見ると、会社にとってノイズのない純粋な判断を下すことができます。

ビル・ゲイツや孫社長なども、給料でお金持ちになったのではありません。ライブドア時代の堀江社長の役員報酬が(一時的にだったかも知れませんが)年1,000万だったのを見た記憶があります。

業務の自動化とデータ取得

SMBが事務所でやっている事務作業の多くは自動化できます。しっかり投資して自動化しデータを蓄積しないといけません。お金で解決できる部分も大きいので、投資が大事だと思います。

考え方として「人の記憶には頼らない」「一人の人間しかできないことを作らない」という基準がけっこう便利で、それに該当するものは必ずシステム化をするようにするとミスのカバーや人材流出時のダメージを軽減できます。

月次決算の導入

年に一回税理士から出てくる決算書を見て、はじめて自分の会社が黒字か赤字かを知る・・・というSMBは割とあります。正直、「すごいな・・・」と思います。これは皮肉ではなく、年間通して数字を見ずに感覚だけで事業をやれているということなので、非常に難しいことをやっているわけです。僕にはそれをやる自信がないので、他意なくすごいなと感じます。

しかし、それができるのなら、毎月きちんと数字が出てそれを見ながら経営すればもっと経営は簡単になるはずです。そういう意味では、月次試算を毎月出すことはマストだと思います。
決算書を見てもわからないから出す意味ないという方もいるかも知れません。これも同じ理由ですごいなとは思いますが、経営者であれば決算書は読めるようにすべきと思います。その方が確実に経営が簡単になるからです。銀行の言ってることや気持ちも理解できるようになりますし、取引先の安全度もわかるようになります。

決算書は、少し勉強すればすぐわかるようになりますが、大事なのは単語の意味がわかることではなく、数字から事業の状態を理解できるようになることです。本を一冊か二冊読んだ上で、そういうのが好きな人に教えてもらえばすぐにわかるようになりますし、一度理解したら一生理解したままなので、非常に投資対効果の高い勉強だと思います。

コア事業以外のリストラ

SMBが軌道に乗り始めると、飲食とか物販などのサイドビジネスのようなものを始めるケースがかなり多いです。そして、本業の利益を削ることになってます。僕も事業家なので気持ちはわからなくもないですが、たいていの場合、残念ながら有害になってしまっているケースが多いようです。

本業にシナジーがあるとか顧客の再利用が効くとか、そういう戦略的な事業であれば例え赤字でもまったく構いませんが、だいたいは社長の趣味とか興味でぜんぜん関係ないことをやってることが多いです。

これで何が起こるかというと、お金が流出するのはもちろん害ですが、もっとまずいのが人材と時間の流出です。SMBの少ない人的リソースが競争力のない付け焼き刃の事業に割かれ、もっと悪いことに最も能力と価値が高い社長の思考時間(マインドシェア)もそちらに割かれることになります。仮に新しい事業が運良くトントンだったとしても、本来割かれるべきリソース分のダメージが本業に発生します。

もちろんすべてがダメなわけでないですし、チャレンジしないと成功はないというのも事実ですから、挑戦は必要です。ただ、挑戦は考え抜いて勝算を信じられるものに全力を賭けて行うべきで、面白そうだからとかやってみたいからみたいなフワッとしているのは撤退した方がいいと思います。たとえひとつでも、事業を立ち上げて利益を出すのは大変なことです。


以上、思ってたのの5倍くらい長くなってしまい最後の方はやっつけ気味になってしまいましたが・・・少しでも参考になる部分があれば幸いです!

TwitterでもサブスクリプションやSMB経営についてつぶやいていますので、よろしければフォローしてください!


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