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沖縄の平均給与が全国においつく成長ストーリー

こんにちは、琉球オフィスサービスの藤本です。

沖縄の平均年収は370万(中央値はたぶん300万くらい)、対して全国平均は440万くらいなので16%くらい低いということになります。理論上、経済の成長が16%以上あってそれを全額人件費につぎ込めば全国平均に届くことになります。そこで、16%の経済成長を達成するためにどうすればいいのかを手段ではなく構造で考えてみました。

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最高に見にくいと思いますが、上記が元データです。もう少し見やすく説明しますので見なくて大丈夫です

なお、上記は帝国データバンク収録法人からの抽出データで、未収録法人および個人事業主は加味されていません。また、仮定利益としているものは、利益各層の中央値を暫定的に採用していたり赤字額を一律100万円と仮定していたり10億以上の利益を一律10億と仮定していたりするので、正確な数値ではありません。おおまかな規模感や構造を見るためのざっくりデータということをご了承ください。

利益規模別/従業員数規模別 社数および利益構成比

元データを整理したものがこれです。

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ざっくりですが、
5名以下の会社が50%を占め、1社あたり100万くらいの利益
6~50名の会社が44%を占め、1社あたり1,000万くらいの利益
51~100名の会社が3%を占め、1社あたり5,000万くらいの利益
101名以上の会社が2%を占め、1社あたり1.5億くらいの利益

全法人を合わせると1,400億くらいの利益になるという結果になりました。

こちらの記事によると利益2,000万以上の企業1,051社の利益総額が1,600億くらいとのことで、9,000社(65%)程度の赤字法人の存在を考えると規模感としては大きなエラーはない数値なのではないかと考えます。

利益規模別社数構成比の考察

やはり、5名以下の法人が50%を占めるにも関わらず全体の利益の6%しか構成していないのが目につきます。決してマイクロ法人を否定するわけではありませんが、設立された法人のあまりに多数がここに留まってしまっては全体の成長は見込めません。

なぜこの層がこんなに多いのかですが、経営技術の問題があるであろう一方、税制にも大きな要因があると思っています。1,000万未満の利益は税金対策しやすく、オーナー経営者(と親族)が1,000~2,000万程度の個人利益を出すには都合の良いレンジなんですね。ただし、税金対策とはほとんどが法人の利益を消す行為なので、当然法人の継続的な成長もたいてい消えてしまいます。つまり、オーナー経営者が法人の成長より個人の利益をだすインセンティブが強い(法人を成長させる努力より、税金対策で利益を消す方が容易)環境であるということだと思います。

51~100名/101名以上の法人は合わせて利益の53%を出しており、まさに経済を牽引する存在といえます。その社数構成比は5%。わずかな社数で半数以上の利益を出す大きな貢献である一方、たった5%の企業しかそこに到達していないという数値がそのステージへの成長の難易度を物語っているといえます。

最後に6~50名の「THE 中小企業」という層は、社数構成比が44%と多く、利益の構成比も41%とバランスのとれたカテゴリーに見えます。1社あたりの利益も約1,000万と、そこまで難易度の高い数字にはなっていません。

必要な成長規模の算出

当然といえば当然の話なのですが、100万の層の一部が1,000万、1,000万の層が5,000万に成長することで全体の経済を押し上げていくことになります。ではどれくらいの割合で成長すれば良いのかを試算したのが下の図です。

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4層に分けた各層のそれぞれ18%の企業が次のステージに成長した場合が、上記図の下段の表になります。
県全体の利益合計が1,407億から1,630億、16%成長し、全国の平均年収440万に対する沖縄平均年収370万(84%)の比率と等しくなります。つまり5社に1社が、100万から1,000万に、1,000万から5,000万に、5,000万から1.5億に成長する程度の伸長が、沖縄の平均年収が全国に追いつく必要条件となります。

成長しないインセンティブ

その実現可能性を一県内経営者として客観的に考えてみると、今のままでは非常に低いといわざるを得ません。データを出していないので実際の成長率がわからず予測になりますが、1,000万を5,000万、5,000万を1.5億に成長させるインセンティブは存在すると思います。

数十人から数百人規模の組織になっていることから既に会社に対する経営責任・成長責任が生じていると思われ、大きく節税が効く利益規模でもないため、消去法的にも法人の利益を成長させるのが経営者の利益になりやすいからです。利益規模的にも組織規模的にも成長に対する投資がしやすい水準でもあります。

むずかしいのが5名以下で赤字~数百万の利益規模の法人です。これくらいの利益規模では成長に対する投資が限られるので、単純に成長の難易度が高いというのもありますし、数百万の利益を難易度の高い投資に向けるくらいなら役員報酬や私的経費に振り向けて個人の所得をあげ、法人の利益を消して税金をなくすことに経済的合理性が出てしまいます。
つまり、成長に向けた苦しく不確実な努力をするインセンティブを、成長をあきらめて税制を利用して個人の利益に付け替えるインセンティブを上回っているから、社数構成比が膨れ上がり利益も抑制されている側面が強いと思われます。

沖縄固有の証券取引所の可能性

ではどうすれば良いか。
大量の構成比を占める5名以下で赤字~数百万の層が、5社に1社で良いので、20~40人で1,000万の利益を出す企業に成長するインセンティブを設定すれば良いことになります。

特区による減税/免税や、成長/昇給に対する減税/免税など色んな手段があると思いますが、僕はSMBが自社株を市場に公開・流通させられるプラットフォームを設置し、利益が数千万~1,2億程度のローカルSMBがそこに上場することで、企業だけでなく株主(オーナー経営者)にも数千万~数億程度の創業者利益が得られるようにすれば、健全な形で目指すべき成長に対するガイドラインとインセンティブを設定することが出来ると考えています。

沖縄固有のSMB証券取引所というと大風呂敷に聞こえるかも知れませんが、許認可やセキュリティなどのハードルは通常のフィンテックビジネスと同程度で、十分に実現可能性があると考えています。これが実現すれば、沖縄は日本で一番SMBが生まれやすく、成長しやすく、エクイティでの資金調達がしやすい構造的なエコシステムを手にすることができると思っており、何とか実現できるように頑張っていきたいなと思っています。


以上、沖縄の経済成長に対する構造的な課題の分析と、それに対する解決策の一案でした。

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