詠み人くんの徒然なる日常。3
数学の授業。
詠人くんが先生から指名されたときに、どう答えるかが気になった。さすがに数学の答えを短歌や俳句調で答えるのは難しいだろう。
キーンコーンカーンコーン、という授業開始を告げるチャイムが鳴り、数学の授業が始まる。隣の席の詠人くんは、心なしか委縮しているように見えた。もしかして数学は苦手なのだろうか?文芸好きの文系人間なら、それもありえるな。
さっそく、先生が詠人くんを指名した。さあ、どう答えるんだ詠人くん。
「x=2n、つまりnはxの半分、つまりxはnの倍数、DE・SU・YO」
えっ、まさかのラップ?
突然のラップ調での回答に先生も失笑、かと思いきや。
「いいかい、その回答、正解。でも回答の仕方、不正解」
乗ってくるのかよ。
「お前のやり方5・7・5、俺のやり方GO・GO・GO、お前は俳句、俺はラップ、ちっと相手が悪かったろう?」
先生が異様に乗ってきた。どうしよう、授業がラップバトルになってしまう。そんな生徒たちの焦りを察したのか、詠人くんが口を開いた。
「場違いな、ことはやめよう。降参です」
空気を読んだ詠人くんがあっさりと降参し、授業はいつものペースに戻った。得意のラップを披露できなかった先生が、少しだけ寂しそうにしていたけれど、だれもそこには触れなかった。
サポートいただけると、作品がもっと面白くなるかもしれません……!