社畜賛歌
汗水たらしているのなら、まだ健康的なのかもしれない。
こんな夜中までPCのモニターとにらめっこ。
子供の頃は、「一日中パソコン見てるだけの仕事とか、どんだけ楽ちんだよ?」とか、生意気にも思ってたっけ。
クライアントからの連絡も来なければ、社内システムの制作も進まない。
かといって、自分の作業に集中できているわけでもない。
遅い時間にも関わらず、電話が鳴りやまないのだ。
それについてはこのような進捗でお願いします、それはあそこに手配をお願いしますだの、案内をする。
受話器の向こう側にいる人は、きっと俺みたいな人なのだろう。
孤独な夜を、共に戦う同士、みたいな。
勝ち目の無い戦争でも、必死で生き抜こうとする戦士。
うう、しびれるコピーを思いついたぜ、などと自画自賛していると。
「あれ、雪じゃないか?」
一緒に残業している同僚が、コーヒーを飲みながら窓の外を見て歓声を上げた。
確かに、粉雪がちらついている。
ああ、そういや今日はクリスマスだったっけなあ。
白い聖夜とか、恋人たちはさぞロマンチックに震えているのだろうな。ちなみに俺は残っているタスクの多さに震えている。
誰かが100万ドルの夜景とかいう言葉を生み出したが、その景色は俺たち社畜が作っている。
そして、リア充たちはそれを見てイイ感じの雰囲気になっちゃったりしているのだ。
あれ? ということは、俺たちもリア充なんじゃないか?
最早、リア充たちのリア充度に貢献している俺たちこそ、真のリア充なのかもしれない。
「ふっ、すでに理想など通り越していたということか」
回らなくなってきた頭だったが、一周回って回るようになってきたようだ。
「先輩、ちょっとこの仕事お願いして良いっすか」
シン・リア充理論を脳内展開しつつ、後輩の声で戦地に呼び戻される。
やれやれ、リア充爆発しちゃいますか。
異様に高まったテンション。
さて、聖戦を始めよう。
しんしんと雪の舞う街、明かりの消えない夜。
外の喧騒からシャットアウトされたオフィスに、キーボードのタイプ音だけがパチパチとなり続けている。
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